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2024/06/06最終更新⽇時
2024/06/06鉄骨造の解体費用相場は?種類別に安く抑える方法を解説
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建物の構造には、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などがあります。中でも鉄骨造は強度が高く、一戸建てやアパート、マンションなど多くの建物に使用されています。
ただし、強度が高いため木造に比べ解体工事に時間がかかり、その費用も高くなる傾向があります。
では、実際に鉄骨造の建物を解体する際、どの程度の費用が必要なのでしょうか。この記事では、鉄骨造の解体費について解説します。費用が高くなる理由や、安く抑えるポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
鉄骨造とは?
鉄骨造とは、建物の骨組みとなる柱や梁などに鉄骨を使用した建物を指します。主に使用されるのは鉄の合金である鋼です。鋼は別名スチールとも呼ばれるため、鉄骨造は「S造」と表記されることもあります。木造と比較して非常に強固なため、ビルやアパート、マンションなどの大型建築物に用いられます。また、一戸建てや倉庫、工場や体育館なども多くが鉄骨造です。
なお、鉄骨造は用いられる鋼の厚さによって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2種類に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
軽量鉄骨造の特徴とメリット
軽量鉄骨造は、厚さ6㎜未満の鋼材を使用して建築された建物を指します。あらかじめ事業所の工場などで建材を製造し、現場で組み立てるため、工期が比較的短いことが特徴的です。そのため、重量鉄骨造と比べて建築費用も安くなります。3階建て以下のマンションや住宅、倉庫など中小規模の建物の多くが軽量鉄骨造で建築されています。
重量鉄骨造の特徴と解体時の注意点
重量鉄骨造は、厚さ6㎜以上の鋼材を使用して建築された建物を指します。鋼材が分厚いため、軽量鉄骨造よりも建物の強度が高くなるのが特徴的です。そのため、3階建て以上のマンションやビル、工場など大規模な建物のほとんどが重量鉄骨造で建築されます。
また、重量鉄骨造は軽量鉄骨造と比較して柱や梁が太いため、建物を支える柱の本数を抑えることが可能です。柱が少ないということは、その分だけ屋内の空間を確保できることを意味します。そのため、重量鉄骨造は大きな窓を取り付けたい場合や吹き抜けの構造のしたい場合など、空間を広く活用した建物にも利用されます。
鉄筋コンクリート造との違いと解体費用の比較
鉄骨造と混同されやすい構造に「鉄筋コンクリート造」が挙げられます。鉄筋コンクリート造とは、建物の骨組みとなる柱や梁などの型枠に鉄筋を配置し、そこにコンクリートを打ち込む方法です。強固なだけでなくしなやかさも兼ね備えているため、耐震性に優れた構造と言えます。また、鉄骨造と比べて防音性が高いことも特徴の1つです。構造そのもの強度がきわめて高いため、10階建て以上の高層ビルやマンションなどに多く使用されます。
鉄骨造の解体費用の相場
ただし、強度が高いため木造に比べ解体工事に時間がかかり、その費用も高くなる傾向があります。
さらに、鉄骨造の中でも軽量鉄骨造と重量鉄骨造とでは費用が異なります。一般的に、木造は鉄筋や鉄骨と比べて建材が柔らかいため、解体にかかる時間も費用もそれほどかかりません。しかし、鉄骨造や鉄筋コンクリート造は強度が高い分、解体にかかる時間も長く、費用も高くなります。
軽量鉄骨造の解体費用の相場
軽量鉄骨造の解体費用は、1坪あたり2万5,000円から4万円程度です。つまり、50坪の軽量鉄骨造の建物を解体する場合、かかる費用は50坪×2万5,000~4万円=125万~200万円です。ただし、外壁の資材としてヘーベル版(ALC版)が使用されている場合は、解体に手間がかかるため費用も嵩みます。
重量鉄骨造の解体費用の相場
重量鉄骨造は、軽量鉄骨造よりも強固なため、解体費用が1坪あたり3万~4万5,000円と高くなります。
たとえば50坪の重量鉄骨造を解体する場合、かかる費用は50坪×3万~4万5,000円=150万~225万円です。
鉄筋コンクリート造と鉄骨造の解体費用比較
鉄筋コンクリート造は、軽量鉄骨造や重量鉄骨造よりも強度が高いため、解体費用は1坪あたり3万5,000円から8万円と最も高くなります。
たとえば50坪の鉄筋コンクリート造を解体する場合、かかる費用は50坪×3万5,000~8万円=175万~400万円です。
建物の階数や種類別の解体費用
ここまでは、鉄骨造の種類ごとの解体費用について解説しました。では、鉄骨造で建てられた建物の階数や種類によって、解体費用はどのように変化するのでしょうか。4つの事例に分けて見てみましょう。
① 1階建ての軽量鉄骨造の解体費用
前提として、解体費用は建物の構造や敷地面積によって異なります。ここでは、1階建ての軽量鉄骨造の建物を20坪として考えてみましょう。軽量鉄骨造の解体費用を2万5,000円(1坪)とすると、この場合の解体費用は20坪×2万5,000円=50万円となります。ただし、実際の解体工事では敷地を囲むブロック塀の取り壊しや、それによる産業廃棄物の撤去などには別途費用が必要です。そのため、解体費用そのものは50万円でも、付帯工事がある場合は総額60万~70万円になることもあります。
② 3階建ての軽量鉄骨造の解体費用
2階建ての軽量鉄骨造を30坪として考えてみましょう。さらに、ここでは解体費用の相場も先ほどより高めの4万円(1坪)として計算します。この場合の解体費用は、30坪×4万円=120万円です。ただし3階建ての建物となると、重機や廃棄物を運ぶための運搬車の調達など、多くの経費がかかりますから、多めに見積もって150万円程度と考えましょう。
③ 5階建ての重量鉄骨造の解体費用
ここでは、5階建ての重量鉄骨造を120坪として考えてみましょう。重量鉄骨造は軽量鉄骨造よりも解体費用の相場が上がります。坪あたりの解体費用を4万円とすると、この場合の解体費用は120坪×4万円=480万円です。また、この5階建ての建物となると解体工事の規模が大きくなります。周辺地域への配慮も必要となるでしょう。そのため、防音シートや防塵シートなどの配置、現場管理費などが別途かかることが想定されます。そのため、実際の解体費用にプラス100万円を目安として資金を準備しておきましょう。
④ 資材置き場の鉄骨造の解体費用
資材置き場は本来の用途だけでなく、ガレージやカーポートなどの車庫としても活用できます。敷地面積によって多少の差異はありますが、鉄骨造であれば1坪につきおよそ2万~3万円の解体費用がかかります。たとえば、鉄骨造で20坪の資材置き場を解体する場合、かかる費用は20坪×2万~3万円=40万~60万円です。ただし、解体後の産業廃棄物や廃材の処分、コンクリート土間の解体には別途費用がかかりますので、余裕を持った資金調達を心がけましょう。
鉄骨造の解体費用が高くなる理由
鉄骨造は強度が高いため、木造に比べて解体費用が高くなります。しかし、解体費用が嵩む原因はそれ以外にも存在するのです。ここでは、鉄骨造の解体費用が高くなる具体的な理由を4つに分けて解説します。
① 立地条件・周辺環境
鉄骨造の解体費用は、立地条件や周辺環境の影響に左右されます。解体工事では専用の重機や運搬車が必要ですが、近隣建物との距離が近かったり、敷地の間口が狭かったりすると、大型車両の出入りができず、追加費用が発生することがあります。そうなれば、機械で行うはずの作業を人力で補う必要があり、多額の人件費がかかります。また、閑静な住宅街などで解体工事を行う場合は、周囲への防音・防塵に配慮が必要です。防音シートや防塵シートの設置など、本来の解体費用に加えて諸費用がかかります。
② アスベスト撤去費用が解体費用に与える影響
建築時のアスベストの使用は、人体に悪影響を及ぼすため2006年に全面禁止されました。しかし、特に1975年以前に建設された建物にはアスベストが使用されている可能性があり、その撤去には高い費用がかかる場合があります。この場合、解体時にアスベストを撤去しなければいけません。アスベストの撤去は専門性が高いため、撤去費用は高くなります。建物の状態によっては、最大で工事費用の2倍近くかかるケースもあるのです。また、アスベストの撤去費用は発塵性の程度によって異なり、解体前に調査が行われます。
③ 地中埋設物の撤去費用の違い
地中に埋設物が残っている場合、その撤去にも費用がかかります。規模によっては数万円から高額な費用がかかることもあります。ここでのポイントは、地中埋設物は基本的に「工事中に発見されることが多い」ということです。つまり、解体費用の見積もり段階では把握できていないため、地中埋設物が見つかった場合は追加で別料金がかかってしまいます。もし、工事前に地中埋設物が把握できているのであれば、あらかじめ解体業者にその旨を伝えておきましょう。
④ 残置物の有無による費用増加
解体工事の際、屋内に使わない家具や電化製品が残っていると、それらは一般廃棄物として処分されます。しかし、これは解体時に発生する建材の瓦礫といった産業廃棄物とは別物です。処分ルートも処理する場所も異なるため、結果的に処分費用が高くなります。解体前の建物に家具や電化製品が残っている場合は、事前に撤去しておきましょう。
鉄骨造の解体費用を抑えるためのポイント
鉄骨造の解体費用を抑えるには、どのような点に注意すればいいのでしょうか。ここでは、鉄骨造の解体費用を抑えるポイントを4つに分けて紹介します。
① 個人で登記を行う方法
建物を解体すると、「建物消滅登記」を行う必要があります。これは、所有する建物が登記上から消滅したことを証明するための手続きです。複雑で手間がかかるため、多くの方は土地家屋調査士などの専門家に登記を委託します。しかし、登記を依頼する場合は数万円単位の代行費用が必要です。少しでも解体費用を抑えたいのであれば、時間と労力のコストはかかりますが、個人で建物消滅登記を行うことをおすすめします。手続きを進める上でわからないことがあれば、法務局に問い合わせることも可能です。ただし、個人で登記する場合であっても、手続きに必要な登録免許税は課税されることに注意しましょう。
② 解体補助金の活用法
自治体によっては、解体工事の費用に対して補助金が給付されます。補助金の種類はさまざまですが、それぞれ申請が必要となりますので、気になる方は各自治体のホームページを参考にしてください。多くの場合、「建物が残ったままだと、周辺の社会生活に影響を及ぼすと判断された場合」に申請が許可されます。たとえば、長く放置された空き家や、著しく老朽化が進んだ建物などです。空き巣や放火などの犯罪や、建物倒壊による被害が発生するかもしれないからです。このような場合に、自治体から解体費用の補助金が給付されます。また、給付条件として「その自治体に属する解体業者に工事を依頼する」と定めているケースも多いようです。解体費用を抑えたい方は、自治体にどのような補助金があるかを調べてみましょう。
③ 建物内の不要物を事前に処分する方法
前章で説明したように、解体前の建物に家具や電化製品が残っていた場合、産業廃棄物とは別に処分費用がかかります。建物の立地条件や周辺環境などは個人では対策できません。しかし、建物の中に残った家具や電化製品は、個人で処分することが可能です。解体費用をなるべく抑えたいのであれば、解体前の建物に残ったものは事前に処分しておきましょう。
④ 相見積もりを取る際のポイント
解体工事の費用は、依頼先の業者によって異なります。同じ工事内容でも、その業者のシステムや作業工程、工事現場から事業所までの距離、廃棄場までの距離などさまざまな要素の違いによって金額が異なるのです。そのため、解体を依頼する業者を最初から一社に絞るのではなく、まずは複数の業者に相見積もりを取りましょう。相見積もりとは、同じ内容の解体工事の見積もり査定を、一度に複数の業者へ依頼することです。相見積もりをすることで、業者ごとの料金設定や作業工程を比較できます。また、料金が安ければいいというわけではありません。工事費用の金額は、基本的にその業者の知識と経験、工事の技量と比例すると考えましょう。質の高い工事をする業者は、その分だけ料金設定も高くなっています。自分の経済状況と相談しながら、高すぎず安すぎない業者を選ぶことが重要です。また、相見積もりをする際は、業者ごとの解体工事の実績もチェックしておきましょう。
今回は鉄骨造の建物の解体費用について解説しました。鉄骨造には軽量鉄骨造と重量鉄骨造の2種類があります。いずれも強度や耐震性に優れた構造のため、木造と比べて解体に時間がかかるのが特徴的です。また、それぞれの解体費用の相場や建物の規模、建坪によって異なります。解体工事を依頼する際は、最初から1つの業者に絞るのではなく、まずは相見積もりで複数社を比較し、適切な一社を選びましょう。