マンション建て替えが決まるまでの流れや建て替え時の費用について解説!

日本にマンションが誕生して70年以上が経過していますが、今後建て替えられるマンションは増えていくのでしょうか。結論、そこまで増えないと予想されます。
今回は、マンションを所有している人、もしくは今後マンションを購入して所有しようとしている人へ向けて、日本でマンションの建て替えが増えない理由や、もし建て替えが決まった場合の費用や流れを解説します。ぜひ最後までご覧ください。
実際にマンションを建て替えることはあるのか
初めに、マンション建て替えに関する基本的な知識を身につけましょう。最近のマンション市場において、建て替えは頻繁に行われているのでしょうか。
マンションを建て替えることはあるのか
国土交通省が発表したマンション建て替えの実施状況によると、建て替え準備中か工事完了済み、つまりマンション建て替えがされているマンションの合計は270件です。この数値は2022年4月時点の数字ですが、年々数件ずつマンションの建て替えは増えているものの、言い換えると日本全国に数千、数万以上ものマンションがある中、建て替え件数は数件しか増えていないのです。非常に少ない数字だと言えるでしょう。
現在住んでいるマンションが建て替えられることはあるのか
築30年以上のマンションは、2021年末時点で約249万戸ありますが、建て替え済みや工事中のマンションは合計270件しかありませんでした。これは、全体の0.65%に過ぎません。この数字から、マンションの建て替えがまだ進んでいないことがわかります。そのため、今すぐに住んでいるマンションが建て替えになる可能性は低いと言えます。
ただし、築年数が50年以上のマンションを考えると、状況は異なるかもしれません。築50年以上のマンションは約21.1万戸あるため、仮に1つのマンションに60戸があると仮定すると、これは3,516棟に相当します。
この場合、建て替えを実施したマンションの割合は7.7%にもなります。つまり、築50年以上のマンションは、建て替えを検討する可能性が高いと言えます。
しかし、この計算はあくまで目安であり、実際の状況は異なるでしょう。老朽化したマンションの建て替えについては、地域の都市計画や管理組合の判断など、さまざまな要因が関与するため、不透明な要素が多いです。
マンション建て替えが日本でほとんど行われていない理由
では、なぜ日本においてマンションの建て替えがほとんど行われていないのでしょうか。それには、下記3点の要因が絡んでいます。
容積率の問題
容積率とは、地域ごとに定められた建物の建築密度の制限です。古いマンションは、当時の規制や基準に基づいて建てられています。しかし、建築基準法や地域の都市計画が改正された場合、新たな容積率に適合しないことがあります。この場合、新しい建物は元の建物よりも面積を縮小する必要があるため、建て替えが制限されるのです。
同意の取得の難しさ
建て替えには多額の費用が必要であり、積立金や追加費用の支払いが必要です。しかし、すべての居住者が追加費用を負担することに同意してもらわなければなりません。また、建て替え工事中は一時的に仮住まいが必要であり、これにも費用がかかります。すべての居住者が金銭的、時間的な余裕を持っているとは限らないため、同意を得ることが難しくなります。
費用の問題
マンション建て替えには膨大な費用がかかります。解体費用や建築費用の他に、土地の調査や設計、税金、仮住まいの費用などが必要です。これらの費用をすべての居住者で負担する必要があり、とくに高額な費用がかかる場合は同意を得るのが難しくなります。
これらの金銭的、法律的な理由により、マンション建て替えは慎重に計画され、多くの課題が存在するのです。こうした背景があり、実際に行われるケースは少ない傾向にあります。実際に古いマンションを購入したとしても、建て替えできる可能性は低いと言えるでしょう。
マンション建て替えが決まるまでの流れ
続いて、実際にマンション建て替えが決まるまでの流れを紹介します。実際に建て替えることを検討している人や、今後マンションの購入を検討している人は、しっかりと流れを理解しておきましょう。
マンションの建て替えが決まるまでの流れ
下記3つの段階を経ることで、マンションの建て替えは決まります。
- 検討段階
- 計画段階
- 実施段階
一つひとつ見てみましょう。
検討段階
検討段階では、初めに管理組合がマンションの再生方法を検討しなければなりません。一般的には、区分所有者からの要望や理事会の判断で検討が始まります。マンションの老朽化や設備の劣化、法改正による耐震基準の変更など、さまざまな要因が建替えの検討を促すことが多いです。検討の対象となる再生方法としては、建替えのほかに改修やマンション敷地の売却などがあります。それぞれの選択肢について、管理組合が改善効果やコスト、影響範囲などを詳細に検討し、区分所有者に情報提供します。各再生方法の説明会などを開催し、区分所有者の意向を確認し、最終的に再生方法を決定します。
計画段階
計画段階では、再生方法が建替えである場合、具体的な検討を進めます。建替え推進決議などを実施し、管理組合として建替えの具体的な計画を策定します。建替えに必要な予算や工程、事業協力者(建築会社や設計事務所)の選定などを行います。区分所有者とのコミュニケーションを密にし、建替えの意義や計画内容を理解してもらい、合意形成を進めなければなりません。
実施段階
実施段階では、建替えの実行に移ります。建物計画や事業計画を具体化し、設計や工事の準備を進めます。事業協力者と区分所有者との個別面談や説明会を通じて、建て替えの進捗や予定を周知し、区分所有者の理解を得なければなりません。なかなか区分所有者の理解を得られないことも多く、かなり時間がかかってしまうことが多いです。最終的な建て替えの実施に向け、区分所有者全員の合意を得ることが望ましいですが、全員の合意を得るのが難しい場合は、区分所有法に基づく建替え決議によって建替えを進めることが一般的です。
このように、マンションの建替え決定までには検討段階、計画段階、実施段階といった段階的なプロセスがあります。区分所有者と管理組合が協力して、円滑かつ適切に進めることが重要です。
※区分所有者=1部屋ごとのマンション購入者
マンション建て替え時の費用
基本的に建て替えに必要な負担額は、区分所有者が負担することになりますが、その金額や内訳はさまざまな要因により変動します。合計すると、1戸当たり1,000万円から3,000万円程度だといわれています。また、オーナー自身で負担しなければならない費用も発生します。それぞれ見てみましょう。
マンション建て替え時の費用
解体費用
古い建物を解体するための費用です。建物の構造や規模、解体作業の複雑さによって変動します。また、解体後の廃棄物処理費用も含まれ、廃棄物がどれくらいあるかによっても解体費用は大きく変動します。
建設費用
新しいマンションを建てるための費用です。建物の規模、階数、設備のグレードなどによって大きく変わります。建設費用には、建物の基礎工事から内装、外装、設備までのすべての工程の費用が建設費用に含まれます。
設計費用
新しいマンションの設計を行うための費用です。建築設計士や構造設計士、インテリアデザイナーなどの専門家の料金が含まれます。設計費用は、建物のデザインや機能性、耐震性などに応じて変動します。
事務経費
建て替えプロジェクトの管理や手続きにかかる経費です。建設業者や設計者との打ち合わせ、書類作成、手数料などが含まれます。
仮住まい費用
建て替え工事中に一時的な住まいが必要な場合、その費用が含まれます。仮住まいの家賃や移動費用、家財道具の保管費用などが含まれます。
これらの負担額は、マンションの建物や環境によって大きく異なります。そのため、一概にはいくらかかるとは言い難いです。例えば、建物の規模や構造が複雑な場合や、建て替え後の新しいマンションの設備や仕様が高級な場合、費用は増加します。また、地域の建設業者の工事費や設計士の料金、解体業者の料金など、地域ごとの価格差も考慮する必要があるでしょう。建て替えプロジェクトの計画段階で、見積もりが行われ、区分所有者に提示されます。
自己負担額が減る可能性
マンション建て替えにおいて、区分所有者の自己負担額が減る可能性があるかもしれません。自己負担額が減ることは、区分所有者にとって、建て替え字の重要なポイントです。具体的には、以下のような要因が関わってきます。
容積率の有効活用
容積率とは、敷地面積に対して建物が占める面積の割合を示す指標です。建築基準法で定められており、地域ごとに異なります。既存のマンションが容積率を十分に活かしていない場合、新しいマンションでは容積率いっぱいまで住戸を増やし、その追加の住戸を売却することで、建て替え費用の一部を賄うことができます。
売却による資金調達
現在のマンションを先に売却し、その資金を建て替え費用に充てることも可能です。ただし、マンションの売却は市場状況やマンションの立地によって異なりますし、管理者の判断だけでは決定できません。建て替えプロジェクトが始まる前に売却を検討し、買い手を見つけることで、建て替え費用が下がることがあります。
購入時の考慮
そもそもの購入時の話になりますが、現在中古のマンションを購入する場合、築年数や老朽化リスク、建て替えの可能性を事前に考慮することが重要です。築年数の古いマンションを購入する際は、将来的な建て替えのリスクを踏まえて検討する必要があります。
タイミング
建て替え計画が進行する前に、自己負担を減らすための行動を取ることが重要です。建て替えが計画され始めてから売却に出すと、買い手が見つかりにくくなる可能性があります。建て替え計画が始まる前に、売却の可能性を検討することが重要です。
以上の点を考慮して、建て替えによる自己負担を減らすための戦略を検討することが重要です。不動産会社や専門家との相談を通じて、最適な選択肢を見つけることが大切です。
まとめ
今回、マンション建て替えについて詳しく解説してきました。法律的、金銭的な関係で日本ではほとんどマンションの建て替えは実施されていないことがわかりました。しかし、今後マンションの購入を建て替える前提で検討している人は、今回紹介したような建て替え費用、自己負担を減らす方法などの知識を知っておかなければ損してしまうかもしれません。万が一の場合に備え、正しい知識を身につけておきましょう。