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2024/06/28最終更新⽇時
2024/06/28鉄骨造の解体費用はいくら?内訳や作業の流れ・工法などを解説
- 不動産の知識


鉄骨造は耐震性や強度に優れているため、アパートやマンション、ビルなどの大規模な建物に多く用いられています。しかし、建物が強固なぶん、解体作業には多くの時間と手間がかかるのも事実です。
「所有している鉄骨造のアパートを解体したいけど、相場はどれくらいなの?」
「鉄骨造は解体費用が高いと聞いたけど本当?」
鉄骨造の建物を所有している方の中には、このような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、鉄骨造の解体費用の相場や内訳、高くなってしまう理由などを解説します。あわせて、費用が高くなるケースもいくつか紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
鉄骨造の解体費用の相場は?
建物の解体費用を左右する要素は多く存在します。中でも代表的なものが「構造」「物件の種類」「建坪」の3つです。つまり、建物が木造か鉄骨か、あるいはアパートか戸建てか、そして建物の大きさによって解体費用は決まります。
では、それぞれの要素に分けて解体費用の相場を見ていきましょう。
解体費用の相場―構造編―
解体費用の金額を大きく左右するのが建物の構造です。今回は鉄骨造にフォーカスした記事ですが、木造や鉄筋コンクリート造と比較すると理解が深まるかもしれません。詳しくは次の表を参考にしてください。さらに、30坪の家を解体すると仮定して、構造ごとの解体費用も記載しています。
建物の構造 | 解体費用の相場 | 30坪の家の解体費用 |
木造 | 1坪あたり3万~4万円 | 90万~120万円 |
鉄骨造 | 1坪あたり4万~6万円 | 120万~180万円 |
鉄筋コンクリート造 | 1坪あたり6万~8万円 | 180万~240万円 |
上の表から、木造の解体費用が最も安いことがわかります。最も高いのは鉄筋コンクリート造です。鉄骨造や鉄筋コンクリート造は構造が強固なため、解体時に多くの重機を必要とし、工期も長くなります。そのため、木造と比べて解体費用が高いのです。
木造と鉄筋コンクリート造との比較ができたところで、次は鉄骨造の解体費用を中心に見ていきましょう。
鉄骨造の解体費用の相場―物件の種類編―
同じ鉄骨造の建物でも、戸建てとマンションでは坪単価(1坪あたりの値段)が異なります。それぞれの解体費用の相場は、次の表を参考にしてください。
物件の種類 | 解体費用の相場(坪単価) |
住宅 | 14万~5万円 |
アパート | 5万~6万円 |
マンション | 5万~6万円 |
倉庫 | 3万~4万円 |
工場 | 3万~4万円 |
ビル | 6万~7万円 |
事務所 | 3万~4万円 |
店舗 | 4万~5万円 |
駐車場 | 2万~3万円 |
病院 | 3万~4万円 |
その他の建物 | 4万~5万円 |
鉄骨造の解体費用の相場―建坪編―
建坪とは、その建物の広さを指します。解体費用は1坪あたりの値段(=坪単価)で総額が決まるため、この建坪は非常に重要な要素です。では、実際に建坪ごとの解体費用の相場を見てみましょう。
建坪 | 重量鉄骨造の解体費用 | 軽量鉄骨造の解体費用 |
30坪 | 180万円 | 150万円 |
40坪 | 220万円 | 180万円 |
50坪 | 250万円 | 200万円 |
60坪 | 300万円 | 240万円 |
100坪(小規模なビル) | 400万円 | |
200坪(中規模なビル) | 700万円 | |
500坪(大規模なビル) | 1,500万円 |
上の表から、建坪が大きいほど解体費用は割安になっていることがわかります。これは、人件費や重機の単価や動員数が、建物の規模とはあまり関係ないからです。小規模な建物でも作業員や重機は必要ですが、その5倍の規模の建物に、5倍の人件費と重機が必要なわけではありません。
おまけ:地域ごとの鉄骨造の解体費用
鉄骨造の解体費用は、地域によって異なります。これは立地条件のほか、解体業者の工費の相場が地域ごとに違うからです。では、地方ごとの鉄骨造の解体費用はそれぞれいくらなのでしょうか。詳しくは次の表を参考にしてください。
地域(地方ごと) | 解体費用の相場(坪単価) |
北海道 | 2万1,773円 |
東北地方 | 3万3,733円 |
関東地方 | 4万4,279円 |
中部地方 | 3万1,556円 |
近畿地方 | 4万2,686円 |
中国地方 | 7万5,703円 |
四国地方 | 2万4,125円 |
九州地方・沖縄 | 3万1,635円 |
鉄骨造の解体費用の内訳は?
鉄骨造の解体作業は、建物を解体するだけでなく、廃棄物の処分費や工事に必要な環境整備など、さまざまな費用が発生します。実際、解体費用はどのような内容で構成されているのでしょうか。ここでは、鉄骨造の解体費用の内訳について詳しく解説します。
仮設工事費
解体作業を始めるにあたって、まずは準備を整えなければいけません。たとえば、足場の設置や電気・水道設備のほか、近隣住民に配慮した防塵・防音シートの設置なども必要です。このように仮設工事は、解体作業をスムーズに進めるために行います。また仮設工事の費用は、全体の費用のおよそ10~20%です。
付帯工事費
解体では、建物の解体だけでなく、周辺の付帯施設や外構物も取り壊さなければいけません。具体的には、ブロック塀や庭、物置や車庫などが挙げられます。これらの付帯工事費は、全体の費用のおよそ30~40%です。
廃棄物処分費
解体されたブロックや石膏ボードなどの建材を処分するために必要な費用です。こうした廃棄物は一般的なゴミと異なり、建設リサイクル法に基づいて適切に処分しなければいけません。全体の費用のおよそ40~50%です。
重機費用・人件費
解体作業には、重機やそれを動かすための作業員が必要になります。なお、重機費用・人件費それぞれの定義は次の通りです。
重機費用……解体に使用する重機(ブルドーザーやクレーンなど)や、それらを運搬するためにかかる費用
人件費……解体作業に携わる作業員を動員するためにかかる費用
重機費用・人件費は、解体費用全体の中で比較的少額です。相場はおよそ3万~5万円となります。
☆本章のまとめ
解体作業を行う際には、これらの費用をしっかりと把握し、余裕のある資金プランを立てましょう。また、作業員の安全や、周辺環境への配慮も欠かせません。
鉄骨造の解体の流れ・工法は?
鉄骨造の解体作業はどのように進められるのでしょうか。また、工法が気になる方もいるはずです。ここでは、鉄骨造の解体の流れと工法について解説します。
鉄骨造の解体の流れ
鉄骨造の解体作業は、次のような手順で進められます。
① 調査・計画
まずは、建物の状態や周辺環境を調査し、解体の計画を立てます。作業工程や工法を決める際は、建物の構造や耐震性、解体時の安全性などを考慮することが重要です。
② 施工準備
解体現場の囲いや仮設の足場などを設置します。この施工準備は、周辺環境の安全を確保するための作業です。そのためにも、防塵・防音シートなどで現場を囲み、近隣トラブルを予防しなければいけません。また、解体に使用する機材や建材の準備もこの段階で行います。
③ 鉄骨の解体
鉄骨造の建物は、まず鉄骨部分の解体から行われます。クレーンや切断機などを使用して、鉄骨を少しずつ取り壊していくのです。この際、周辺環境への影響を最小限に抑える必要があります。②の施工準備で防塵・防音シートなどを設置したのはそのためです。
④ 外壁・内壁の解体
次に、外壁や内壁などの非構造部分の解体が行われます。重機や解体用のハンマーなどを使用して、壁を撤去していくのが主な作業です。この際は、周辺地域への振動や騒音に配慮する必要があります。
⑤ 基礎の解体
最後に、建物の基礎部分を解体していきます。この作業では、地上だけではなく、地中に埋設された基礎コンクリートの撤去も必要です。そのため、重機や掘削機を使う作業員は、周辺の地盤を傷つけないよう丁寧な作業が求められます。
鉄骨造の解体工法
続いて、鉄骨造の解体工法について解説します。代表的な工法は次の通りです。
① ダウン法
ダウン法は、鉄骨部分を少しずつ切断し、上から下へ建物を解体していく工法です。メリットとしては、安全性の高さと周囲への影響が少ないことが挙げられます。
② プッシャー法
プレッシャー法は、鉄骨部分をクレーンやプッシャーなどの機材で外側から押し倒していく工法です。工場やビルなど、大規模な鉄骨造の解体に向いています。作業の効率性が非常に高いため、工期の延長リスクを抑えられることが大きなメリットです。
③ カッター法
カッター法は、専用の切断機を使用して、鉄骨を切断しながら少しずつ解体していく工法です。細やかな作業が求められますが、周辺環境への影響を大幅に軽減できるため、せまい敷地でも問題なく解体作業を進められます。
☆本章のまとめ
解体作業を安全に進めるためには、事前準備と綿密な作業プランが欠かせません。疑問点があれば、解体業者にその都度相談しましょう。また、立地条件に合った工法を選ぶことで、近隣トラブルや周辺環境への影響を抑えられます。
鉄骨造の解体費用が高くなるケース
鉄骨造の解体作業は、建物の解体だけでなく、付帯工事やその他の撤去が必要な場合もあります。そのため、建物によっては解体費用が平均より高くなる場合もあるのです。ここでは、鉄骨造の解体費用が高くなるケースを紹介します。
騒音対策が必要なケース
鉄骨造の解体作業では、騒音や振動をできるだけ抑える必要があります。特に、閑静な住宅街や建物が密集した地域では、騒音規制法に基づいた対策が必要です。たとえば、防塵シートや防音シートの設置、低騒音型の重機の使用などが挙げられます。しかし、これらの対策には費用がかかるため、結果的に解体費用が高くなってしまうのです。
隣の建物との距離が近いケース
隣の建物との距離が近いケースは、解体作業に伴う騒音や振動などに、特に注意が必要です。防音や振動の対策が必要なだけでなく、その対策方法にも工夫を求められます。
さらに、もし作業中に隣の建物を傷つけてしまった場合は、損害賠償を請求されるかもしれません。そのため、業者によっては解体作業前に隣の建物の調査や、写真撮影などを行うこともあるようです。これらの対策や調査が必要なため、隣の建物との距離が近いケースでは費用が高くなります。
間口がせまいケース
前面道路への接面幅がせまい(=間口がせまい)ケースでは、大型重機を使用できないことがあります。そうなると、より小型の重機を使用するか、作業員の手作業で賄うしかありません。また、たとえ小型の重機を使用できたとしても、間口に歩道が含まれている場合は、歩道切り上げ工事が必要となります。このような追加工事や手作業に費用がかかり、結果的に解体費用のコストが増加してしまうのです。
土地そのものがせまいケース
土地がせまいケースでも、大型重機を使用できないことがあります。そのため、小型の重機や手作業で賄わなければいけません。その結果、重機の効率性を活かせず、「人件費の増加」と「工期の延長」という費用増加リスクを負うことになります。
また、解体作業に必要な職人の駐車場が確保できない場合には、別途駐車料金が発生することもあります。このようなさまざまな事情により、土地がせまいケースでは解体費用が高くなるのです。
外構物を解体しなければいけないケース
解体予定の建物によっては、本体の解体だけでなく、外構の解体が必要なこともあります。たとえば、敷地を囲むブロック塀やカーポートなどです。また、庭に木がある場合も、伐採や抜根の作業が必要になります。このように、外構物を解体しなければいけないケースでは、本体の解体費用とは別に別途料金が必要です。
残置物があるケース
解体作業を行う際、その敷地内に残置物が見つかることがあります。特に、築年数が長い物件で発見されることが多い傾向にあります。残置物が見つかった場合、解体業者に処分してもらわなければいけません。また、解体後の残置物は、一般廃棄物ではなく産業廃棄物に分類されます。そのため、作業員が撤去した後は、通常とは別ルートで処分しなければいけません。これらの撤去・処分費用が別途かかるため、残置物があるケースは解体費用が高くなります。
地中埋設物が見つかったケース
解体作業を進める中で、地中に埋設された物が見つかることがあります。これらの地中埋設物の撤去にも追加費用が必要です。特に、浄化槽や骨組みなどの大規模な地中埋設物の場合、撤去費用は高額になってしまう可能性があります。
アスベスト除去工事が必要なケース
建物にアスベストが含まれている場合、除去作業が必要になります。アスベストの除去には専門的な技術が必要です。そのため、どうしても除去費用は高額になります。
☆本章のまとめ
建物や土地の状態によって、鉄骨造の解体作業は高くなってしまうことがあります。このような追加費用に対応できるよう、解体作業を依頼する際は余裕のある資金調達を心がけましょう。
いかがでしたか?
今回は鉄骨造の解体費用について解説しました。鉄骨造は構造が強固なぶん、作業には多くの時間と手間がかかります。解体費用の内訳や作業工程、追加費用が必要になるケースをあらかじめ把握しておくことで、資金プランを立てやすくなるはずです。また、解体作業の料金プランは業者によって異なります。依頼する際は、複数社を比較してから最適な1社を選びましょう。