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2025/10/09new
借地権割合の計算方法をやさしく解説|路線価・倍率方式の調べ方と具体例
土地の相続や売却を考えるときには「借地権割合」の計算が欠かせません。しかし「借地権割合とは何か」「路線価や倍率方式はどう調べるのか」「自分で正しく計算できるのか」と不安を感じる方は多くいます。 この記事では、借地権割合の基本を整理した上で、国税庁の路線価図や倍率方式を使った調べ方を丁寧に解説します。さらに具体的な計算例を紹介し、土地の形や条件によって評価が変わるケースや、貸家がある場合の注意点についても説明します。 借地権割合とは?計算の前に知っておきたい基礎知識 土地の価値を評価する際には「借地権割合」という考え方が使われます。これは、土地の価格のうち、借地人が持つ権利がどの程度に相当するかを示す割合です。 例えば借地権割合が70%であれば、その土地の評価額のうち7割が借地人の権利として扱われることになります。 借地権割合は全国一律ではなく、地域や土地の性質によって異なります。取引が活発な都市部の住宅地や商業地では高めに設定される一方で、郊外や取引の少ない地域では低めに設定される傾向があります。この差は、土地の利用価値や需要の違いを反映しています。 国税庁は毎年1月1日を基準日として路線価や倍率を定め、7月に公表します。そのなかで借地権割合も明示されており、相続税や贈与税の計算を行う際に利用されます。相続や売却を検討する人にとって、借地権割合は土地の価値を正しく把握するための出発点となります。 借地権割合を調べる方法 借地権割合を調べる方法は大きく分けて「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。土地の場所によってどちらを使うかが決まっており、いずれも国税庁が公表する資料を利用します。 路線価方式の調べ方 都市部や主要な地域では路線価方式が採用されています。国税庁の「路線価図」にアクセスし、都道府県→市区町村→町名の順に選択して該当する地図を表示します。地図上の道路には数値とアルファベットが記載されており、数値は1㎡あたりの価格(千円単位)、アルファベットは借地権割合を表します。 例えば「215D」と表示されていれば、その土地の路線価は1㎡あたり21万5,000円で、借地権割合は60%になります。このようにして、所在地ごとの価格と割合を読み取ることができます。 関連記事:【わかりやすい】路線価とは?土地の査定と路線価の関連性を解説! 倍率方式の調べ方 一方、路線価が設定されていない地域では倍率方式を使います。国税庁が公表する「評価倍率表」を確認し、対象地域の倍率と借地権割合を調べます。その上で、課税明細書などで確認できる固定資産税評価額に倍率をかけると自用地の評価額が求められ、そこに借地権割合を乗じて借地権の評価額を算定できます。 倍率方式は、主に郊外や取引の少ない地域で利用されます。調べ方自体はシンプルですが、評価額を出すためには固定資産税評価額が必要になる点に注意が必要です。 借地権割合を使った計算方法と例 路線価図や評価倍率表で借地権割合を確認できたら、それらの数値を使って実際に借地権の評価額を計算していきます。計算方法は、土地の所在地によって「路線価方式」と「倍率方式」の2つに分かれます。それぞれの具体的な計算式と、数字を当てはめた計算例を見ていきましょう。 路線価方式の計算例 路線価方式では、まず自用地の評価額を計算し、その後に借地権割合をかけて借地権の評価額を求めます。 自用地評価額=路線価×地積×補正率 借地権評価額=自用地評価額×借地権割合 ■具体例路線価表示が「500C」(1㎡あたり50万円、借地権割合70%)、地積100㎡、奥行補正率0.97の土地を想定します。 自用地評価額=50万円×100㎡×0.97=4,850万円 借地権評価額=4,850万円×0.70=3,395万円 このように、路線価図の数値と借地権割合を組み合わせれば、借地権の評価額を簡単に算出できます。 倍率方式の計算例 倍率方式では、固定資産税評価額に倍率をかけて自用地評価額を求め、さらに借地権割合をかけます。 借地権評価額=固定資産税評価額×倍率×借地権割合 ■具体例固定資産税評価額1,000万円、倍率1.2、借地権割合60%の土地を想定します。 借地権評価額=1,000万円×1.2×0.60=720万円 倍率方式は路線価方式より計算がシンプルで、固定資産税評価額と倍率がわかればすぐに算定できます。 計算時に気をつけたい土地の条件 借地権割合を用いて評価額を計算するときは、単純なかけ算だけで終わらない場合があります。土地の形状や立地によっては補正が必要になるため、注意が必要です。 奥行・形の補正ポイント 土地の形によって利用価値が下がる場合には補正率をかけて評価を下げます。補正の適用は奥行→間口→形状の順で行うのが原則です。例えば奥行が極端に長い土地や間口が狭い土地は利用しにくいため、評価額が減額されます。補正率には下限があり、0.60を下回ることはありません。こうしたルールに従って、土地の形に応じた調整が行われます。 角地や高低差、特殊な地形について 2つ以上の道路に接する角地は利便性が高いため、評価額が加算されることがあります。反対に、道路より低い土地やがけ地のように利用に制約がある土地は減額補正がかかります。 また、無道路地のように公道に直接接していない土地は、利用のために通路を開設する費用を控除して評価します。控除額は最大40%に達することもあります。私道負担部分やセットバックが必要な部分についても評価額が減るので、対象となるかを確認することが大切です。 貸家がある土地の場合:借家権割合との関係 土地の上に貸家が建っている場合、その評価はさらに調整されます。これは「借家権割合」という考え方によるものです。 借家権割合の基礎知識 借家権割合は全国一律で30%と定められています。貸家が建っている土地(貸家建付地)の評価額は、次の計算式で求められます。 自用地評価額×〔1 −(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)〕 ここで賃貸割合とは、建物全体の床面積に対して実際に貸している部分がどれくらいあるかを示す数値です。例えば全体の80%を貸していれば、賃貸割合は0.8となります。 貸家建付地の簡単計算例 具体的な例として、自用地評価額5,000万円、借地権割合50%、借家権割合30%、賃貸割合80%のケースを考えます。 計算式:5,000万円×〔1 −(0.5×0.3×0.8)〕 =5,000万円×0.88 =4,400万円 このように、貸家がある場合には評価額が下がります。空き家が多い場合や、親族への無償貸与など賃料を取っていない場合には賃貸割合が低下またはゼロとなり、評価額は下がらない点に注意が必要です。 定期借地権など特殊契約の場合 借地権には、一般的な「普通借地権」のほかに、契約条件が異なる「定期借地権」が存在します。普通借地権は、契約更新によって長期間にわたり利用されるのが通常であり、評価もこれまで紹介した基本的な計算方法で行います。 一方、定期借地権は契約期間が満了すると土地を地主に返還することが前提になっています。したがって、借地人の権利は普通借地権よりも制約が大きく、評価方法も異なります。国税庁の通達では、定期借地権の評価にあたり、契約期間や権利金の授受状況、契約内容などを踏まえて個別に算定する方法が示されています。場合によっては、複利年金現価率といった金融計算を用いるケースもあります。 特殊な契約形態では、一般的な借地権割合をそのまま当てはめると実態に合わないことがあります。定期借地権などの契約に該当する場合は、国税庁のタックスアンサーや評価通達を確認し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。 関連記事:定期借地権の全知識!種類別メリットと活用方法 相続や売却の際にチェックしたいポイント 借地権割合を使って計算できるようになっても、相続や売却の場面では追加で確認すべき点があります。ここでは代表的な3つのポイントを紹介します。 どの年度の路線価を使う? 路線価や倍率は毎年1月1日を評価基準日として設定され、7月に公開されます。相続税の計算では「相続が開始した年の路線価」を使うのが原則です。過去のデータは国税庁のサイトに保存されているので、数年前にさかのぼって確認することも可能です。売却価格の参考にする際も、できるだけ最新の年度を参照することが望ましいです。 自分で確認する方法と書類整理のヒント 計算が終わったら、借地権評価額と底地評価額を合計し、それが自用地評価額と一致するかを確認します。これは計算の突き合わせとして役立ちます。また、路線価図や倍率表、補正率の根拠となる資料はPDFなどで保存しておくと安心です。税務署から説明を求められた場合に備えて、計算過程を残しておくことが重要です。 広い土地(地積規模の大きな宅地)の場合はどうする? 大都市圏で500㎡以上、その他の地域で1,000㎡以上の宅地は「地積規模の大きな宅地の評価」という特例の対象になることがあります。条件に当てはまる場合は評価額が低く計算されることもありますが、用途地域や容積率などの細かな要件を確認する必要があります。該当しそうな場合は、通常評価と特例評価の両方を比べて有利な方を採用します。 関連記事:借地権の評価額はどう決まる?相続時にも使える基礎知識と計算方法を解説 まとめ 借地権割合は、相続税や贈与税の計算だけでなく、売却時の価格を考える上でも重要です。路線価や倍率を確認し、借地権割合をかけて評価額を算定する基本を理解すれば、自分でもおおまかな目安をつけられます。 ただし、土地の形状や規模、貸家の有無、特殊な契約などによっては評価が複雑になり、判断を誤るリスクもあります。私たちリアルエステート「おうちの相談室」では、借地や底地、共有持分の整理など難しいケースに専門家が直接対応し、安心して相続や売却を進められるようお手伝いしています。迷ったときは一人で抱え込まず、ぜひお気軽にご相談ください。
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2025/10/09new
借地からの立ち退き拒否は可能?拒否できないケースと交渉の流れ
借地に住んでいると、突然地主から「契約を更新しない」「立ち退いてほしい」と言われることがあります。長年住み慣れた家を手放すのは簡単なことではなく、引越し費用や生活基盤の不安も大きいものです。 しかし、借地人の権利は借地借家法で強く守られており、地主の一方的な都合で立ち退きを迫られても必ず応じる必要はありません。 本記事では、借地からの立ち退きを拒否できる条件と拒否できないケース、さらに立ち退き料の相場や交渉の流れについて分かりやすく解説します。正しい知識を持つことで、冷静に対応し有利に行動できるようになります。 地主から立ち退きを求められたら最初に確認すべきこと 突然「立ち退いてほしい」という通知を受け取ったとしても、慌てて応じる必要はありません。借地借家法という法律は、借地人が安心して住み続けられるよう強い保護を与えています。そのため、地主の一方的な都合だけで立ち退きを迫られることはありません。 まずは冷静に内容を確認し、自分にとって不利にならないよう準備を整えることが大切です。 契約の種類を確認する 最初に見るべきは、借地契約が普通借地権か定期借地権かという点です。普通借地権であれば、更新拒絶には正当事由が必要であり、簡単に立ち退きを強制されることはありません。一方、定期借地権は期間満了で終了するため、更新や延長は原則できません。契約書にどう記載されているかを必ず確認しましょう。 通知書の内容を確認する 地主から送られる立ち退き要求は、通常「内容証明郵便」で届きます。ここには契約更新を拒絶する理由や期限が記載されています。受け取った通知書は破棄せず、コピーを取り、今後の交渉や裁判で証拠として使えるよう保管してください。 期限や手続きの適正性を確認する 借地契約の更新拒絶は、法律で「契約満了の1年前から6か月前まで」の間に通知することが定められています。この期間を外れている場合、その通知は無効になる可能性があります。通知のタイミングや記載内容が適切かどうかを確認することも大切です。 立ち退きを拒否できない主なケース 借地人の権利は法律で強く守られていますが、一定の条件がそろえば立ち退きを拒否することが難しくなります。ここで重要になるのが「正当事由」という考え方です。地主にとっての必要性と借地人への影響、さらに補償の有無などを総合的に判断し、裁判所が妥当と認めた場合にのみ、更新拒絶や契約解除が認められます。代表的なパターンを見ていきましょう。 地主に正当事由がある場合 地主が自分でその土地を使う強い理由を持ち、あわせて立ち退き料など合理的な補償を示している場合には、正当事由が認められやすくなります。 例えば、地主が居住用の住宅を建てたい、事業のために敷地を利用したいといったケースが典型です。このとき、補償の金額が大きいほど地主の主張が有効と判断される傾向にあります。 建物が危険なほど老朽化している場合 借地に建つ建物が著しく老朽化し、倒壊などの危険があるときは、借地人に住み続けさせることが周囲の安全を脅かすと判断されます。この場合、更新拒絶に地主の正当性が認められる要因となります。 単に古いだけではなく、「危険」と評価されるかどうかがポイントで、耐震性の不足や大規模な修繕が困難な状態が根拠とされることが多いです。 借地人に契約違反がある場合 借地人自身が契約条件を守っていないときは、立ち退きを拒否することは難しくなります。代表的なのは以下のケースです。 地代を長期間滞納している 地主の承諾を得ずに建物を増改築した 契約に反する用途で土地を利用した こうした契約違反は「債務不履行」と見なされ、地主は契約を解除することができます。借地人に落ち度がある場合、裁判でも立ち退きを免れるのはほぼ不可能と考えてよいでしょう。 立ち退き料はいくら?相場と算定の仕組み 立ち退き要求に直面したとき、多くの借地人が気になるのは「いくら補償がもらえるのか」という点でしょう。立ち退き料には明確な法律上の計算式はなく、ケースごとに金額が変わります。しかし、過去の判例や実務ではいくつかの目安が使われています。 借地権価格を基準に算出される 立ち退き料の出発点は「借地権価格」です。これは土地の評価額に借地権割合を掛けて算出されます。例えば土地の評価額が1億円、借地権割合が60%なら、借地権価格は6,000万円です。この金額が交渉の基礎となり、立ち退き料もこの水準を踏まえて決まります。 判例では「借地権価格の30〜50%程度」を立ち退き料とした例が多く、実務上の相場感として参考にできます。 補償費用が上乗せされる 実際の立ち退き料は、借地権価格だけではなく、以下のような費用が加味されることがあります。 引越しや建物解体にかかる費用 店舗や事務所の場合は営業補償や顧客喪失による損失 新居や新たな借地を探すための費用 特に事業用借地の場合は、営業権や得意先喪失による補償が大きくなる傾向があり、数千万円規模の補償が認められることもあります。 地主の事情によって変動する 立ち退き料は地主側の「正当事由」の強さによっても変わります。地主の事情が弱ければ弱いほど、裁判所は高額の立ち退き料を命じやすいのです。逆に、借地人が地代を滞納している、建物が危険な状態にあるなど、借地人側に落ち度があれば金額は下がります。 交渉の現場では、地主が提示する額が低くても、判例の相場や補償費用を示すことで増額を求めることができます。専門家に依頼して不動産評価や損失額を算出してもらえば、交渉を有利に進められるでしょう。 関連記事:借地の立ち退き料の相場とは?地主が知っておくべき正当事由と交渉の進め方を徹底解説 立ち退き交渉と裁判の流れ 立ち退き問題は、通知を受け取ってすぐに解決するものではありません。多くの場合は交渉を重ね、それでもまとまらなければ裁判に進むという流れになります。ここでは一般的な進行の順序を確認しておきましょう。 交渉段階 地主からの立ち退き通知は、通常「内容証明郵便」で届きます。ここで示された理由や期限が妥当かどうかを確認し、必要であれば異議を申し立てます。 交渉では、立ち退き料の金額や支払い条件が大きな焦点となります。借地権の価値、移転に伴う損失、引越し費用などを根拠に、妥当な補償を求めることが重要です。交渉の際は、感情的なやりとりではなく、客観的な資料や根拠をもとに主張することで、合意に近づきやすくなります。 裁判段階 もし交渉で合意できなければ、最終的には裁判に持ち込まれることになります。裁判所は、地主の主張に正当性があるか、借地人への影響がどれほど大きいか、提示された立ち退き料が適切かを総合的に判断します。 裁判に進むと解決までに時間がかかりますが、その間も借地人は土地を使用し続けられます。したがって、裁判を恐れて拙速に妥協する必要はなく、必要に応じて専門家の助言を受けながら冷静に対応することが大切です。 立ち退きを拒否したいときの具体的な対処法 立ち退き通知を受け取ったとしても、すぐに応じる必要はありません。借地人が取るべき行動を段階的に整理しておくことで、不利な条件で合意してしまうリスクを減らせます。 借地を利用し続ける必要性を示す 「ここに住み続けなければならない理由」を明確にしておきましょう。 例えば、子どもの通学、家族の介護、地域社会とのつながり、事業基盤の維持など、立ち退きが生活や仕事に大きな支障を与える事実を具体的に整理します。これらは裁判所の判断材料となり、立ち退きを拒否する正当性を補強できます。 地主の主張を精査する 地主が提示している立ち退き理由が、本当に法律上の正当事由に当たるのかを確認します。契約書の条項、これまでの賃料の支払い状況、建物の状態などを照らし合わせ、合理性が欠ける点を指摘できれば有効です。過去の判例を調べ、類似のケースで借地人が勝訴した事例を参考にするのも有効な方法です。 専門家に相談する 立ち退き交渉や裁判は法律知識が不可欠です。弁護士や借地権に詳しい不動産会社に早めに相談すれば、適切な戦略を立てやすくなります。専門家の助言を受けることで、地主との交渉を有利に進められ、必要に応じて代理人として対応してもらうことも可能です。 関連記事:借地権トラブルを弁護士に相談したほうがよい5つの事例|弁護士費用の目安 定期借地の場合は拒否できない? ここまで説明してきた「立ち退きを拒否できるかどうか」のルールは、普通借地権を前提としています。ところが、定期借地権の場合は事情が異なります。 定期借地は契約時点で「期間が満了したら終了する」と取り決められており、更新や延長は原則できません。契約書に「更地にして返還する」と記載されていれば、そのとおりに返還義務が発生します。したがって、普通借地のように「正当事由がないから拒否できる」という主張は通用しません。 ただし、定期借地でも例外があります。契約によっては建物買取請求権が認められていたり、地主と借地人の合意で条件変更が行われることもあります。また、満了時の対応を見据えて、事前に売却や等価交換といった出口戦略を検討することも可能です。 定期借地においては、契約書の条文がすべての基準になります。更新を前提にできないため、満了を迎える前から準備を進めることが重要です。 関連記事:借地借家法第38条とは?定期建物賃貸借契約の基本をわかりやすく解説 まとめ 借地人は法律で強く保護されており、地主の一方的な都合だけでは立ち退きを迫られることはありません。普通借地であれば、正当な理由がなければ拒否できる可能性が高く、立ち退き料の交渉余地も大きいです。 一方で、建物の危険な老朽化や契約違反がある場合、あるいは定期借地の場合は、拒否が難しい状況も存在します。立ち退き問題は、法律や判例を踏まえた総合判断となるため、ケースごとの対応が欠かせません。 通知を受け取ったら、まずは冷静に内容を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。リアルエステートの「おうちの相談室」では、借地や底地、共有持分といった複雑な不動産問題を、不動産のプロと弁護士・税理士が連携して解決に導きます。早めに相談することで、不要なトラブルを避け、有利に交渉を進めることができます。
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2025/10/09new
底地権譲渡とは?底地権を譲渡するメリット・デメリット、具体的な方法を解説
不要な底地の処分を検討しているものの、どうしたらよいか分からず困っている方もいるのではないでしょうか。底地をスムーズに譲渡するには、自分に合った方法を選択することが大切です。 この記事では、底地権譲渡の概要や譲渡するメリット・デメリット、譲渡相場、具体的な譲渡方法について解説します。底地を譲渡したい方は、ぜひ参考にしてください。 底地権譲渡とは? 底地譲渡とは、借地権が設定された土地(底地)の所有権を他者に売却することです。底地権を有する方は「地主」、地主から借りた土地に建物を建てて暮らす方は「借地人」と呼ばれます。ここでは、底地を売却するにあたって知っておきたい情報を紹介します。 底地権と借地権の違い 地主から借りた土地に建物を建てられる権利が「借地権」です。借地権が設定された土地を底地と呼び、底地の所有権を指して「底地権」と呼ばれることがあります。 土地に借地権を設定して第三者に貸しても、地主が持つ所有権はなくなりません。ただし、借地権が設定された土地に建物を建てられるのは、借地権を有する借地人のみです。 関連記事:底地権とは?借地権との関係と扱い方のポイントをわかりやすく解説 底地権の種類 底地は、そこに設定された借地権の種類によって性質が変わり、旧借地権・普通借地権が設定された底地と定期借地権が設定された底地に大別されます。 旧借地権・普通借地権は、契約更新が可能な借地権です。借地人から更新の請求があれば、地主に正当な理由がない限り契約が更新されるため、実質的に長期にわたって利用できます。 一方、定期借地権とは契約更新ができない借地権です。契約期間が満了したら、借地人は土地上の建物を解体し、更地にした上で地主へ返さなければなりません。 関連記事:借地権とは?普通借地権と定期借地権の違いから相続・売却のポイントまで 底地権の譲渡相場は買い手で異なる 底地を譲渡するにあたり、いくらで売却できるか気になる方もいるのではないでしょうか。底地の譲渡相場は買い手によって異なるため、事前に相場観を把握しましょう。ここでは、買い手別に底地の譲渡相場を解説します。 借地人の場合 底地を借地人に売却する場合の相場は、更地価格の50%ほどです。借地人には、底地を購入すると土地全体を自由に活用できるというメリットがあります。そのため、第三者に売却する場合と比べて高値での取引が期待できます。 関連記事:借地人が底地を買い取る場合の価格とは?「限定価格」の仕組みと計算方法を徹底解説 第三者の場合 底地を借地人以外の第三者に売却する場合の相場は、更地価格の10~20%ほどです。第三者が底地を購入しても、その土地は借地権を有する借地人しか利用できません。そのため、底地の売却価格は相場より安くなるのが一般的です。 関連記事:底地の評価方法とは?評価額の計算方法や売却相場も解説! 底地権を譲渡するメリット 底地の譲渡には、まとまった現金を受け取れる以外にもさまざまなメリットがあります。底地の譲渡を検討しているなら、これらのメリットが自分にとって有益かどうか考えることが大切です。ここでは、底地を譲渡する3つのメリットについて解説します。 税金の負担から解放される 底地を譲渡するメリットのひとつは、底地にかかる税金から解放されることです。底地を所有する限り、毎年固定資産税や都市計画税を納めなければなりません。固定資産税は「固定資産税評価額×1.4%」、都市計画税は「固定資産税評価額×0.3%」で求められます(税率は自治体によって異なる場合があります)。 借地人から地代を受け取っているとはいえ、税金の負担を考えると底地経営は収益性が高いとはいえません。税金の負担から解放されたいなら、底地の譲渡もひとつの選択肢です。 借地人とのトラブルを回避できる 借地人とのトラブルに頭を悩ませる必要がなくなる点もメリットです。底地経営でよくあるトラブルのひとつは、借地人の地代滞納です。アパート経営とは異なり、底地経営では家賃保証会社を利用できないため、借地人が地代を滞納したら自分で督促しなければなりません。 底地を譲渡すれば、借地人との関係を解消できます。借地人と感情的な対立がある方は、底地の譲渡を検討するとよいでしょう。 関連記事:底地トラブルはこうして解決できる|相続・地代・承諾…相談すべき10のケース 相続トラブルを未然に回避できる 底地を譲渡すれば、将来的な相続トラブルを未然に回避できます。底地は市場価格より低く売却されやすい一方、相続税評価額は比較的高めに算出される傾向があるため、売却しても相続税を払いきれない場合があります。 相続前に底地を譲渡すれば、相続税の課税対象額を抑えられて相続人に余計な苦労をかけずに済みます。また、相続人が複数いるケースでは、底地を売却して現金化することで遺産分割がしやすくなるメリットもあります。 底地権を譲渡するデメリット 底地の譲渡には、メリットだけでなくデメリットも存在します。目先のメリットに引かれて底地を譲渡すると、後悔しかねないため注意が必要です。ここでは、底地を譲渡する2つのデメリットを見てみましょう。 地代収入がなくなる 底地を譲渡すると、地代収入を得られなくなるのがデメリットです。借地人に土地を貸した場合の年間地代相場は、固定資産税・都市計画税の3倍~5倍です。土地に課される税金の総額が30万円であれば、年間90万円~150万円ほどの地代を受け取れます。 借地人との関係性が良好でトラブルが起こる心配がない場合、そのまま所有し続けるのも選択肢のひとつです。 関連記事:借地権の月々の地代には目安がある!?計算方法と金額設定について解説 売却価格が市場相場よりも安い 市場相場より安価で取引される点も、底地を譲渡するデメリットです。底地を購入しても、買い手は自分が住む家を建てるといった活用はできません。そのため、売却先は「地代収入を得たい」と考える不動産投資家に限定されます。 底地を売りに出しても需要が少ないことから、市場相場より低い価格を設定しなければならないのが実情です。 関連記事:底地の買取相場は安くなりやすいってほんと?売却時にかかる費用についても紹介します。 底地権を譲渡する方法 底地は通常の土地を比較すると買い手が見つかりにくいものの、売却できないわけではありません。ここでは、底地を譲渡する方法を5つ紹介します。自分に合った方法を選択することで、底地をスムーズに売却できるでしょう。 借地人に譲渡する 底地の譲渡を考えているのなら、まずは借地人に声をかけてみましょう。底地を最も高く売却できる相手は借地人です。 借地人にとっても、底地を購入することで土地全体を自由に活用できる点はメリットです。借地人が土地を購入したいと考えていれば、前向きに応じてくれる可能性があります。ただし、借地人に底地を購入する意思がない場合、他の方法を検討しましょう。 関連記事:借地権者が底地買取するメリットと、かかる税金は? 他の共有者に譲渡する 底地を共有している場合、他の共有者に持分を譲渡するのもひとつの方法です。他の共有者にとっても、持分を増やすことでより多くの地代収入を受け取れるメリットがあります。地代収入で生計を立てたい共有者がいれば、購入を検討してもらえるでしょう。 ただし、底地の割合を増やしても、土地を自由に活用できるようにはなりません。まずは購入の意思があるか、さりげなく確認することが大切です。 借地権を買い取ってから譲渡する 底地を少しでも高く売却したいなら、借地権を買い取ってから譲渡するのも選択肢のひとつです。借地を買い取れば、自分の意思で自由に活用できる「完全所有権」の土地となり、より買い手が見つかりやすいでしょう。また、市場相場に近い価格での売却が期待できます。 ただし、借地人から借地権を購入するには価格交渉が必要です。契約条件を巡ってトラブルが起こる恐れもあるため、不動産会社を介することをおすすめします。 底地と借地権を同時売却する 借地人も借地権を売却したいと考えているなら、底地と借地権をセットで売却する方法があります。一緒に売りに出せば、買い手は完全所有権の土地を取得できるため、市場相場に近い価格での取引が期待できる点がメリットです。 ただし、借地人に借地権を売却する意思がなければ同時売却は成立しません。まずは借地人に借地権を売却する意思があるかどうか、確認するところから始めましょう。 関連記事:底地と借地を一括で売却する方法とは?同時売却の進め方と注意点 専門の不動産会社に売却する 底地の譲渡は、専門の不動産会社に相談するのもおすすめです。専門の不動産会社には、購入した底地を活用して収益化を図る独自のノウハウがあります。 そのため、一般の買い手が見つかりにくい底地でもスピーディーに買い取ってもらえる点がメリットです。専門の不動産会社を探すときは、底地の売買実績に着目しましょう。 関連記事:底地買取は専門業者へ!メリットと選び方について解説 底地権を譲渡するときに押さえておきたいポイント ここからは、底地を譲渡する際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。権利関係が複雑な底地をスムーズに譲渡するには、事前にこれらのポイントを押さえた上で売却するのがおすすめです。 一般の買い手は見つかりにくい 底地を一般の買い手に譲渡するのは困難です。購入しても自分が住む家を建てられない底地を欲しがる方は少ないでしょう。そのため、底地をスムーズに譲渡したいなら、底地専門の不動産会社に相談することが大切です。 底地の譲渡を依頼する不動産会社を選ぶ際は、「取り扱い実績は豊富か」「底地が所在するエリアに対応しているか」を確認しましょう。 譲渡時に費用がかかる 底地を譲渡する際は、仲介手数料や印紙税といった費用が発生します。仲介手数料は不動産会社の仲介を通じて売却する際にかかる成功報酬、印紙税は売買契約書に課される税金です。買取の場合は仲介手数料が不要なため、売却時の費用を抑えたいなら、不動産会社の買取サービスを利用するのもひとつの選択肢です。 また、底地の売却益に対して譲渡所得税がかかる点も押さえておきましょう。なお、底地の譲渡で利益が発生しない場合、譲渡所得税はかかりません。 共有名義では共有者全員の同意がなければ譲渡できない 共有名義の底地を売却するには、共有者全員の同意が必須です。ひとりでも反対する方がいたら、売却できない点に注意しましょう。 ただし、自分の持分だけなら自由に売却可能です。共有者の同意が得られず、共有名義の底地全体の売却が難しいときは、自分の持分のみを売却するのも選択肢のひとつです。 まとめ 底地の譲渡には「税負担から解放される」「借地人とのトラブルや相続トラブルを回避できる」といったメリットがあります。一方、地代収入がなくなるというデメリットもあるため、慎重に検討することが大切です。 また、底地を購入しても土地を自由に活用できないため、一般の買い手を見つけるのは難しいことも押さえておきましょう。底地をできる限り早く譲渡したいなら、底地を専門とする不動産会社に相談するのがおすすめです。 リアルエステートでは、「おうちの相談室」を通じて底地に関するさまざまな悩みの解決をサポートしています。「底地権譲渡を考えているけれど、どうすればよいか分からない」と悩んでいる方は、お気軽にご相談ください。
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2025/10/09new
借地権の権利金の扱いは?役割と会計処理・税金について解説
借地権は「地代を支払うことで、建物所有を目的として土地を利用できる権利」です。ただし「地代を払っているのに、なぜ権利金も必要なのか」と疑問を持つ方もいるでしょう。 権利金の支払いは必須ではありませんが、地主・借地人の双方が正しく理解していないと、思わぬ支出につながる可能性があります。 本記事では、借地権における権利金の役割や会計処理、関連する税金について解説します。 借地権における権利金の役割 地代も権利金も同じ「借地権を維持するために支払う金銭」ですが、厳密にはそれぞれ異なる役割を持ちます。 まずは借地権における権利金の役割と、保証金や敷金など、不動産取引で発生する類似した一時金との違いについて見てみましょう。 権利金は借地権設定のための「対価」 借地人は、地主が所有する土地に借地権を設定することで、借地として自分の建物を所有するために土地を使用する権利を得ます。それと同時に、借地権の設定により、地主は自分で自由に土地を利用できなくなり大きな制限を受けます。 権利金は、その「借地権を『設定する対価』として支払う一時金」です。対価であるため、原則として返還はされない性質の金銭です。 これに対し、毎月支払う地代は地主が持つ「底地(借地以外の部分)」を利用する対価として支払います。なお、権利金を支払う契約では地代は底地部分に相当する水準(通常の地代)、権利金がない契約では土地全体に相当する水準(相当の地代)となるのが一般的です。 権利金と保証金・敷金・礼金・更新料の違い 借地権における権利金は、「借地権設定の対価で、返還されない金銭」でした。 それに対し、同じ不動産の賃貸借に関する一時金である保証金や敷金は、いずれも家賃や原状回復費用を回収できなかった場合に対する担保としての性質を持ちます。原則は担保であるため返還されますが、償却特約がある場合は返還されない部分が生じる点に留意が必要です。 また、更新料は権利金と同様に返還されない金銭ですが、賃料の補充や契約継続の対価等の性質を併有するものと解されています。 借地権の権利金の目安はどのくらい? 大まかにいうと、都市部の住宅地の場合、借地権の権利金の目安は「市場価格の7割」程度です。 市場価格を知る方法には、大きく分けて「実際の市場価格から調べる方法」と「相続税評価額を基に算出する方法」の2つがあります。実際の市場価格は不動産売買のポータルサイトで販売価格を調べるほか、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で実際の取引事例を検索することでも分かります。 (参考: 『国土交通省 不動産情報ライブラリ』) 近隣に似た条件の土地がなく実勢の相場が分かりにくい場合に参考になるのが、相続税評価額の算定に用いる国税庁の「路線価(または評価倍率)」です。「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で対象地の路線価(1㎡あたり・千円単位)を確認し、地積を掛ければ概算額を把握できます。 (参考: 『国税庁 路線価図・評価倍率表』) 相続税評価額は市場価格の8割程度に設定されているため、0.8で割り戻すと市場価格に近い額が算出できます。算出額に、同じく路線価図から分かる借地権割合(土地全体の権利に対する借地権の割合)を掛ければ権利金のおおよその目安が計算可能です。 <計算例>路線価:350C(=1平方メートルあたり35万円、借地権割合70%)地積:200平方メートル 権利金の目安:350×200÷0.8×0.7=6,125万円 住宅地の場合、借地権割合が60%〜70%が一般的なので「市場価格の7割程度」が目安となるわけです。 関連記事:借地権の評価額はどう決まる?相続時にも使える基礎知識と計算方法を解説 借地権の権利金に対する会計処理と税金(借主側) ここからは、借地権の権利金に関する会計処理と税金について解説します。まずは借主が事業のために土地を借りるケースを取り上げ、権利金の扱い方と仕訳を見ていきます。借地権の種類によって処理が異なる場合があるため、その違いも押さえておきましょう。 権利金を支払ったとき(借地権設定時) 権利金は借地権設定の対価であるため、勘定科目は「借地権」として仕訳します。取得に伴う仲介手数料なども借地権を得るための支出にあたるため、併せて借地権として計上します。 借地権は原則「無形固定資産(形はないが収益を得るために長期利用する資産)」として資産計上します。 仕訳の形は以下のとおりです。 例:権利金500万円、仲介手数料20万円を普通預金から支払った場合 借方 貸方 借地権 5,200,000 普通預金 5,200,000 借地権を償却するとき 固定資産の中には、減価償却(資産価値の減少分を一定期間に分けて費用計上する)が可能なものがあります。 土地は価値が時間で減らないため減価償却できませんが、借地権は場合によって扱いが異なります。普通借地権は契約更新が可能で耐用年数が実質なく、減価償却は行いません。一方、契約満了で必ず権利が消滅する定期借地権は、契約期間を耐用年数として減価償却できます。 仕訳例は以下のとおりです。 例:契約期間50年、取得費用(権利金を含む)2,000万円の借地権を年度で償却した場合 借方 貸方 減価償却費(または長期前払費用償却) 400,000 借地権(または長期前払費用) 400,000 関連記事:借地権と減価償却の関係は?仕組みと会計処理を分かりやすく解説 借地権を売却したとき 売却時には、売却時点の借地権の帳簿価格と売却額の差額を「譲渡損益」として計上します。ここで帳簿価格とするのは、定期借地権では償却により金額が減少している場合があるためです。 差額がプラスなら「固定資産売却益(利益)」、マイナスなら「固定資産売却損(損失)」として仕訳します。 例1:帳簿価額600万円の借地権を800万円で売却し、代金が普通預金に振り込まれた場合 借方 貸方 普通預金 8,000,000 借地権固定資産売却益 6,000,0002,000,000 例2:帳簿価額600万円の借地権を500万円で売却し、代金が普通預金に振り込まれた場合 借方 貸方 普通預金固定資産売却損 5,000,0001,000,000 借地権 6,000,000 また、借地権の売却で売却益が出れば譲渡所得税の対象となります。所有期間が5年以下なら「短期譲渡所得」として約39%、5年を超えると「長期譲渡所得」として約20%の税率が適用されます。 関連記事:借地権の会計処理を徹底解説!減価償却の要否からケース別の処理方法まで 借地権の権利金に対する会計処理と税金(地主側) 地主側が土地の賃貸借を事業として行っている場合や、法人が土地を第三者に貸している場合にも会計処理が必要です。 受け取った権利金の処理は、個人か法人かだけでなく、権利金の金額や計上方法によっても異なります。 ここからは、地主側における権利金の会計処理について解説します。 権利金を受け取ったとき(借地権設定時) 借地権設定で受け取った権利金は、地主側では原則「権利金収入」として仕訳します。ポイントは、借主にとっては「資産」、地主にとっては「収益」として扱う点です。 例:地主が借地権設定の対価として100万円を現金で受け取った場合 借方 貸方 現金 1,000,000 権利金収入 1,000,000 受け取った収益は原則「不動産所得」として、個人地主は所得税、法人地主は法人税の課税対象になります。 ただし、権利金が土地の時価(評価額)の2分の1を超えるほど多額な場合は、土地の一部売却と同じとみなされ、「譲渡所得」として分離課税されます。 権利金ではなく「前払地代方式」による節税も可能 前述のとおり、地主側は権利金を受け取ったとき原則として収益を一括計上しますが、その分税額も大きくなります。 同じ一括受け取りでも「前払地代方式」を採用すれば、収益を各年度に分散計上できるため節税が可能です。 ただし、この方式を選べるのは更新がなく契約期間が固定されている「定期借地権」の場合のみです。契約時に借地期間分の地代を一時金で受け取り、契約期間に応じて毎年分割して経費化することで税負担を軽減できます。 借地権の権利金支払いがない場合は「認定課税」されてしまう? 権利金には「地主の収益に対する補填」の側面がありますが、契約時に多額の金銭をやりとりするため、借主には初期費用の負担、地主には税負担が生じます。 そのため、権利金を少なくしたりなくしたりすることを検討する方もいるかもしれません。ですが、やりとりを省いた場合、扱いによっては後から課税される可能性があります。 認定課税とは? 借地契約時には、借主が地主に対して市場価格の6割〜7割程度の権利金を支払うのが通例です。 権利金を低く抑えれば税負担も減るように思えます。しかし相場より著しく低い、またはない場合、税務署は「実質的に贈与があった」と判断して課税します。 贈与税や所得税は利益に応じて公平に税を負担する仕組みです。権利金という対価なしに借地権を得て土地を使う利益を得れば、その分に課税されるのは当然という考え方です。これを「権利金の認定課税」と呼びます。 借地権の権利金の認定課税を避ける方法 前述のとおり、認定課税は「得た利益に対して相当の税金を納める」ための制度であり、権利金の支払いが少ない・ないからといって必ず適用されるわけではありません。 回避方法の一つ目は、更地価格の年6%程度を目安とした「相当の地代」の支払いです。通常より高めの地代を支払えば、権利金分の対価を地代で支払ったとみなされます。 二つ目は「土地の無償返還に関する届出書」の提出です。借地契約で無償返還を定め、税務署に届出書を提出すれば「借地権設定による利益はない」と判断され、認定課税を回避できます。 ただし、この届出書を利用できるのは地主・借地人のいずれかが法人である場合に限られます。 関連記事:借地権の月々の地代には目安がある!?計算方法と金額設定について解説 まとめ 権利金は契約時に支払う返還されない一時金であり、「借地権の設定による対価」としての役割を持ちます。支払いは通例ですが金額の目安に幅があり、契約ごとに有無や額は異なります。 また、事業として借地契約を結ぶ場合は、契約時・償却時・売却時などの会計処理が所有権とは異なる部分もあります。専門家に相談しながら進めることが大切です。 リアルエステート「おうちの相談室」では、借地権をはじめとした不動産に関するサポートを行っています。お悩みの方は一度ご相談ください。
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2025/10/09new
分譲マンションは「借地権」と「所有権」でどう変わる?違いを分かりやすく比較
広告などを見て「この分譲マンションは相場と比べて安い」と感じたとき、土地の権利が「定期借地権」となっているケースが見受けられることがあります。 地価の上昇に伴い、都心の分譲マンション価格が高騰するなかで、少しずつ増えているのが、土地を「借りて」建物だけを所有する「定期借地権マンション」です。 借地権タイプのマンションにはいくつかのメリットがありますが、良い点ばかりとは限りません。そこで本記事では、分譲マンションにおける「所有権」と「借地権」の違いについて、シミュレーションを交えながら各ポイントで比較し、解説します。 分譲マンションは所有権と借地権でどう違う? 分譲マンションを購入する際、多くの人は「マンションを購入する=土地・建物の両方の所有権を手に入れること」と考えがちです。 しかし、借地に一戸建てを建てる場合と同様に、マンションでも「借りた土地に建てられたマンションの住居部分のみを所有する」ことが可能です。 まずは、分譲マンションにおける土地と建物の権利について、基本的な仕組みを理解しておきましょう。 分譲マンションにおける所有権と借地権の違い 分譲マンションを購入すると、自分たちが住む住居部分(=専有部分)についての「区分所有権」を得られます。ただし、当然ながら専有部分のみを所有しても、部屋への出入りなど、実際に使用することはできません。 そのため、専有部分の所有権に加えて、エントランスや廊下など住人全員が使用する「共有部分」を、専有面積の割合に応じた「共有持分」として取得することになります。 さらに、マンションを利用するには、土地部分の権利(=敷地権)も必要です。一般的なマンションでは、敷地全体の面積に対する専有部分の割合に応じて、土地を「所有権」として保有しますが、敷地を借りて「借地権」として権利を持つケースもあります。 つまり、分譲マンションにおける「所有権」と「借地権」の違いは、土地に対する権利を「買う」か「借りる」かという点にあります。 借地権の3つの種類と特徴(普通借地権・定期借地権・旧法借地権) 「建物を建てるために土地を借りる権利」である借地権は、契約内容や締結時期に応じていくつかの種類に分類されます。 まず、現行制度における一般的な借地権として知られているのが、更新が可能な「普通借地権」です。これは最低30年以上の長期にわたり土地を借りられ、長く安定して利用できる点が特徴です。 同じく契約更新が可能な「旧法借地権」は、その名のとおり、現在の借地借家法ではなく「旧借地法」に基づく制度です。1992年以前に締結された契約に適用されており、当時の借地人には強い権利が認められていたため、地主にとっては契約を終了させることが難しい仕組みでした。 このような背景を受け、現行の借地借家法の制定に際しては、借地人と地主の権利のバランスが見直されました。その大きな変更点のひとつが、更新のない「定期借地権」制度の導入です。 定期借地権は、契約期間の終了とともに確実に契約が終了する仕組みとなっており、地主が将来の土地活用計画に基づいて貸し出しを行いやすくなりました。 関連記事:普通借地権とは?定期借地権との違いや相続・契約更新のポイント 分譲マンション市場で広がる「定期借地権」タイプ 定期借地権は比較的新しい制度のため、現在建っているマンションの多くは土地の権利も所有権となっています。 しかし、定期借地権マンションは年々増加しており、首都圏では2025年に供給数が過去最大規模になるとも見込まれています。 近年では、好立地にはすでに多くのマンションが建ち並び、地価の上昇とともにマンション価格も高騰しています。こうした背景のもと、好立地の用地は限られており、取得費用も高額になっています。 このような状況を踏まえ、マンション用地を「買い上げる」のではなく「一定期間借りる」形とすることで、デベロッパーは土地を手放す意思のない地主からも好立地の用地を確保でき、取得コストを抑えることが可能です。販売価格も抑えやすくなるため、市場での競争力向上にもつながります。 一方、地主にとっては土地を手放さずに長期的な地代収入を得られる上、契約終了後に売却や再利用といった選択肢を持てる点が利点です。 このように、デベロッパーや地主にとって双方にメリットがあるだけでなく、所有権タイプに比べて価格が抑えられる借地権タイプの分譲マンションは、購入者のニーズにも適した選択肢となり得ます。 分譲マンション「所有権」「借地権」を各ポイントで比較 借地権の特徴と所有権との基本的な違いを理解したところで、それが分譲マンションを所有する上でどのような違いがあるか分かりにくい点もあるでしょう。 そこで次に、「価格」「資産性・流動性」「立地・条件」「安心感・自由度」「維持費用」の5つの観点から所有権タイプのマンションと借地権タイプのマンションを比較して見てみましょう。ここでは、借地権は分譲マンションの主流である「定期借地権」として解説します。 価格面 国土交通省によると、定期借地権付きマンションは所有権物件の70~80%が全体の36%、80%未満は全体の54%と、平均で8割程度の価格になります。 (参考: 『国土交通省 定期借地権の解説』) 所有権は持ち分の土地すべてを自由に処分できる強い権利であり、価値が高くなります。一方、借地権はあくまで「契約期間の間土地を『利用できる』権利」であり、売却などに際して原則として地主の承諾が必要な制約の大きい権利である分、価値が低くなるためです。 建物と違い、古いマンションでも価格が下がらない土地の価格が平均2割程度低いのは、定期借地権タイプのマンションの大きなメリットです。 資産性・流動性 土地と建物の両方に完全な権利を持つ所有権タイプの分譲マンションは、価格が高いものの、資産としての価値も高く、借地権タイプに比べて売却しやすい点が強みです。 所有権タイプは居住期間に制限がないため、幅広いニーズに対応しやすく、資産性の高さから住宅ローンの審査にも比較的通りやすい傾向があります。そのため、買い手が付きやすく、流動性にも優れています。 一方、定期借地権付きマンションは土地の契約更新ができないため、永続的に住み続けることができません。この制約により購入層が限られやすく、特に借地権の残存期間が短くなると、住宅ローンの利用が難しくなる上、購入希望者も減少しがちです。結果として、流動性だけでなく資産価値も下がりやすい点がデメリットとなります。 関連記事:借地権付き建物の住宅ローン審査が厳しいのはなぜ?|審査通過のポイント 立地・条件面 人気エリアや交通アクセスの良い立地に土地を所有している地主の中には、将来の地価上昇や土地活用の可能性を見込み、土地を手放さずに定期借地権としてマンション用地を提供するケースがあります。そのため、所有権タイプに比べて、借地権タイプのマンションは好立地に建てられる傾向が見られます。 すでに好立地には多くの分譲マンションが建てられている状況ですが、新築や築年数の浅い物件を好立地で購入しやすい点は、借地権タイプならではの大きな魅力といえます。 さらに、国土交通省によると、定期借地権住宅は所有権住宅と比べて土地の取得コストを抑えられるぶん、延べ床面積が広くなる傾向があるとされています。快適な住環境を確保しやすい点も、借地権タイプのメリットといえるでしょう。 (参考: 『国土交通省 定期借地権の解説』) 安心感・自由度 一度分譲マンションを購入しても、価値観や家族構成、ライフスタイルの変化によって、途中で手放すことになる場合もあります。その点、ずっと住み続けることはもちろん、賃貸や売却にも制約がない所有権タイプのマンションは、住まいに対する安心感や自由度が高いといえます。 一方、定期借地権付きマンションは、契約満了時までに建物を解体し、土地を更地にして返還する義務があるため、必ずしも必要な期間ずっと住めるとは限りません。 ただし、定期借地権の契約期間は長期化する傾向があり、70年以上の期間を設定したマンションも数多く見られます。そのため、「自分の代で住み切る」ことを前提とすれば、所有権タイプと大きな違いがない場合もあります。 維持費用 税金面で見ると、所有権タイプよりも借地権タイプの分譲マンションのほうが、コストを抑えやすい傾向があります。 固定資産税や都市計画税は、不動産を「所有している」人に対して課されるため、所有権タイプでは土地・建物の両方が課税対象となるのに対し、借地権タイプでは建物のみが対象となります。 ただし、借地権タイプのマンションでは、地主に対して毎月支払う地代が別途発生するため、税金が少ないからといって維持費全体が必ず安くなるとは限りません。 また、所有権タイプのマンションに修繕積立金の支払いがあるように、定期借地権タイプのマンションでも、契約終了時に建物を解体するための「解体積立金」の支払いが必要になります。 各ポイントを比較したあとは、実際にかかる費用について詳しく見ていきましょう。 分譲マンション「所有権」と「借地権」のコストをシミュレーション ここでは所有権のマンションと定期借地権のマンションそれぞれでかかる費用と、30年間でどのくらいトータルで必要な金額が違うかについてシミュレーションを行いました。 項目 所有権マンション 借地権マンション 購入価格 5,000万円 4,000万円(※所有権マンションの8割) 初期費用(※購入金額の5%) 250万円 200万円 修繕/解体積立一時金 50万円 80万円 ローン金利分(※頭金1,000万円・30年) 1,300万円 1,000万円 固定資産税・都市計画税 600万円(年間20万円×30年) 300万円(年間10万円×30年) 地代 - 600万円(年間20万円×30年) 管理費 750万円(年間25万円×30年) 修繕/解体積立金 450万円(年間15万円×30年) 600万円(年間20万円×30年) 合計 8,400万円 7,530万円 ※土地(所有権)価格1,500万円、建物価格3,500万円を想定※金利は固定2%相当、固定資産税・都市計画税は簡便化のため一定額で積算 このシミュレーションで用いている各費用は一般的な相場や平均を参考に算出したもののため、実際にかかる金額は変わります。しかし、「毎月の地代支払いがあっても(定期)借地権のマンションのほうがトータルで若干お得」と考えてよいでしょう。 しかし、あくまで「トータルでかかる金額」についての比較であり、所有権のマンションは最終的に「不動産」という処分可能な資産が残る点は大きな魅力です。 どちらのタイプの分譲マンションを選ぶ? 所有権タイプの分譲マンションと借地権タイプの分譲マンションには、それぞれメリットとデメリットがあり、トータルの費用面だけでなく、居住後の使い方まで含めて考えると、どちらが良いと一概に判断することはできません。 そこで最後に、所有権タイプと借地権タイプの分譲マンションが、それぞれどのような人に向いているのかを解説します。 所有権タイプの分譲マンションが向いている人 所有権タイプの分譲マンションは、以下のような人に向いています。 長期間、安心して永住したい人 将来的に売却や賃貸を検討し、資産性を重視する人 住宅ローンがスムーズに通りやすい物件を希望する人 たとえば、相続で子ども世代へ資産として残したい人や、なるべく居住環境を変えずに長く暮らしたい人には、所有権タイプの分譲マンションが適しています。また、自分では住まなくなった際に売却して住み替え資金を確保したい、あるいは売却益を見込んでいる場合にも、資産性の高い所有権タイプが有利です。 さらに、住宅ローンについても、自分の希望に合った条件で借りたい人や、返済期間を長めに設定して余裕を持って返済したい人にとっては、所有権タイプのほうが選択肢が広がりやすくなります。 借地権タイプの分譲マンションが向いている人 一方、借地権タイプの分譲マンションは、以下のような人に向いています。 購入時の初期費用を抑えたい人 手の届きにくい人気エリアに住みたい人 資産性より契約期間内の居住性や住環境を重視する人 借地権タイプのマンションは、同じ条件の所有権タイプと比べて物件価格が割安です。頭金を少なめに抑えられるだけでなく、借入額を抑えることで金利負担も軽減でき、返済期間を延ばすなど柔軟な返済計画を立てやすくなります。 また、所有権タイプと同じ予算であれば、立地や広さ、住環境の面でより好条件の物件を見つけやすくなるのも魅力です。 自分が住まなくなった後の資産価値よりも、居住中の快適さや生活利便性を重視する人にとって、借地権タイプの分譲マンションは現実的で魅力的な選択肢といえるでしょう。 関連記事:定期借地権付きのマンションを購入するメリットは? まとめ 都市部、特に都心部ではマンション価格の上昇がとどまる気配を見せていません。こうしたなか、物件価格が所有権タイプより割安な借地権タイプの分譲マンションは、今後も建築が増えていくと考えられます。 「所有権タイプと借地権タイプ、どちらの分譲マンションを選ぶべきか」は、一人ひとりのライフプランや価値観によって最適な選択が異なります。それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、自分に合ったかたちで購入を判断することが大切です。 不動産は購入までに多くの判断が求められますが、購入後にも相続や売却といった場面で、あらためて判断を迫られるケースがあります。 リアルエステート「おうちの相談室」では、不動産に関する幅広いご相談を承っています。不動産に関してお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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2025/10/09new
借地の持ち家を処分する方法と費用は?|地主の承諾や解体の注意点
借地に建てた持ち家を処分したいと思っても、地主の承諾が必要だったり、解体費用がかかったりと、思うように進められないケースは少なくありません。さらに、処分方法によっては高く売却できることもあれば、負担を減らすために更地で返還するしかない場合もあります。 この記事では、借地上の家を処分する際の5つの方法と費用の目安をわかりやすく整理します。地主との関係や契約内容を踏まえて、自分に合った選択肢を見つけるためのポイントを解説します。 借地の持ち家をどう処分する?選べる5つの方法 借地に建てた持ち家を処分する方法は、大きく分けて5つあります。 地主に買い取ってもらう 底地と一緒に売却する 第三者へ売却する 賃貸物件として貸し出す 建物を解体して更地で返還する それぞれの方法には、メリットとデメリット、かかる費用や地主の承諾の要否などが異なります。たとえば地主に直接買い取ってもらうのはスムーズで承諾料も不要ですが、第三者へ売却する場合は承諾料が発生する可能性があります。 ■自分に合う持ち家の処分方法をかんたんに判定 Q1. 地主に売却の相談ができそうか?Yes → 「地主に買い取ってもらう」 または 「底地と一緒に売却」へNo → Q2へ Q2. 第三者に売却しても承諾料を払う余力はあるか?Yes → 「第三者へ売却」へNo → Q3へ Q3. 借地上の家を維持して収益化したいか?Yes → 「賃貸物件として貸し出す」へNo → 「建物を解体して更地で返還」へ 処分前に欠かせない「契約・登記・残存期間」の確認 借地に建てた家を処分する前に、いくつかの基本条件を確認しておく必要があります。これを整理せずに進めると、後から地主との交渉や契約手続きで行き詰まるケースが多いです。 契約形態の確認 自分が結んでいる契約が「普通借地権」「定期借地権」「旧法借地」のどれなのかを特定する必要があります。 普通借地権:更新が可能で、地主の承諾を得やすい 定期借地権:期間満了で終了、原則として売却や賃貸は難しい 旧法借地:更新拒否がほぼできないため、地主との交渉が長期化しやすい たとえば「定期借地なのに第三者へ売却しようとしても買い手がつかない」「旧法借地だから地主が強く出られない」といった具合に、契約形態は処分の方向性そのものを決めてしまいます。 契約残存期間 契約の残り年数は、借地権の価値を大きく左右します。残存期間が20年以上あれば評価は高くつきやすいですが、10年未満だと金融機関の担保対象にならなかったり、第三者への売却も難しくなったりと、苦戦する恐れがあります。 たとえば残り3年しかない借地権では、買主が融資を受けられないため市場価値が大幅に下がるでしょう。反対に、残り30年ある場合は、地主以外にも複数の買主候補が現れる可能性があります。 登記の有無 借地権が「地上権」として登記されている場合、譲渡や担保設定に地主の承諾は不要です。一方、「賃借権」しかなく、しかも未登記だと、地主の承諾が必須なうえ、第三者への売却がほぼ不可能になります。 特に「建物だけ登記があるケース」では、借地権自体が登記されていなくても、建物登記を根拠に借地権を主張できる場合があります。この違いを知らずに動くと「権利を証明できずに取引が進まない」という事態に陥ります。 地代の支払い状況 過去に地代を滞納していると、地主が承諾に応じてくれないことが多くあります。承諾料の交渉や売却契約をスムーズに進めるためには、未払いをすべて清算してから臨むのが鉄則です。 また、長期間の滞納歴があると「信頼できない借地人」と見られ、地主が買取を拒否する要因にもなります。地代の支払い履歴は、処分交渉の成否に直結する重要な前提条件です。 借地の持ち家、どの処分方法を選ぶべき?判断のポイント 持ち家の処分の可否と相性は、契約の残期間、建物の状態、地主の姿勢、時間的制約の4軸が影響することがわかりました。ここでは、検討すべき順番を固めるために、以下の基準を紹介します。 地主に買い取ってもらう 地主が協力的で、将来の土地活用を見据えているときに最優先で検討します。契約の残期間が短くても進めやすく、手続きの複雑さが最小化できます。地代の滞納がある場合は清算の意思が示せるかも判断材料になります。 底地と一緒に売却する 地主が「底地も手放して構わない」という姿勢で、かつ買い手候補が完全所有を強く望むときに有力です。価格は伸びやすい一方、売買代金の配分や引渡し条件の調整が必要になるため、合意形成に時間の余裕があるケースに向きます。 第三者へ売却する 地主の協力が乏しい、または資金・意向の面で買取が難しい場合の現実的な選択肢です。契約残期間が十分にあり、権利関係や登記が整っているほど成立しやすくなります。短期で現金化したい、スケジュールが厳しい、といった事情がある場合にも適合します。 賃貸に出す 売却ニーズが低い立地や、建物の状態が賃貸に耐える場合に検討します。地代と修繕費を含めた収支がプラスに乗る見込みがあること、空室リスクを許容できることが前提です。大規模な改修が必要なときは、工期・承諾の要否・資金計画の三点で実現性を見極めます。 更地にして返還する 老朽化が進み、売却・賃貸ともに成立しにくいと判断した場合の整理策です。契約の満了時期が近い、維持コストや管理負担を早期に止めたい、といった条件が揃うほど選びやすくなります。返還の条件(整地レベル・残置物の扱い)を事前にすり合わせられるかも重要な基準です。 借地の持ち家を処分する際の手続きと必要書類 借地上の持ち家を処分するときには、どの方法を選ぶ場合でも共通する進め方があります。まずは全体像を把握し、必要書類をそろえることでスムーズに進められます。 1. 地主への打診と承諾取得 最初のステップは、地主に処分の意向を伝えることです。売却や譲渡の際には「承諾書」や「合意書」が必要になります。承諾料の有無や金額はここで話し合うことが多く、承諾書は買主や金融機関にも提示する重要書類です。 ■主な必要書類 借地契約書の写し 承諾依頼書(任意様式) 承諾書または合意書 印鑑証明書 2. 不動産会社や専門家への依頼 売却や底地との同時処分を進める場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。仲介契約を結ぶ際は、査定書や媒介契約書を交わします。賃貸化を検討する場合も、管理委託契約書などの書類が必要になります。 ■主な必要書類 媒介契約書 査定書 管理委託契約書 本人確認書類 3. 売買契約・賃貸契約の締結 処分方法に応じて「売買契約書」や「賃貸借契約書」を作成します。第三者に売却する場合は、地主の承諾を得た証明書類を契約に添付して信頼性を確保する必要があります。 ■主な必要書類 売買契約書 賃貸借契約書 重要事項説明書 承諾書添付資料 4. 解体・原状回復が必要な場合 更地返還や契約条件に基づき建物の解体が必要な場合には、解体業者と契約を結び、工事の完了証明を地主に提出します。あわせて、電気・ガス・水道などライフラインの停止手続きも済ませ、その確認書類を用意しておくことが求められます。 ■主な必要書類 解体工事契約書 工事見積書 工事完了証明書 ライフライン停止に関する確認書類(電力会社やガス会社の廃止証明など) 5. 相続や登記に関わる場合 相続で借地上の家を取得した場合や登記が未了のまま放置されている場合は、処分の前に登記を整える必要があります。司法書士が手続きを行うのが一般的です。 ■主な必要書類 登記事項証明書 相続関係書類(戸籍謄本、遺産分割協議書) 固定資産評価証明書 委任状(司法書士用) 借地の持ち家を処分するときにかかる費用と相場 借地権付きの建物を第三者に譲渡する場合や、建物にローンを組んで抵当権を設定する場合、多くのケースで地主の承諾と「承諾料」が必要になります。 これは地主の立場から見れば、借地権を譲渡されることで相手が変わり、リスクが生じるため、それに対する対価という意味合いがあります。 相場:借地権価格の5〜10% 例:借地権価格が2,000万円 → 承諾料100〜200万円 ※承諾料は契約や地域慣習によって変動します。必ず地主と事前協議が必要です。 解体費用(更地返還時) 借地契約の終了時や、売却せずに更地で返還する場合、建物の解体費用は借地人が負担します。構造や広さ、立地(狭小地・接道条件など)によって費用は変動します。 木造:1坪あたり約3〜4万円 軽量鉄骨造:1坪あたり約4〜6万円 鉄筋コンクリート造:1坪あたり5〜8万円 例:木造30坪 → 解体費用 約90〜120万円 ※解体業者に見積もりを複数依頼し、アスベストの有無や残置物処分の費用も確認を。 仲介手数料(売却時) 不動産会社を通じて売却する場合には、成功報酬として「仲介手数料」が発生します。この金額は法律で上限が定められており、基本は次の計算式で算出されます。 計算式:売買価格×3%+6万円(+消費税) 例:売買価格2,000万円 → 仲介手数料 約72万6,000円(税込) ※業者によっては値引き交渉に応じることもあるので、複数社に相談を。 登記関連費用(相続・売却時) 名義変更や相続登記を行う際には、登録免許税・司法書士報酬などが発生します。名義が正しくないままでは売却や譲渡が進められません。 登録免許税:固定資産評価額 × 0.4%(相続) 司法書士報酬:7〜10万円程度 例:固定資産評価額2,000万円 → 登録免許税8万円+報酬7万円前後 ※相続未了の場合は、遺産分割協議の取りまとめも必要になることがあります。 税金(譲渡所得税・印紙税など) 不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合には、所得税(譲渡所得税)や住民税がかかります。所有期間によって税率が大きく変わるため、事前にシミュレーションしておくことが重要です。 所有期間5年超:長期譲渡所得として20.315% 所有期間5年以下:短期譲渡所得として39.63%(いずれも所得税・住民税・復興特別所得税を含む) また、売買契約書を作成する際には印紙税も必要です。軽減措置により、令和9年3月31日までの間は税額が引き下げられています。 例:売買金額2,000万円の契約書 → 印紙税1万円(軽減措置適用時) ※譲渡損が出る場合には譲渡所得税は課されません。ただし、損益通算や繰越控除など確定申告での扱いに注意が必要です。 関連記事:自宅売却時の譲渡所得税計算法|取得費や税額をわかりやすく解説 地主の承諾を得るためのステップ 借地上の家を処分する多くのケースでは、地主の承諾が必要になります。承諾を得るには一定の手順があり、スムーズに進めることで不要なトラブルを避けられます。ここでは地主の承諾の基本から、代替手段までを整理します。 承諾が必要になるケース 地主の承諾が必要なのは、主に以下のような場合です。 借地権付き建物を第三者に譲渡するとき 建物に抵当権を設定するとき 大規模な増改築を行うとき 承諾が不要なケース(軽微なリフォームや通常の賃貸など)と区別しておくことが重要です。 承諾を依頼する流れ 事前に契約書を確認し、承諾が必要かどうか判断 地主に書面または口頭で承諾依頼を行う 地主が承諾料を提示 → 金額に納得できない場合は交渉 承諾が得られたら承諾書を交付してもらう 承諾書は、売却や融資時に金融機関や買主へ提出する重要書類です。 承諾料の目安と注意点 承諾料は明確に法律で定められていないため、地域の慣習や地主との交渉で決まります。一般的な目安は「借地権価格の5〜10%」です。ただし、地主の協力度や市場環境によって変動します。 無理に値切ると関係が悪化することもあるため、専門家や不動産会社を介して交渉するとスムーズです。 関連記事:譲渡承諾料とは?徴収の仕組みと交渉の実際を丁寧解説 承諾が得られない場合の「承諾に代わる許可」 もし地主が合理的な理由なく承諾を拒んだ場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てることができます。 裁判所は、地主の不利益と借主の事情を比較して判断し、正当な理由がないと認めれば許可を出します。 この仕組みにより、地主が一方的に権利行使を妨害することを防ぎます。ただし時間と費用がかかるため、最後の手段として考えましょう。 借地の持ち家を処分するときに起こりやすいトラブル 借地に建てた家を処分する際には、契約内容や土地の条件などが複雑に絡むため、トラブルが発生しやすいのが実情です。ここでは代表的なケースと、その予防策を整理します。 登記が未整備で処分ができない 建物や借地権の登記がされていないと、所有者の権利を証明できず、売却や譲渡、返還といった手続きを進めることができません。古い家屋や相続によって引き継いだ物件で発生しやすい問題です。 【予防策】 建物の登記簿を確認し、未登記の場合は早急に所有権登記を行う 借地権についても、地上権か賃借権かを確認し、登記の必要があるか精査する 専門家(司法書士)に依頼して、必要な登記を整備する 相続登記が未了で手続きが進まない 建物の所有者が亡くなっているのに相続登記をしていないと、売却や解体などの処分が一切できません。相続人の間で話がまとまっていない場合は、さらに手続きが長引く恐れがあります。 【予防策】 戸籍や遺言書、遺産分割協議書をそろえて、相続人を明確にする 相続人全員の合意を得て、代表者を決めて登記申請する 司法書士に相談して、早期に登記手続きを完了させる 関連記事:「土地は借地、家は持ち家」を相続する流れは?注意点や処分方法も解説 土地の境界が不明確で解体や売却ができない 土地の境界線があいまいなまま解体や売却を進めようとすると、隣地所有者とのトラブルにつながる恐れがあります。特に古い借地では、境界杭が失われていたり、公図と現況が一致していないこともあります。 【予防策】 専門の測量士に依頼して、境界確定測量を実施する 隣地所有者との立会いを行い、境界確認書を取り交わす 古い図面や過去の測量記録も参照しながら法的な裏付けを整える アスベストや老朽化による想定外の費用増加 築年数が古い建物では、アスベストが含まれていたり、解体作業に追加の安全対策が必要となることがあります。見積もり時点で考慮されていない費用が発生し、予算を大きく超えてしまうこともあります。 【予防策】 事前に建物診断(インスペクション)を実施して状態を把握する アスベスト調査を行い、含有の有無を確認しておく 複数の解体業者から見積もりを取り、想定外の費用への備えをする 借地の持ち家を処分するまでのスケジュール目安 借地に建てた家を処分するには、地主との交渉や承諾手続き、売却・解体の準備など複数のステップが必要です。全体像を把握しておくことで、無駄な時間やトラブルを防げます。以下は一般的なスケジュールの目安です。 1〜2週目:契約内容と前提条件の確認 契約書を読み直し、借地権の種類、残存期間、承諾の要否などを整理します。必要があれば専門家に相談して契約内容を正確に把握します。 3〜4週目:地主への打診と方針決定 処分の意向を地主に伝え、買取や承諾の可否を確認します。この段階で地主が協力的かどうかが、その後の進め方を左右します。 5〜8週目:査定・見積もり・承諾交渉 不動産会社や解体業者に見積もりを依頼し、費用や条件を比較検討します。並行して地主と承諾料や条件について交渉します。 9〜12週目:契約締結・解体準備 売却先との売買契約を結ぶか、解体業者と工事契約を締結します。必要書類の準備や資金繰りの確認も行います。 13週目以降:解体・引渡し・精算 建物を解体して更地返還する場合は工事を実施し、完了後に土地を返還します。売却の場合は決済・引渡しを行い、承諾料や諸費用を精算します。 まとめ 借地に建てた家の処分には、売却・賃貸・返還と複数の選択肢があり、いずれも地主の承諾や費用負担といったハードルがあります。自己判断で動くと承諾料や解体費用など思わぬ負担を抱えるリスクもあるため、早めに専門家へ相談することが安心につながります。 リアルエステートの「おうちの相談室」では、借地や相続に詳しい専門家が親身になってサポートしています。複雑な権利関係や費用面の悩みもおひとりで抱え込まずに相談することで、安心して次のステップに進めます。
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2025/10/09new
借地権者が底地を買い取るポイントと流れ|限定価格や税金についても解説
地主から底地を購入するにはどうしたらよいか、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。地主に底地の購入を打診するときは、交渉のタイミングを見極めることが大切です。また、買取価格が適正でないと、地主から断られる可能性が高くなる点にも注意しましょう。 本記事では、借地権者が底地を買い取る際に押さえておきたいポイントや購入する流れ、購入時に発生する税金について解説します。地主から底地を買い取れなかったときの対処法も紹介するため、ぜひ参考にしてください。 借地権者が底地を買い取る際に押さえておきたいポイント 地主に対してやみくもに底地の買取を持ちかけても、断られる可能性が高いでしょう。底地の買取を成功させたいなら、ポイントを押さえた上で交渉に臨むことが大切です。ここでは、借地権者が底地を買い取る際に押さえておきたいポイントを4つ紹介します。 借地権者が底地を買い取るときは限定価格が適用される 借地権者が底地を買い取る場合、「限定価格」が適用されます。限定価格とは、特定の当事者間の取引でのみ成立する特別な価格です。例えば、第三者が底地を購入しても家を建てられないため、取引相場は更地価格の10%~20%ほどが目安です。 一方、借地権者が底地を買い取ると不動産全体の所有権を取得でき、土地と建物を自由に活用できます。第三者が底地を購入するときより得られるメリットが大きいため、借地権者が底地を買い取るときの相場は更地価格の40%~60%ほどと、一般的な売却相場より高くなります。 関連記事:借地人が底地を買い取る場合の価格とは?「限定価格」の仕組みと計算方法を徹底解説 買取交渉のタイミングを見極める 地主に底地の買取を申し出るときは、タイミングを見極めることが大切です。底地の買取は、地主に売却する意思がなければ成立しません。そのため、地主が底地を手放したいと考えているタイミングで交渉を持ちかけるのがポイントです。 具体的には、地主に相続が発生したときや借地契約の更新時に話を持ちかけると、底地を購入できる可能性が高まります。 住宅ローン利用の可否を確認しておく 借地権者が底地を買い取るケースでは、住宅ローンを利用できる可能性があります。現金一括での支払いが難しい場合、住宅ローンの利用を検討するのもひとつの方法です。 ただし、底地の買取に際して全ての金融機関で住宅ローンを利用できるわけではありません。まずは借地権付き建物の購入時に取引した金融機関に相談してみるとよいでしょう。 底地・借地権に精通している不動産会社に相談する 地主と底地の買取交渉を行う際は、底地や借地権に関する専門知識を持った不動産会社に相談することをおすすめします。 個人で買取交渉を進めると、買取価格や契約条件を巡って地主とトラブルになりかねません。底地・借地権に精通した不動産会社に依頼すると、感情的な対立を招くことなくスムーズに交渉を進められます。また、地主と交渉する心理的な負担が軽減する点もメリットです。 借地権者が底地を買い取る4つの流れ ここからは、借地権者が底地を買い取る際の流れを紹介します。事前に全体像を把握しておけば、よりスムーズな交渉が可能になるでしょう。なお、不動産会社に任せれば、地主の意向確認から対応してもらえます。地主と直接交渉するのが難しい場合、専門の不動産会社に相談しましょう。 1.地主の意向を確認する まずは、地主に底地を売却する意思があるか確認することが大切です。地主との関係性が良好であれば、世間話の中で意向を確認してみるとよいでしょう。「底地を売却するときは声をかけてほしい」と伝えておくのも有効です。 2.価格交渉をする 地主に底地を売却する意思があるなら、買取価格の交渉を行います。このときに大切なのは、適正価格を提示することです。 借地権者が底地を買い取る際は限定価格が適用されるため、あまりにも安い価格を提示すると断られるかもしれません。事前に専門の不動産会社に査定を依頼し、適正価格を把握しておきましょう。 関連記事:底地の買取相場を一発理解!計算方法と査定のポイント 3.売買契約を締結する 買取価格について地主と合意したら、売買契約を交わします。トラブルを防ぐには、買取価格や支払い方法、底地の引き渡し時期、登記費用の負担割合など、細かい要件を記載した売買契約書を作成することが大切です。なお、このときに手付金として売買価格の5%~10%ほどの金額を地主に支払います。 4.決済と所有権移転登記の手続きを同時に行う 底地の売買契約を締結したら、売買契約書で定めた日時に残代金の支払いと底地の引き渡しを同時に行います。 底地の所有権を地主から借地人に移す登記手続きは、司法書士に代行を依頼するのが一般的です。報酬の相場は5万円~10万円ほどですが、司法書士事務所によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。 借地権者が底地を買い取るメリット 底地を購入して最もメリットを得られるのは、借地権者です。ここでは、借地権者が底地を買い取る3つのメリットについて解説します。これらのメリットに魅力を感じるなら、底地の買取を前向きに検討するとよいでしょう。 地主への費用の支払いがなくなる 借地権者が底地を買い取るメリットのひとつは、地主への費用の支払いが不要になる点です。借地権者は、地主から土地を借りる代償として地代を支払わなければなりません。契約更新の際は更新料、底地上の建物を建て替えるときは建て替え承諾料がかかります。地主から底地を買い取れば、これらの費用を支払う必要がなくなります。 関連記事:借地権付き建物とは?メリットやデメリット、売却方法を解説! 土地を自由に活用できるようになる 底地を買い取ることで、建物の建て替えやリフォームを自分の意思でできる点もメリットです。借地権者には、地主から借りた土地に自分が住むための家を建てる権利があります。 ただし、自由に土地を活用できるわけではなく、地主の承諾がない限り、家の建て替えやリフォームはできません。地主から底地を買い取れば、今まで以上に土地を活用できます。 将来的に売却が容易になる 借地権者が地主から底地を買い取ると、将来的に売却が有利になります。借地権付き建物は、売却したくても「住宅ローンを組むのが困難」といった理由で買い手が見つかりにくいのが実情です。 借地権者が底地を買い取り、自分の意思で自由に活用できる完全所有権の不動産にすれば、借地権付き建物のみを売却する場合と比較して買い手が見つかりやすくなります。また、市場相場に近い価格での取引が期待できる点もメリットです。 借地権者が底地を買い取る際に発生する税金 借地権者が底地を買い取る際に必要なのは、購入代金だけではありません。さまざまな税金もかかるため、事前に確認しておきましょう。ここでは、借地権者が底地を買い取る際に発生する各種税金について解説します。 不動産取得税 借地権者が底地を買い取るときには、不動産取得税を納めます。不動産取得税とは不動産を取得した際に一度だけ課される都道府県税で、以下の計算式で算出します。 不動産取得税=土地の固定資産税評価額×税率 本則税率は4%ですが、令和9年3月31日までに取得した土地に対する税率は3%に軽減されています。 印紙税 印紙税は、地主と交わす底地の売買契約書に課される税金です。売買契約書に収入印紙を貼る形で納付します。 印紙税額は、売買金額に応じて異なります。例えば、地主から底地を1,000万円で購入する際に課される印紙税額は5,000円(令和9年3月31日まで軽減税率が適用)です。 登録免許税 登録免許税は、購入した底地の所有権移転登記の手続きを行う際に納める税金です。売買に伴う所有権移転登記にかかる登録免許税の税率は、1.5%(2026年3月31日まで軽減税率が適用)です。例えば、購入する底地の固定資産税評価額が1,000万円の場合、15万円の登録免許税がかかります。 固定資産税・都市計画税 地主から底地を購入した翌年から、土地に課される固定資産税・都市計画税を負担します。固定資産税の税率は1.4%(標準税率)、都市計画税の税率は0.3%(制限税率)です。なお、税率は自治体によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。 地主に底地の買取を断られたときの対処法 底地を購入したくても、地主に断られる可能性があります。地主に底地を売却する意思がないときは、他の方法を模索しましょう。ここでは、地主に底地の買取を断られたときの対処法を2つ紹介します。 建物買取請求権を行使する 底地の購入が難しいときは、建物買取請求権を行使するのも選択肢のひとつです。建物買取請求権とは、底地上に建つ建物を地主に買い取るように請求する権利です。借地借家法第13条に基づき、契約期間満了後に地主が更新を拒絶し、かつ正当事由がある場合に行使できます。地主に拒否する権利はなく、時価で買い取る必要がある点が特徴です。 ただし、契約期間が満了していない状態、かつ借地権者の一方的な都合で建物買取請求権は行使できません。要件を満たしていないときは、借地権付き建物の売却を検討しましょう。 関連記事:借地権の買取請求権とは?借地上の建物を買い取ってもらえる?! 借地権付き建物を専門の不動産会社に買い取ってもらう 地主に底地を売却する意思がない場合、借地権付き建物を売却し、そのお金を元手に住み替えを検討するのもひとつの方法です。通常の一戸建てを購入すれば、自分の意思で自由に活用できるだけでなく、地主に各種費用を支払う必要もなくなります。 借地権付き建物を一般個人の買い手に売却するのは難しいものの、専門の不動産会社に相談すればスムーズに買い取ってもらえます。借地権付き建物をできる限り早く売却したいなら、専門の不動産会社に相談するとよいでしょう。 関連記事:借地権付き建物の売却完全ガイド まとめ 借地権者が底地を買い取る場合、限定価格が適用されます。安い金額を地主に提示すると売却を断られる可能性があるため、事前に適正価格を把握しておきましょう。底地の買取を成功させるなら、底地や借地権に精通した不動産会社に相談することが大切です。 リアルエステートは、底地や借地権をはじめ、権利関係が複雑な不動産を専門に扱う不動産会社です。「地主から底地を買いたいけれど、何から進めてよいか分からない」とお困りの方は、お気軽に「おうちの相談室」をご活用ください。
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2025/10/09new
事業用定期借地権は中途解約可能?中途解約できるケースと注意点を解説!
土地に事業用定期借地権を設定して貸そうかどうか迷っている地主の方もいるのではないでしょうか。原則として地主からの中途解約はできませんが、借地人が契約違反をした場合などには、解除請求が認められることがあります。 そこで今回は、事業用定期借地権の中途解約が認められるケースと中途解約条項設定時の注意点、中途解約する流れについて解説します。事業用定期借地権で土地を貸すメリット・デメリットも紹介するため、ぜひ参考にしてください。 事業用定期借地権の概要 事業用定期借地権とは、土地の利用目的が事業用建物の建築に限定された借地権です。事業用建物の例として、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、飲食店、工場、倉庫が該当します。他の借地権とは異なり、アパートやマンション、老人ホームのような居住を目的とした建物は建築できません。 また、事業用定期借地権は契約期間を10年以上50年未満で設定でき、契約更新がない点も特徴です。契約期間が満了したら更地の状態で返還してもらえるため、短期間だけ土地を活用して収益を上げたいと考えている方に向いた借地権の形態といえます。 関連記事:定期借地権の全知識!種類別メリットと活用方法 事業用定期借地権の中途解約が認められるケース 土地に事業用定期借地権を設定して貸した場合、原則として中途解約は認められません。ただし、以下のケースに該当する場合は中途解約が認められることがあります。どのような場合に中途解約が可能か、事前に把握しておきましょう。 借地上の建物が自然災害などで滅失した 借地上の建物が地震などで倒壊したり、経年劣化による老朽化が進んだりして使用できなくなった場合、借地人は地主に対して契約の解除を申し入れられます。ただし、契約期間が残っていれば、借地人は建物を建て直して再び土地を活用することも可能です。 事業用定期借地権設定契約書で中途解約条項を定めている 事業用定期借地権設定契約書に中途解約に関する条項が定められている場合、借地人は地主に対して中途解約を申し入れられます。 ただし、中途解約の特約は借地人にのみ与えられた権利です。地主からは中途解約条項を理由に中途解約を申し入れることはできない点に注意しましょう。 地主と借地人が中途解約に合意する 地主の一方的な都合で事業用定期借地権の中途解約を申し入れることはできませんが、借地人との間に合意があれば可能です。借地人に土地を使用する必要性がなくなったなどの理由があれば、中途解約に応じてくれる可能性はあるでしょう。 借地人が契約違反行為をした 借地人に契約違反行為があった場合、地主から事業用定期借地権の中途解約を請求できます。例えば、「借地人が地代を滞納しており、何度督促しても応じてくれない」「地主の承諾を得ずに勝手に建て替えや増改築を行った」といったケースです。 また、地主の承諾なしに事業用定期借地権を第三者に譲渡した場合、契約違反と見なされる可能性があります。ただし、特別な事情がある場合は裁判所の許可を得て譲渡できることもあります。 関連記事:事業用定期借地権のトラブル事例と解決策を実践的に解説 事業用定期借地権の中途解約条項設定時の注意点 土地に事業用定期借地権を設定して貸し出す際、借地人から中途解約条項を設定してほしいといわれることがあります。借地人との間でトラブルが起こらないようにするには、必要な内容を過不足なく中途解約条項に含めることが大切です。ここでは、事業用定期借地権の中途解約条項設定時の注意点について解説します。 中途解約できる条件を明確にする 事業用定期借地権設定契約書に中途解約条項を設けるときは、どのような条件で中途解約が認められるか明確にすることが大切です。例えば、「地震などの自然災害で建物が失われた場合、借地人は中途解約を申し入れることができる」といった条件です。 借地人が経営不振に陥ったなど、やむを得ない事情で事業の継続が困難になった場合も、中途解約を認める条件に含めてもよいでしょう。 解約予告期間を決める 中途解約条項を設定するときは、解約予告期間を決めることも重要です。解約予告期間とは、事業用定期借地権を中途解約する旨を地主へ事前に通知しなければならない期間を指します。例えば、「契約終了希望日の1か月前までに書面で通知する」といった形です。 その際、解約予告をした日から契約終了日までの地代の支払いを日割り精算にするなど細かく決めておくと、金銭面のトラブルを未然に防げます。 違約金の有無を決めておく 借地人に契約期間の途中で解約されると、地主に損害が発生する恐れがあります。経済的損失を防ぐには「中途解約に違約金が発生するかどうか」「金額はいくらにするか」など、事前に決めることも大切です。 特約を設けないと違約金の請求は困難になります。実損害に基づく損害賠償請求も可能ですが、立証が難しいため、あらかじめ違約金の金額や条件を定めることが望ましいでしょう。 地主から事業用定期借地権を中途解約する流れ 借地人に契約違反に該当する行為が見られた場合、地主から事業用定期借地権の中途解約が可能です。地主が事業用定期借地権契約を解除する流れは以下の通りです。 債務不履行状態を解消するよう催告する 事業用定期借地権を解除する意思を伝える 土地の明け渡しを求める まずは、借地人に対して「滞納地代の支払いを督促する」など、契約違反行為を是正するように要求しましょう。1週間~2週間程度の期間が経過しても改善が見られない場合、借地人に対して契約解除の申し入れを行います。これによって借地契約の効力が失われるため、借地人に建物の解体と土地の返還を求めることが可能になります。 事業用定期借地権で土地を貸すメリット 事業用定期借地権契約を地主から解除するのは困難です。しかし、そのデメリットを補って余りあるメリットがあります。ここで紹介するメリットに魅力を感じるなら、土地に事業用定期借地権を設定して貸し出すことを検討してもよいでしょう。 借地期間を柔軟に設定できる 事業用定期借地権のメリットとして、契約期間を10年以上50年未満の範囲で自由に設定できる点が挙げられます。通常の定期借地権は契約期間を50年以上に設定しなければならず、50年以上もの間、自分で土地を活用できません。 事業用定期借地権は短期間だけ土地を貸し出せるため、「自分の家を建てて暮らしたい」など将来を踏まえた土地活用が可能になる点がメリットです。 コストをかけずに土地活用できる コストをかけずに地代収入を得られる点は、事業用定期借地権で土地を貸すメリットのひとつです。 土地にアパートなどを建てて経営を行う場合、数千万円以上の初期費用が必要です。賃料収入は得られるものの、初期費用を回収できるまでに相当な時間がかかる点は覚悟しなければなりません。経年劣化に応じた維持費用も負担する必要があります。 一方、事業用定期借地権を設定した土地に建物を建てるのは借地人の事業者です。維持管理も事業者が行います。地主に経済的負担がかからない点は、事業用定期借地権で土地を活用する大きなメリットといえるでしょう。 節税対策につながる 節税効果が期待できる点も、土地に事業用定期借地権を設定するメリットです。事業用定期借地権が設定された土地は、自用地評価額から契約の残存期間に応じて一定割合(5%〜20%)を控除して評価されるため、相続税評価額が低くなります。 残存期間が5年以下なら5%、5年超10年以下なら10%、10年超15年以下なら15%、15年超なら20%の控除が適用されるのが一般的です。ただし、実際の評価にあたっては税理士などの専門家に相談することをおすすめします。 関連記事:事業用定期借地権のメリット・デメリットと公正証書の作成方法 事業用定期借地権で土地を貸すデメリット 事業用定期借地権にはメリットしかないわけではありません。ここでは、事業用定期借地権で土地を貸すデメリットを3つ紹介します。事業用定期借地権で土地を貸すか迷ったときは、メリットとデメリットを踏まえた上で慎重に検討することが大切です。 借地人が破綻するリスクがある 事業用定期借地権で土地を貸す場合、事業者が契約期間の途中で破綻するリスクが考えられます。経営破綻しても土地に建つ建物は事業者の所有物で、地主が勝手に処分できません。裁判上の手続きがないと取り壊せないこともあります。 建物を解体できたとしても、経営破綻に陥った事業者から費用を回収するのは難しいため、地主が取り壊し費用を負担する羽目になる点にも注意が必要です。 固定資産税の減税措置を受けられない 事業用定期借地権で土地を貸すと、固定資産税の減税措置が適用されない点もデメリットのひとつです。 通常、居住用家屋の建つ土地には住宅用地の特例が適用され、固定資産税が最大で6分の1、都市計画税が最大で3分の1に軽減されます。しかし、事業用定期借地権が設定された土地には事業目的の建物しか建てられません。住宅用地の特例は適用されないため、地主は通常通りの固定資産税を負担する必要があります。 公正証書で契約書を作成しなければならない 事業用定期借地権の契約は、公正証書またはこれに準ずる公的機関が関与した書面で作成しなければならず、手間がかかる点もデメリットです。 一般的には公正証書での作成が主流です。公正証書とは公証人と呼ばれる公務員が作成する公文書で、公証人が法律や当事者の意思確認に基づいて作成するため、高い証明力と裁判所の確定判決と同様の執行力を有します。 公正証書で契約を交わすには、地主だけでなく事業者や不動産会社といった契約に関わる全員が公証役場に集まらなければならず、スケジュールを調整する必要があります。目的の価額に応じた手数料が必要な点もデメリットです。 公正証書を作成する手間を省きたいなら、司法書士などの専門家と連携した不動産会社に相談することをおすすめします。 まとめ 土地に事業用定期借地権を設定して事業者に貸し出した場合、原則として地主から中途解約はできません。ただし、借地権者である事業者に地代を滞納したなどの契約違反行為があれば、地主から中途解約の請求が可能です。 事業用定期借地権を設定して土地を貸すことには、メリットだけでなくデメリットも存在します。後悔を防ぐためにも、事業用定期借地権に適した土地かどうか確認した上で慎重に検討しましょう。 土地に事業用定期借地権を設定して貸すかどうか悩んでいる方は、リアルエステートが運営する「おうちの相談室」をご活用ください。事業用定期借地権に向いた土地の条件や事業用定期借地権の設定以外に適した活用方法を不動産の専門家がアドバイスするため、後悔のない土地活用を実現できます。
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