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投稿⽇時

2023/10/27

最終更新⽇時

2025/06/30

借地権の旧法・新法の違いを徹底解説

  • 底地・借地

「借地権の旧法と新法についてイマイチ理解できていない」
「借地権の種類や条件が色々あってよくわからない」

今回の記事はこのような悩みがある方にオススメです。

この記事を読めば、旧法・借地法と新法・借地借家法についてだけでなく、それにまつわる知識についても理解を深められます。

土地の貸し借りをする予定がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

まずは「借地権」と「借地契約」について知ろう

まずは、本題の旧法と新法について触れる前に、借地権と借地契約について説明します。

この2つを理解しておくと、旧法と新法についてより理解を深められます。

借地権とは

借地権とは、「第3者から土地を借りて、地代を支払うことで借地上に建物を建てる権利」のことです。

土地を借りる人のことを「借地人」や「借地権者」と呼びます。

逆に、土地を貸す人のことを「底地人」や「借地権設定者」と呼びます。

借地人は底地人に毎月地代を払わなければなりません。

借地権には、①「借地借家法に基づく借地権」と②「民法上の借地権」があります。

借地借家法に基づく借地権

こちらは、「建物の所有を目的とした地上権および土地の貸し借りの権利」のことです。

借地借家法に基づく借地権には、①「土地の賃借権」と②「地上権」が一般的な借地権と言われています。

賃借権と地上権の違いについては後述していますので、そちらをご確認ください。

また、借地借家法に基づく借地権は5種類に分かれています。

  • 普通借地権
  • 定期借地権
  • 事業用定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 一時使用目的の借地権

この5つはそれぞれ契約期間や更新などに違いがあるため注意が必要です。

民法上の借地権

一方でこちらは、「建物の所有を目的としない土地の貸し借りの権利」のことです。

例えば、月極駐車場や資材置き場などで、民法の規定が適用されます。

賃借権と地上権とは

賃借権と地上権は、「借地権」の種類です。

賃借権では、底地人の承諾を得た上で土地を間接的に支配できます。

しかし、地上権は底地人の承諾がなくとも土地を支配できる権利です。

よって、賃借権よりも地上権の方が強い権利と言えます。

賃借権と地上権の違い

 賃借権地上権
存続期間契約期間:20年 更新:可能契約期間:半永久的
地代地代:支払いあり地代:支払わない契約も可能
譲渡底地人の許可が必要底地人の許可は不要
登記底地人に登記の協力義務なし底地人に登記の協力義務あり

借地契約とは

借地契約とは、建物を所有することが目的の「地上権設定契約」または「土地賃貸借契約」のことです。

一般的には、他人の土地に建物を建てて利用することを目的とした契約で、借地人が底地人に地代を支払って借りることを指します。

借地契約は契約時期が1992(平成4)年7月31日以前 or 以降かによって、借地権に旧法が提要されるのか新法が適用されるのかが異なります。

では、今回の記事の本題である、「旧法と新法」について以下で解説していきます。

これを見れば分かる「旧法」と「新法」の違い

それでは、本題の旧法と新法について解説していきます。

この2つは借地権に適用される法律のことで、借地権をいつ得たのかによってどちらが適用されるのか異なります。

旧法・借地法とは

旧法・借地法とは、土地について定めた特別な賃貸借契約の規定で、1992(平成4)年7月31日以前に借地権を得た契約に適用されます。

底地人より立場が弱く、かつ経済的に不利な借地人を保護するため、民法の規定を修正・補正した法律です。

新法・借地借家法とは

1992(平成4)年7月31日以降に借地権を得た契約に適用される、「土地」と「家」の貸し借りについての法律です。

借地法と違い、「定期借地権」が新たに設けられました。

旧法と新法の違い

存続期間

この場合の存続期間とは、「借地権」が契約上有効である期間のことです。

旧法では建物が堅固建物かそうでないかによって分けられ、新法では借地権の種類によって、それぞれ以下のように分けられます。

旧法

 初めの存続期間契約更新後の存続期間
堅固建物30年以上 ※契約で定めがない場合、 または30年未満の場合は60年30年以上 ※契約で定めがない場合は30年
非堅固建物20年以上20年以上 ※契約で定めがない場合は30年

※堅固建物・・・石造り・レンガ造り・土づくり・コンクリート造・鉄筋コンクリート造など

※非堅固建物・・・木造

新法

 初めの存続期間契約更新後の存続期間
通常の借地権30年以上 ※契約で定めがない場合、 または30年未満の場合は30年1回目の更新:20年以上 2回目以降の更新:10年以上
定期借地権一般定期借地権:50年建物譲渡特約付借地権:30年以上事業用借地権:10〜50年未満更新なし

建物が朽廃した場合の取り扱い

旧法

存続期間を定めている場合・・・建物が朽廃しても、借地権はなくなりません。

存続期間を定めていない場合・・・建物が朽廃すると借地権も消滅します。

新法

建物が朽廃したとしても、残存期間中の権利は保護されます。

滅失した場合の再建築の取り扱い

旧法

建物が滅失した場合、底地人が異議を申し立てない限り、借地期間は前述した「1.残存期間」の項の内容にしたがって延長される年数が決まります。

新法

新法では、再建築に対する取り扱いが2つのパターンに分かれます。

  • 底地人が再築を承諾した日または再築した日のいずれか早い日から20年間存続
    • 底地人が再築を承諾した場合
    • 底地人へ再築の申し入れをし、2カ月経過しても底地人からの返答・意義がない場合
  • 初めの契約期間で終了
    • 底地人へ再築の申し入れをした後、底地人から異議があった場合
    • 底地人へ再築の申し入れをしない場合

※滅失(めっしつ)・・・建物が取り壊しや災害などで消滅してしまうこと

更新の拒絶

旧法

底地人が借地契約の更新を拒絶する場合、旧法では正当な事由が必要でした。

そのため、原則として借地人が更新を希望すれば更新可能だったのです。

旧法では正当な事由が明確化されておらず、更新を拒絶するかどうかがよく裁判で争われていました。

新法

一方、新法の場合は正当な事由が明文化され、立退料の支払いだけで更新を拒絶できるようになりました。

つまり、借地人の権利の方が強いという状態が改善されたのです。

堅固建物と非堅固建物って何?どうやって区別する?

さて、前項では旧法の存続期間が「堅固建物(けんこたてもの)」と「非堅固建物」によって区別されるとありました。

当項では、その2つについて解説していきます。

堅固建物と非堅固建物はどうやって区別する?

基本的には、耐久性・耐震性・解体の容易性の有無などを考慮して決まると言われています。

もちろん、木造であってもそれらの要素が優れている建物もあります。

しかし、法律上は以下のように堅固建物と非堅固建物で区別されています。

  • 堅固建物→石造り・レンガ造り・土づくり・コンクリート造・鉄筋コンクリート造など
  • 非堅固建物→木造

ここで問題なのは、軽量鉄骨の建物と重量鉄骨の建物です。

軽量鉄骨で解体容易なものは、非堅固建物とされるという判決が度々裁判で決定されています。

なぜなら、重量鉄骨であっても場合によっては軽量鉄骨と大差ないことがあるからです。

1973(昭和48)年10月5日の最高裁では、以下のような判決が下されました。

「重量鉄骨建物は原則として、堅固建物であるということを前提とする。その上で、組立て式は解体が簡単で、重量鉄骨の柱の途中が木材でつながれているという特殊な場合に、非堅固建物だと認める」

このことから、現時点ではこの判例が最高裁の判例とされているため、原則重量鉄骨建物は堅固建物とされる可能性が高いことが分かります。

※軽量鉄骨・・・軽量かつ高い強度を持つ鉄骨を使用した鉄骨造の1種のことで、厚さ6mm以下の鋼材を使用したもの

※重量鉄骨・・・鉄骨造の建物に使われる鋼材のこと

新法・借地借家法が制定された【3つ】の理由

ここでは、旧法から新法が施行された理由についてお伝えします。

底地人と借地人の間にある力関係の変化

長年の時を経て「底地人」と「借地人」の力関係は変化してきました。

多くの時代では、土地を持つ底地人の方が圧倒的に強く、借地人はそれに抑圧されてきました。

そこで社会的に弱かった借地人を保護することを目的として、借地法・借家法が制定され、借地権が強化されていったのです。

しかし、その結果底地人よりも借地人の権利の方が強くなる状況ができてしまいました。

ですので、旧法では底地人は正当な事由がない限り更新の拒絶や中途解約ができないようになっています。

そこで、双方の権利を公平に守るため、新法が制定されることとなりました。

新法では、底地人にも有利な条項が増やされています。

細かい条項を加える必要性があったから

借地上に生じる問題を解決するため、より細かい条項を制定する必要が出てきました。

例えば、借地上の建物が朽廃したり滅失したりした場合の存続期間や更新をどうするかなどです。

借地借家法における土地というのは、あくまでも土地の上に建物があることが条件となります。

建物が土地の上からなくなってしまった場合、旧法では借地権がどうなるかということが明文化されていませんでした。

そうした問題を解決するために細かい条項を加える必要性があり、新法が制定されました。

借地権をより明確に定義するため

旧法において「借地権」というものは、ただの「1つのくくり」でした。

しかし、実際は契約期間や土地の所有目的などによって権利の条件が変わります。

そこで、借地権を細分化し、普通借地権や定期借地権などに分けることで、それぞれの借地に合った借地権の定義ができるようになりました。

このように、新法が制定されたのにはいくつかの理由が絡み合っています。

しかしながら、やはり借地人の権利の方が強かったことが大きな理由と言えます。

旧法では「一度土地を貸すと半永久的に戻ってこない」とされるほど、借地人の権利の方が強かったのです。

それでは底地人の権利を守れないため、新法ではそのような状態を改善するための条項が制定されています。

まとめ

今回は、借地権の旧法と新法に関して解説しました。

従来の旧法では借地人の権利の方が強い状況にありましたが、それを改善すべく新法が制定されました。

借地権の旧法と新法について理解を深めるには、今回解説した「借地権」「借地契約」「堅固建物」「非堅固建物」についても知っておくと良いでしょう。

土地の貸し借りをする予定がある方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。