なぜ固定資産税は高くなる?その理由や税額を抑える特例を紹介

固定資産税は、すべての不動産の所有者に課せられる税金です。土地は立地条件や敷地面積、建物は室内のオプション設備などで税額が高くなることもあります。ほかにも固定資産税が高くなる要因はさまざまです。では、どのような工夫をすれば税額を抑えられるのでしょうか。
この記事では、固定資産税が高くなる理由や節税に活かせる特例を解説します。あわせて、固定資産税を上げてしまう建物の設備なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
固定資産税とは
固定資産税とは
固定資産税は、土地や建物などの不動産に課される地方税のことです。それぞれの不動産所有者が納税した固定資産税は、市区町村の道路や公共施設の建設、さらには教育・医療・福祉といった公共サービスの資金源として利用されます。
しかし、中には次のような疑問を抱く方もいるはずです。
「年内に不動産を売るつもりだけど、それでも固定資産税は払わないといけないの?」
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で財産を所有している方です。つまり、その年度の1月1日時点で不動産を所有していれば、固定資産税を納税しなければいけません。
固定資産税はいつ支払うのか
一般的に、固定資産税の納付期限は5月頃です。支払い方法は、一括または年4回の分割での納税の2種類があります。ただし、期限を守らない場合には延滞金が発生するため注意しましょう。さらに延滞期間が1カ月を超えると利率が急上昇し、納税額は跳ね上がってしまいます。
固定資産税額の計算方法
固定資産税の計算方法は次の通りです。
固定資産税(円)=固定資産税評価額 × 税率1.4%また、新築物件に関しては、条件を満たす場合には土地と建物の両方に減税措置が適用されることもあります。詳しくは後ほど説明しますが、適用される軽減率と適用期間は物件の種類によってさまざまです。
固定資産税の課税対象
固定資産税の課税対象となる不動産は、土地、建物、償却資産などです。具体的には、田畑や住宅地、工場や倉庫などの建物、そしてフェンスやパソコンなどの備品が挙げられます。ただし、これらはあくまでも一例であり、対象となる資産はほかにもさまざまです。
☆本章のまとめ
固定資産税は、所有者が不動産を所有している限り毎年支払い続けなければいけません。不動産の売却を検討している場合は、不動産一括査定サイトなどを利用して、複数の業者の査定結果を比較することでよりよい取引条件を得られるでしょう。
固定資産税が高くなる理由
なぜ固定資産税額は高くなってしまうのかを把握しておけば、節税や減税措置をより有効的に活用できるはずです。ここでは、固定資産税が高くなる理由を詳しく見ていきましょう。
地価の高い地域に建っている
地価の高い地域に物件が建っている場合、土地の固定資産税評価額が自然と高くなります。特に、都心部や人気のある地域では地価が高騰しやすく、それに伴って固定資産税も上昇しやすいです。たとえば、東京都心部はほかの地域よりも地価が高いため、固定資産税もそれに伴って高額になります。立地条件の良さは魅力的ですが、その分固定資産税が高くなることには注意が必要です。
宅地や整形地
宅地や整形地は建物を建てるために使いやすく、土地としてのニーズが高いです。そのため、農地や林地などに比べると土地の価値は高くなります。さらに、不整形地に比べて利用しやすいことから、固定資産税は高くなることが一般的です。一方で、農地や林地などは利用価値が低く、地価はそれほど高くありません。しかし、その分固定資産税評価額を抑えられるというメリットがあります。
鉄筋コンクリート造・平家の一戸建て
鉄筋コンクリート造や平家の一戸建ての建物は、建築費が高くなりやすい傾向があります。というのも、建築費が高いと固定資産税も上がりやすいのです。鉄筋コンクリート造も平屋の一戸建ても、次のような理由から建築費が高くなります。
・鉄筋コンクリート造……建物の耐久性を高めるため、木造などの工事に比べて建材や工法に費用がかかる
・平家の一戸建て……2階建てと比べて延床面積が小さいため、坪単価が高くなる
鉄筋コンクリート造も平屋の一戸建ても、以上のような理由から建築費が高くなり、結果的に固定資産税額も高額になります。
タワーマンションの高層階
タワーマンションの高層階は、通常のマンションよりも価格が高くなる可能性があります。これは、高層階ほど景色や眺望が良く、プライバシーや利便性に優れているからです。そのため、高層階ほど固定資産税評価額が高くなり、それに伴って固定資産税も増額されることがあります。
☆本章のまとめ
固定資産税が高くなる理由はさまざまです。税額を安く抑えるためには、物件の場所や建物の構造、土地の利用状況などを考慮する必要があります。
固定資産税が高くなる設備―戸建て―
物件の価値を評価する際に重要なポイントの1つとして、設備や装備が挙げられます。このような設備は固定資産税額額を左右するため、節税対策をしたい場合はしっかり見直さなければいけません。
ここでは、一戸建て住宅における固定資産税が高くなる設備について詳しく見ていきましょう。
ホームエレベーター
ホームエレベーターは、高齢者や身体の不自由な方の生活をサポートするために不可欠な設備です。そのため、固定資産税評価基準ではホームエレベーターに高い点数が与えられます。
しかし、家族の健康状態や年齢によっては必要な設備ですから、固定資産税のためだけに撤去するのは効率的ではありません。あくまでも「固定資産税が高くなる」ことを把握しておきましょう。なお、一般的な一戸建てにホームエレベーターを設置すると、固定資産税額はおよそ2万5,000円上昇することが予想されます。
システムキッチン
システムキッチンも、固定資産税を押し上げる要因の1つです。特に、オリジナリティやデザイン性の高い豪華なシステムキッチンを導入すると、固定資産税はさらに上昇します。一方で、システムキッチンのランクを下げることで税額を抑えることも可能です。システムキッチンは生活の質を上げてくれる設備ですが、固定資産税とのバランスは十分に考慮する必要があります。
開閉式天窓
開閉式の天窓は、明るく健康的な暮らし作りを提供してくれる設備です。室内の開放感も増し、快適な住まいを送りやすくなるでしょう。しかし、開閉式の天窓を設置すると、固定資産税額が高くなることには注意が必要です。固定資産税を安くしたいなら、開閉式ではなく固定式の天窓を選択することも検討しましょう。
外壁材
外壁材の種類も固定資産税に影響を与えます。たとえば、タイルや漆喰の外壁は税額が上がりやすく、節税対策をしたい場合は改修工事やリフォームが必要になってくるでしょう。外壁材の選択は、税金と建物の外観とのバランスを考え、妥協点を見つけることが重要です。
屋根の勾配
屋根の勾配によって、固定資産税額が高くなることにも注意しましょう。一般的に、勾配が急であればあるほど税額は高くなります。屋根の勾配を決定する際には、税金と建物のデザインの両方を考慮することが重要です。
そのほかの設備
床暖房や天井埋め込みエアコン、屋根一体型太陽光発電などの設備も、固定資産税額を高くする要素です。いずれも生活の質を上げてくれる大事な設備ですが、導入する際には、固定資産税とのバランスを十分に考慮しましょう。
☆本章のまとめ
不動産の売却を検討している方は、不動産一括査定を利用することをおすすめします。室内設備もしっかり加味してくれる業者を選ぶことで、より正確な査定額を把握できるでしょう。
固定資産税が高くなる設備―マンション―
マンションに住んでいる方は、共用部の設備が固定資産税額に影響を与えることに留意しておきましょう。個人の負担として直接的に現れるわけではありませんが、共用部の設備の内容によっては固定資産税がかなり高くなります。ここでは、マンションにおける固定資産税が高くなる設備について詳しく見ていきましょう。
高速特性型のエレベーター
タワーマンションなどの高層建築物では、エレベーターの上昇・下降速度が重要になります。高層階への移動時間が短いほど、利便性も向上するからです。高速型のエレベーターは、移動速度が通常のエレベーターよりも速いため、固定資産税の評価点数が高くなります。
免震装置
世界有数の「地震国」と呼ばれている日本では、免震装置を備えたマンションは安全性が高く評価されます。免震装置は、地震時の建物の揺れを軽減する装置です。固定資産税の評価点数が高くなることは避けられませんが、住人の安全性を確保するためには欠かせません。
人命を優先すれば、たとえ税額が上がっても免震装置は設置するべきでしょう。
スライディングウォール
可動式の間仕切りであるスライディングウォールは、可動式の間仕切りに使われる用具です。空間の使い方を自由自在に変えられるため、さまざまな間取りで活用されています。
しかし、その優れた利便性に対して高い評価点数が与えられることも事実です。スライディングウォールは非常に便利で機能性も高いですが、固定資産税を節約したい場合には、よりコストを抑えられるオプションを検討した方がいいかもしれません。
☆本章のまとめ
マンションを選ぶ際には、共用部の設備だけでなく、そのほかのオプション装備の有無にも目を向ける必要があります。安全性や快適性だけでなく、固定資産税の負担もまた住まい選びのポイントとして取り入れましょう。
固定資産税を抑えるための特例
土地の使い方や建物の設備によって、固定資産税の税額は大きく異なります。少しでも税額を安くするためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、固定資産税を安く抑えるための特例について詳しく見ていきましょう。
小規模住宅用地の特例
土地の上に建っている物件には、小規模住宅用地の特例が適用されます。特例の対象となるのは専用住宅と併用住宅の2種類です。
〈1〉専用住宅
専用住宅とは、家屋の敷地の一部が居住専用として使われている土地のことです。その敷地が住宅のトータル床面積の10倍以下であれば、小規模住宅用地とみなされます。
〈2〉併用住宅
併用住宅は、一部が居住用として使われている敷地で、その部分がトータル床面積の4分の1以上を占める場合、小規模住宅用地と見なされます。ただし、敷地が家屋の床面積の10倍を超える場合は、小規模住宅用地には含まれません。
小規模住宅用地では、固定資産税評価額の6分の1が課税標準額となります。そのため、固定資産税を大幅に抑えることが可能です。
新築住宅の特例
新築物件にも特例があります。2024年3月31日までに新築された物件のうち、居住用部分の床面積がトータル床面積の2分の1以上であり、かつ50平米以上280平米以下であれば、減額措置の適用対象です。
さらに、この特例では新築物件の固定資産税が3年間(3階以上の中高層耐火建築物の場合は5年間)にわたり、2分の1に減額されます。ただし、減額の対象となるのは居住用として使用する部分の床面積のうち、120平米までの部分に限られることに注意しましょう。
一般住宅用地の特例
一般住宅用地とは、小規模住宅用地以外の住宅用地のことです。この場合、固定資産税評価額の3分の1が課税標準額となり、固定資産税の負担が軽減されます。
認定長期優良住宅
2024年3月31日までに新築された認定長期優良住宅は、固定資産税が2分の1に減額される制度があります。認定長期優良住宅とは、長期にわたって安心かつ快適に暮らせる設計で建てられ、さらに行政の認定を受けた住宅のことです。
この特例を受けるためには、市区町村に認定を受けたことを証明する書類を提出する必要があります。また、固定資産税が減額される期間は5年間(地上3階以上の中高層耐火建築物においては7年間)です。
☆本章のまとめ
固定資産税は、特例措置を活用することで税額を抑えられます。それぞれの措置は複雑ですが、自分が所有する物件に応じて少しずつ特例の内実を知っていきましょう。
いかがでしたか?
今回は固定資産税が高くなる理由や、その要因となる建物内の設備について解説しました。固定資産税は、土地や建物の所有者が毎年納税しなければいけない税金です。しかし、物件によっては特例措置を利用することで、税額を大幅にカットできます。固定資産税の課税対象となる方は、これを機にぜひ節税対策を始めてみてください。
参考文献