アパートローンの基礎と低金利で組むための方法

アパートローンの基礎知識

アパートローンとは、通常の住宅ローンとは異なり、アパートやマンションを賃貸経営などの事業用に建築・購入する際に金融機関から借りることができるローンを指します。このローンは、集合住宅を一棟まるごと購入する場合や、一室だけの購入にも利用可能です。また、建築・購入だけでなく、建築資金、リフォーム資金、現在所有しているアパートなどの低地買取資金、借換資金など、幅広い用途で利用できます。満20歳以上で前年度税込年収が200万円以上の安定した収入のある方であれば申し込むことができ、住宅ローンとは異なり年齢上限は定められていません。年齢上限が定められていない理由は、アパートローンがアパートなどの家賃収入によって返済される事業が主であるため、個人の給与から返済する住宅ローンとは異なるからです。万が一、アパートローンの借主が亡くなってしまっても、相続人に引き継がれ、アパートからの家賃収入が発生するため、ローン返済が止まることはありません。つまり、借主の年齢よりも事業性やアパートの収益性が非常に重要であるということです。
アパートローンの魅力は、自己資金が少なくてもローンを組むことで投資できる点です。基本的な投資は自己資金で行うことが多く、投資回収ができるかどうかという不安が付きまといます。それに対して、アパートローンを活用した賃貸経営での投資は、アパートローンを組むための審査があるため、投資回収が見込まれない立地や物件では審査が通りにくく、失敗するリスクが抑えられます。
通常のローンでは審査が通りにくいことがデメリットとなりますが、アパートローンに関しては「審査が通らない」ということは「投資回収が見込めない」とも言えますので、審査が通りにくいことは長期的に見て失敗するリスクを抑えられるという点でメリットといえるでしょう。

住宅ローンとアパートローンの違い

住宅ローンとアパートローンの主な違いは以下の4点です。

  • (1)不動産利用目的
  • (2)審査基準
  • (3)金利
  • (4)税制

(1)不動産利用目的

住宅ローンは、自分や家族が居住するために新築や中古住宅を購入する目的で利用されるローンです。一方、アパートローンは住宅ローンとは逆に、自分や家族が住居しない物件(賃貸経営や投資用不動産)を購入するために利用されるローンです。利用用途が明確なので、勘違いすることは少ないでしょう。
後述しますが、審査基準や金利の関係で、投資用不動産にも関わらず住宅ローンで購入していることが後で発覚した場合、契約違反となり、金融機関によってはアパートローンへの切り替え、もしくは一括返済、場合によっては投資事業自体ができなくなる恐れがあるため、注意が必要です。

(2)審査基準

住宅ローンの場合は主に、収入、勤務先などの個人属性が審査基準で、資産価値が低いと分かっていても本人の返済能力で融資されるかどうかが決まります。それに比べアパートローンの場合は、住宅ローンの基準にプラスして物件の収益性や資産性も見られます。アパートローンは物件で得られる家賃収入の中から経費や税金を差し引いたうえで、ローン返済も出来るかどうかの事業計画に基づいて融資されます。
だからこそ、住宅ローンに比べアパートローンの審査は通りづらいと言われています。

(3)金利

住宅ローンの金利相場は1%前後に対し、アパートローンは2%〜4%です。アパートローンが高いというよりも、住宅ローンは衣食住の住の部分に当たるため、回収出来る可能性が高いので低い金利になっています。
全てのローンに言えることですが、回収できる可能性が高いローンは金利が低く、回収できる可能性が低いローンは金利が高い傾向にあります。
この金利をいかに低くできるかが、アパートローンの最大の鍵になります。

(4)税制

住宅ローンはアパートローンに比べて金利が低い上に、2025年年末まで「住宅ローン減税制度」を利用することが出来ます。
一方でアパートローンは、ローン借り入れに対する減税措置は特にありません。しかしアパートローンも税制的メリットが何も無い訳ではなく、相続税対策に効果的だと言われています。

アパートローンのメリットとデメリット

アパートローンの最大のメリットは「レバレッジ効果」です。
不動産投資や賃貸経営で言うレバレッジ効果とは、自己資金が少なくてもローンを活用することで大きな利益を得る事を指します。
例えば、利回りが6%取れるアパートを建築でき、自己資金2,000万円の場合、アパートローンを組まず自己資金2,000万円のみで、アパートを建築した場合の利益は120万円です。それに比べ、自己資金2,000万円とアパートローン5,000万円で7,000万円のアパートを建築した場合の利益は、単純計算で420万円になります。
レバレッジ効果を狙う理由が上記の数値からイメージできますが、アパートローンを使用する際の問題は金利です。仮に元利均等返済の35年ローンで5,000万円を4%の金利で借りていた場合の毎年の返済額は約266万円となり420万円-266万円=154万が利益として残り、自己資金のみのアパート建築と比べて大きく変わらなくなってしまいます。しかし金利2%の場合、毎年の返済額は約199万円となり、420万円-199万円=221万円が利益として残ります。たかが2%の差ですが年間で約67万円も変わり、35年ローンの期間で考えると、2,345万円もの差額になります。最大のメリットであるレバレッジの効果を最大限に活かすためには、金利がいかに重要なのかは言うまでもありません。
そして、デメリットは「返済が出来なくなった場合、強制的に売却されてしまい、借金だけが残る可能性がある」ということです。どうしてこのような状態になってしまうかというと、金利をあまく見ていた、不動産投資を長期保有の株式投資と同じように考えてしまっている、などが挙げられます。
事業ということをしっかりと理解し、管理し、行動する事。メリットにも記述した金利に関しての知識をしっかりつける事が大切です。

アパートローン金利の動向

日本の金利は1990年代から下落傾向にあり、2008年のリーマンショック、2013年の金融緩和政策、そして2016年から続いているマイナス金利政策の影響により低金利が続いています。アパートローンも日本の金利の流れと同様に下落傾向にあり、住宅金融支援機構が提供する、過去の繰上返済制限精度無の金利データを参考に記述すると、2016年からのマイナス金利政策で約3年ほどは1.5%~1.6%を推移しています。しかし、2020年頃からアメリカの金利上昇や、ロシアのウクライナ侵攻による原油や原材料、物流費など商品価格の高騰の影響を受け、徐々に上昇していることがわかります。
では、今後のアパートローン金利はどうなるのでしょうか。
1990年代から様々な影響を受けてきたアパートローンの金利ですが、1.5%前後の下げ止まりが続いていたことを考えると、これ以上下がる事は無いと推測できます。2022年8月現在で1.9%となっており、今後も上昇していく可能性があるので注意が必要です。
詳しいデータについては、賃貸住宅融資金利のホームページを確認してみましょう。
*参考:賃貸住宅融資金利

低金利でアパートローンを組むには

アパートローンを組む際、少しでも金利を安くした方が将来的に良いということは、伝わったと思います。実際に金利を少しでも下げる可能性がある方法を3つ紹介します。審査に通りやすくなる部分でもありますのでぜひ参考にしてみてください。

  • (1)事業計画書を細部まで作りこむ
  • (2)個人属性を上げる
  • (3)複数の金融機関で相談する

(1)事業計画書を細部まで作りこむ

アパートローンを借りる方は、賃貸経営をされるという方が多いでしょう。通常の経営もそうですが、どのくらいの売上が見込め、どのくらいの経費が掛かるかをあらかじめ計画を立てておく必要があります。
もしあなたが融資する側だとして、ざっくりしていて根拠のない事業計画書を提出してきた人と、過去のデータに基づいた売上見込みや、詳細な修繕費の経費、入居者が見つからない場合の集客方法などが明確になっている事業計画書を提出した人がいたら、必ず後者の方が安定して返済出来ると思うはずです。
事業計画書は信憑性の高いデータを組み込み、リスクに対する明確な対処法等、細部ま で作りこむことにより、審査が通りやすいのはもちろん、金利にも影響します。そして自分にとっても今後の指針となりますので必ず作りこみましょう。

(2)個人属性を上げる

融資を受ける際、個人の年収や職業など多岐にわたってチェックされます。しかし年収や資産などはすぐに上げられるものではないでしょう。ここで解説する個人属性を上げる方法とは、今組んでいる他のローンの見直しや、クレジットカードのキャッシング枠の見直しです。
最近だとスマートフォンの購入は分割をするのが主流になっているので、組んでいる方が多いと思いますが、返済負担率(毎月の返済額/月収)が上がってしまい多少なり審査に影響が出てしまうので、返済してしまったほうが良いでしょう。クレジットカードは使ってないにしてもキャッシング枠があるカードを所有していると、今後借り入れをする可能性があると判断され審査に影響してしまう可能性がありますので、不要なカードは解約、もしくはキャッシング枠を廃止してしまいましょう。

(3)複数の金融機関で相談する

金融機関によって金利、そして審査が通るかどうかも変わってきます。金利が低い順で、一般的に言われているのが都市銀行や日本政策金融公庫が一番低く、続いて地方銀行、信用金庫、ノンバンクの順番になります。しかし、金利が低い金融機関は審査が通りづらいので、多くの金融機関で相談する場合は通りづらい都市銀行から順番に相談していく方が効率が良いでしょう。何か業者に依頼するときに相見積もりを依頼するようなイメージです。
他にも、物件を購入する不動産会社と取引のある金融機関は通常よりも金利が低くなる傾向にあるため、不動産会社を通しての相談も並行して進めると良いでしょう。
アパートローンを検討しているのであれば、金利は一番重要で妥協をしてはいけない部分です。後悔しないように、対策出来る事をしっかりと行い、現状最善の金利でローンを組めるよう慎重に行動していきましょう。