田舎の実家は処分しないとどうなる?デメリットや処分方法を解説

田舎にある実家を相続した、もしくは相続する予定がある方が、頭を抱えてしまうのが「自分はそこに住む予定がない」というケース。人が住まない物件は、税金や維持費ばかりがかかるため、不動産ならぬ「負動産」となってしまいます。

この記事では、誰も住まない田舎の実家の処分問題について解説します。

  • 処分しないとどのようなデメリットがあるのか
  • どのように処分したら良いのか
  • 処分について考えるタイミングはいつなのか

上記を中心に詳しくふれていきますので、ぜひ参考にしていただき、田舎の実家の処分方法について検討を始めていただければと思います。

田舎の実家は処分しないとどうなる?デメリット3点

田舎の実家を処分しないとどんなデメリットがあるのかご存じでしょうか?不動産の処分となると、手続きのめんどうさが予想されて重い腰が上がらない、という気持ちもとても良くわかります。しかしながら、処分しないまま所有しておくことは金銭的にも精神的にも負担になる、ということを説明していきます。

税金が毎年かかる

不動産は所有しているだけで、毎年、固定資産税と都市計画税の納付が求められます。

固定資産税とは、土地と建物の所有者にかかる税金です。都市計画税は、都市計画の整備や都市開発費用をまかなうために設けられた税金で、都市計画区域内にある土地や建物が対象となります。毎年4~5月に交付されるのが一般的で1年分を一括払いでも、4期などに分割して支払うことも可能。以下のように算出されます。

固定資産税

固定資産の評価額(課税標準額)×税率1.4%(標準税率のため変動あり)

都市計画税

固定資産の評価額(課税標準額)×税率0.3%(標準税率のため変動あり)

宅地に建物が立っている場合は「住宅用の特例」が適用され、固定資産税であれば最大で6分の1軽減され、都市計画税であれば最大3分の1が軽減されます。

しかし、「倒壊の恐れがある」「衛生上有害となる恐れがある」「景観を損なう」などの条件を満たしてしまうと行政から「特定空家」に指定されてしまいます。「特定空家」に指定されると、「住宅用の特例」が解除され軽減がなくなり税金が高くなってしまいます。

人が住まないと老朽化が進む

家は住む人がいないと急速に老朽化が進みます。老朽化が進むと、倒壊の恐れが出るなど非常に危険です。住む予定がないのに修理等の管理費がかかりますし、修繕したとしても、細かい部分の管理は行きわたりません。老朽化により、不動産価値も下がるので大きなデメリットといえます。

ご近所トラブルに発展する場合もある

人が住まない住宅は、庭の草や木が伸び放題となり、景観を大きく損ねます。隣の敷地まで枝葉が伸びてしまうと、ご近所からクレームが入ってしまう原因に。また誰かが勝手に住み着いてしまったり、空家と知られてしまうとゴミの不法投棄場になってしまったりすることもあるようです。田舎の実家周辺で暮らし続けている住民に迷惑をかけないためにも、住まない宅地は早めに処分をする必要があります。

田舎の実家を処分する5つの方法

田舎の実家を処分する方法にはどんなものがあるのか見ていきましょう。住まないのに相続してしまった実家の処分方法には以下の5つがあげられます。

  • 不動産会社に仲介を依頼する
  • 不動産会社に買い取ってもらう
  • 寄付する
  • 土地の所有権を国に移す
  • 貸し出す

それぞれ詳しく解説していきます。

1-1.不動産会社を仲介して売却する

まずは不動産会社を仲介して買い手を見つけてもらう方法があります。「仲介」による売却する場合は、買い手が個人となるのが一般的です。売りたい物件を不動産会社に売却依頼(媒介契約の締結)することで、不動産会社がチラシやインターネットに広告を出したり、店舗で紹介したりして買い手を探してくれます。

買い手が見つかり、売買契約が成立した際に、不動産会社に対して仲介手数料の支払いが必要です。仲介手数料の目安(上限値)は法律によって定められています。

  1. 売買価格200万円以下の部分:売買価格×5%
  2. 売買価格201万円~400万円以下の部分:売買価格×4%
  3. 売買価格400万円を超える部分:売買価格×3%

上記の「部分」という箇所に注目してください。たとえば200万円以下の物件であれば、1のみの計算式で手数料が算出されますが、200万円を超えた物件だと、1~3をそれぞれ計算した合計が仲介手数料となり、計算が複雑になります。

たとえば売却金1,000万円の場合の計算は以下になります。

200万円×5%=10万円

200万円×4%=8万円

600万円×3%=18万円

10万+8万+18万=36万円

参照:国土交通省|宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額

不動産会社が仲介して買い手を探す場合の注意点は、売却期間が長期となる可能性があることです。田舎の実家の立地条件や、家屋の状態によっては売れにくいことを理解しておきましょう。

不動産会社に買い取ってもらう

仲介によって個人の買い手を探すのではなく、不動産会社が買い手となる方法があります。個人の買い手を探す必要がないため、短期間で手放すことが可能。また不動産会社が直接買い取るため、仲介手数料も発生しません。面倒な家の清掃や、家具家電の処分も不要のため労力がかからないのがメリットです。

ただし、買取金額は市場価格よりも低くなるのが一般的で、相場の6~8割程度。これは不動産会社が買い取ったあとに、不動産価値をあげて個人に売り出すためにリノベーションを行うための経費や、家屋を解体して更地にするなどの費用が引かれているためです。リノベーション・リフォーム・更地にしたとしても、売却が見込めそうにないと不動産会社が判断した場合、買い取ってもらえないこともあります。

寄付する

税金や修繕費がかかるくらいだったら、無料でもいいから手放したいと考える方もいるのではないでしょうか。そういった場合におすすめなのが地方自治体に寄付するという方法です。仲介手数料などの費用はかかりませんが、地方自治体が寄付を必ず受け入れるとは限りません。固定資産税は自治体にとっても貴重な財源となるため、所有者でいてほしいと考えるからです。寄付を申請された土地は利用価値があるかどうかを査定され、審査に通った場合のみ受け付けられるのです。

土地の所有権を国に移す

2023年4月から「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」通称「相続土地国庫帰属法」が施行されました。この法律は持ち主不明の土地を減らすために土地の所有権を国に移すことを目的としています。

参照:法務省|相続土地国庫帰属制度の概要

施工開始前に相続した宅地であっても申請が可能で、法務大臣(法務局)による要件審査・承認を得られれば、申請者が負担金を納付することで国庫帰属となります。

かかる費用は、申請時に14,000円が必要です。承認後、宅地・田んぼや畑であれば面積に関わらず20万円の負担金を納付します。宅地のうち都市計画法の市街化区域または用途地域に指定されている地域の場合は、面積区分に応じた算出となります。

負担金の詳細については、以下をご確認ください。

参照:法務省|相続土地国庫帰属制度の負担金

また、建物がある土地や放置車両などの有体物が放置されている土地は、申請不可となっています。建物解体や不要物の撤去は自身で行う必要があるので、処分方法としてのハードルは高めといえます。

なお、古い家を解体するには、30坪で約90万~150万が相場と言われています。坪数が大きいほど費用は上がりますし、重機が入りにくいような複雑な地形であれば、もっと加算されるでしょう。解体費用+負担金を払ってでも、住まない宅地を国に帰属させるかは、慎重な検討が必要です。

番外編:貸し出す

処分ではありませんが、他者に貸し出すことによって、税金や維持管理費をまかなえるほどの賃貸収入が入る可能性があります。

「自分たちは住まないけれど、将来的に自分たちの子どもが住むかもしれない」という場合でも、子どもたちが大きくなるまでの間は、他の人に住んでもらうことによって、税金分の収入カバーや家屋や庭の老朽化を防げるといったメリットがあります。

デメリットとしては、古い家を賃貸に出す場合、リフォームされた状態でないと借り手を見つけるのは難しくなります。立地条件などから賃貸需要があるのか検討したうえでリフォームしてください。また、一度貸し出すと、退去のタイミングは賃借人の都合によりますので、長い期間退去しない可能性も視野にいれておきましょう。

田舎の実家を相続放棄する

田舎の実家を相続しない、という選択肢もあります。相続放棄をするには、いくつかの注意点があります。まずは田舎の実家だけ放棄することはできず、不動産含めた預貯金すべてを放棄するしか方法がありません。相続放棄を検討するにあたって、まずは不動産以外の財産すべてを把握しましょう。相続予定の財産すべての合計がマイナスになるのであれば、相続放棄をおすすめします。

また、自分が相続を放棄したことで、相続権が他の兄弟姉妹に変わりトラブルとなるケースがあります。住宅ローンが完済していないなどの理由で負債がある場合は誰も相続したくないですよね。相続を放棄するむねをあらかじめ親族間で話し合う場を設けるなど対策しておきましょう。

相続放棄の申告は、相続の開始から3か月以内という短い期間のため、親が亡くなってから慌てて考え始めるのではなく、親が元気なうちに親族含め早めに考えておくべき問題といえます。

田舎の実家の処分方法は、親が存命のうちに考える

前の章でも触れましたが、田舎の実家の処分問題は、親が存命で、判断力がしっかりあるうちに一緒に考えておくことをおすすめします。親も自分の死後に引き継がれない不動産のことで子どもたちが苦労するのは望んでいません。親から相談を持ち掛けられない場合は、子から今後について話し合いの場を設けましょう。

子は親に対して、田舎の実家に住む意思がないことをきちんと伝えましょう。他の兄弟姉妹がいる場合は、全員に相続の意思確認をします。誰も引き継ぐつもりがないと分かれば、早めに売却活動を始めるのも手です。立地条件や家屋の状態によって、売却活動が長引く可能性があることをふまえると、親が元気なうちに実家売却の計画を進めるのは、早すぎることではありません。

親が存命ならリースバックがおすすめ

親が存命のうちに自宅を売却すると、その後の住まいはどうしたらよいのか?という新たな問題が発生します。その問題は、リースバックという方法で解決します。

リースバックとは、自宅を不動産会社に売却すると同時に賃貸契約を結び、売却後も自宅を賃貸して住み続けられる便利な手法です。死後に誰も住まないのであれば、早めに不動産を現金化しておき、老後資金に充てるという使い方もできますよね。

慣れ親しんだ自宅から引っ越すこともなく、死後に不動産問題で子どもたちを悩ませることもないので、余生を安心して過ごせるのではないでしょうか。リースバックについても、通常の不動産売却と同じようにインターネットによる一括審査が可能です。検索エンジンで「リースバック 見積り」などで検索すれば、簡単に査定依頼のできるページが出てきます。田舎の実家処分の解決策として、ぜひリースバックも検討してみてください。

まとめ|田舎の実家の処分については早めに考え、計画的に

田舎の実家は、親の死後に自身が住むことがないのであれば、早めに処分することをおすすめします。誰も住んでいないのに、毎年税金を納め続けたり、家屋や庭の管理費用がかさんだりといった費用面での負担に加え、管理が行き届かないことからご近所トラブルに発展するなど、精神的にも負担となりえる大問題です。

処分方法は複数あり、一番簡単なのは不動産会社を仲介した売買や、不動産会社に直接売却する方法ですが、田舎の実家は必ずしも簡単に売却が決まるわけではありません。

親が元気なうちに、親戚一同でどう処分したら良いのかをじっくり話し合い、円満で最適な処分方法を見つけてください。