お金がない高齢者が利用できる公的支援と資産活用の方法

財布の中身が空っぽのシニア男性

年金収入のみでの生活が難しくなる高齢者が増えています。物価上昇や医療費の負担増加により、家計の厳しさが増す中、公的支援制度の活用や資産を有効活用する方法が求められています。

そこで本記事では、生活に困った高齢者が利用できる支援制度や、持ち家を生かしたリバースモーゲージやリースバックの仕組みを詳しく解説します。老後資金を確保するための選択肢を知り、安心して暮らせる方法を考えていきましょう。

年金だけでは生活が苦しい高齢者の実情

通帳を見て悩むシニア男性

日本では高齢化が進み、多くの高齢者が年金を主な収入源として生活しています。しかし、年金だけでは十分な生活資金を確保できないケースも少なくありません。特に単身高齢者や無職の世帯では、毎月の収支が厳しくなり、医療費や生活費の増加によって経済的な困難を抱える人も増えています。

ここでは、高齢者の生活実態をデータとともに分析し、年金だけでは生活が厳しい背景や具体的な課題を解説します。

年金生活の厳しさが増す背景

2022年の国民生活基礎調査によると、65歳以上の方がいる世帯は全世帯の50.6%を占めています。高齢者世帯の平均所得は318.3万円で、全世帯平均の545.7万円と比較すると低い水準にあります。

高齢者世帯の収入源を見ると、公的年金・恩給が62.8%を占め、就労収入は25.2%にとどまっています。年金収入への依存度が高いため、十分な年金を受け取れない場合、生活困窮に陥るリスクが高まります。また、貯蓄があると回答した高齢者世帯は80.7%ですが、約2割の世帯は貯蓄がほとんどない状況です。

これらのデータから、高齢者世帯、特に単身高齢者や年金収入に依存する世帯で生活困窮が進行していると予測できます。

高齢者の生活を圧迫する主な要因

高齢者の生活を圧迫する主な要因として、医療費の負担増加が挙げられます。2022年10月から、75歳以上の後期高齢者のうち、一定以上の所得がある方の医療費窓口負担割合が1割から2割に引き上げられました。具体的には、同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上の方がいて、かつ年金収入とその他の合計所得金額の合計が、被保険者が1人の場合は200万円以上、2人以上の場合は320万円以上の場合が該当します。 

また、食料品や光熱費などの生活必需品の価格上昇も、高齢者の家計を圧迫しています。特に年金生活者にとって、物価上昇は実質的な収入減少を意味し、生活の質に直接的な影響を及ぼしています。さらに、年金額は物価や賃金の変動に応じて調整されますが、物価上昇に対して年金額の増加が追いつかない場合、実質的な購買力が低下することになります。 

一人暮らし高齢者の経済的な不安

一人暮らしの高齢者は、配偶者を亡くした喪失感や孤独感に加え、経済面での不安を抱えやすい傾向があります。内閣府の「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によれば、60歳以上の男女のうち、現在の経済的な暮らし向きについて「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」と答えた人は20.1%、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人は54.0%で、合わせて約74.1%が「心配なく暮らしている」と回答しています。

しかし、収入が少ない高齢者ほど経済的な不安を感じる傾向が強いことも事実です。例えば、国民年金の平均受給額は月額約5万6,000円であり、老後の一人暮らしに必要とされる月々の生活費である約16万円と比較すると、大きな差があります。 さらに、先述した医療費や介護サービスの利用料など、高齢期特有の支出も経済的な負担となるでしょう。

生活に困った高齢者が利用できる公的支援制度

相談中の高齢女性とスーツ姿の男性の後ろ姿

国や自治体では高齢者向けの公的支援制度を用意しています。ここでは、生活費や医療費の負担を軽減する制度の内容と活用方法を分かりやすく解説します。適切な支援を受け、安心して暮らせる環境を整えましょう。

生活困窮者自立支援制度

生活困窮者自立支援制度は、生活に困難を抱える方々が自立した生活を送れるよう支援する制度です。以下のような支援が提供されています。

・自立相談支援事業

専門の相談員が個別に相談を受け付け、問題解決に向けた支援プランを作成し、継続的なサポートを行ってくれます。

・住居確保給付金

離職や収入減少により住居を失う恐れがある方に対し、一定期間、家賃相当額を支給する制度です。住居の安定を図り、生活再建を支援してくれます。

・就労準備支援事業

就労経験が少ない方や長期間離職している方を対象に、就労に必要な基礎能力の向上を目的とした訓練や講習を提供してくれます。

・家計改善支援事業

家計管理が難しい方に対し、専門家が家計の見直しや収支のバランス改善のアドバイスを行い、安定した生活をサポートしてくれます。

これらの支援を受けるには、お住まいの市区町村の福祉事務所や社会福祉協議会に相談することが第一歩です。

年金生活者支援給付金

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入や所得が一定基準額以下の年金受給者に対し、年金に上乗せして支給される給付金です。生活の支援を目的としており、以下の3種類があります。

・老齢年金生活者支援給付金

65歳以上で老齢基礎年金を受給している方が対象です。同一世帯の全員が市町村民税非課税であり、前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が一定以下の場合に支給されます。給付額は月額5,000円程度ですが、保険料の納付状況により変動します。 

・障害年金生活者支援給付金

障害基礎年金を受給している方が対象で、前年の所得が一定以下の場合に支給されます。給付額は月額6,000円程度です。 

・遺族年金生活者支援給付金

遺族基礎年金を受給している方が対象で、前年の所得が一定以下の場合に支給されます。給付額は月額5,000円程度です。 

これらの給付金を受け取るには、日本年金機構からの案内に従って請求書を提出する必要があります。なお、市町村から提供される所得情報等により、年金生活者支援給付金の支給要件を満たしているか判定されます。

高齢者向け住宅リフォーム助成制度

高齢者が安全で快適な生活を送るために、住宅のバリアフリー化や設備の改修を行う際、費用の一部を助成する制度です。主な対象工事は以下のとおりです。

・手すりの設置

廊下や階段、トイレなどに手すりを取り付け、移動や立ち上がりをサポートしてくれます。

・段差の解消

室内外の段差をなくし、つまずきや転倒のリスクを軽減してくれます。

・床材の変更

滑りにくい床材への変更や、畳からフローリングへの変更など、安全性と快適性を向上させてくれます。

・扉の交換

開き戸を引き戸や折れ戸に変更し、車椅子でも通行しやすくしてくれます。

・トイレや浴室の改修

和式トイレを洋式に変更したり、浴室に手すりや滑り止めを設置するなど、安全性を高めてくれます。

助成額や対象工事の詳細は自治体によって異なります。申請を検討される場合は、お住まいの市区町村の住宅担当窓口や福祉課に問い合わせてください。

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、低所得者や高齢者、障害者の方々が安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付けと必要な相談・支援を行う制度です。 この制度には以下のような資金が用意されています。

・総合支援資金

生活再建までの間に必要な生活費用や、住宅の賃貸契約を結ぶための敷金・礼金等の費用を貸し付けてくれます。

・福祉資金

医療費や介護費用、災害時の経費など、一時的に必要な経費を貸し付けてくれます。

・教育支援資金

高等学校や大学等への就学に必要な費用を貸し付けてくれます。

申請を希望する方は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会や居住地担当の民生委員にお問い合わせください。

高額医療・高額介護合算制度

高額医療・高額介護合算制度は、同一世帯内で1年間(毎年8月1日から翌年7月31日まで)に支払った医療費と介護費の自己負担額の合計が高額となった場合、一定の限度額を超えた分が払い戻される制度です。 

この制度により、医療と介護の両方の費用負担が大きい世帯の経済的負担を軽減することができます。申請は、加入している医療保険の保険者(健康保険組合や市区町村の国民健康保険担当窓口など)を通じて行います。

生活保護制度

生活保護制度は、病気や失業などで収入が乏しく、生活が困難な方に対し、国が最低限度の生活を保障し、自立を助けるために生活費や医療費などを支給する制度です。主な扶助内容には以下のものがあります。

・生活扶助

食費や衣料費など、日常生活に必要な費用を支給してくれます。

・住宅扶助

家賃や地代など、住居に関する費用を支給してくれます。

・医療扶助

診察や治療、薬剤費など、必要な医療サービスの費用を支給してくれます。

・介護扶助

介護サービスを利用する際の費用を支給してくれます。

生活保護の申請は、お住まいの市区町村の福祉事務所で行います。申請には収入や資産の状況を確認するための書類が必要となりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。

資産の有効活用で老後資金を確保する方法

家の模型を持つ老夫婦

老後の生活資金を確保する方法として、年金や貯蓄だけでなく、資産を有効活用する選択肢もあります。特に、持ち家を所有している場合、その不動産を活かして資金を確保する方法が注目されています。

自宅を担保に融資を受ける「リバースモーゲージ」や、自宅を売却しながら住み続ける「リースバック」は、資産を活用して老後資金を確保する有効な手段です。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自身の状況に合わせて適切な方法を選ぶことが重要です。

持ち家を活用したリバースモーゲージ

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受け、利用者の死亡時に担保不動産の売却代金で一括返済する仕組みです。住み慣れた自宅に住み続けながら資金を得られる点がメリットとして挙げられます。

一方で、契約時に家族の同意が必要な場合や、不動産価値の下落リスク、長生きによる返済リスクなどのデメリットも存在します。リバースモーゲージを検討する際は、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、専門家に相談しながら状況に応じた資金計画を立てることが大切です。

関連記事 : リバースモーゲージとリースバック:あなたに合った選択は?

自宅を売却してリースバックする選択肢も

自宅を売却してリースバックする選択肢も、高齢者の老後資金を確保する手段の一つです。リースバックとは、自宅を売却してまとまった資金を得ながら、そのまま賃貸として住み続ける仕組みです。リバースモーゲージと比べて所有権は移転しますが、住み慣れた環境を維持しつつ資金を確保できるメリットがあります。

ただし、売却価格は市場価格より低めに設定されることが一般的であり、契約形態によっては一定期間後に更新できない場合もあります。また、契約内容によっては将来的に買い戻しが可能なケースもあるため、事前に確認しておくことが大切です。

関連記事 : 生活保護・ブラックリストでも家を手放さない!リースバックの可能性

まとめ

預金通帳を確認して喜ぶシニア女性

高齢化が進む中、年金だけでは生活が厳しい高齢者も多く、生活費や医療費の負担が課題となっています。公的支援制度を活用することで、一定の経済的負担を軽減できますが、資産を有効活用する方法も選択肢の一つです。

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受けながら住み続けられる仕組みで、老後資金を確保できますが、不動産価値の下落や金利変動のリスクも伴います。また、リースバックは、自宅を売却しつつ賃貸として住み続ける方法で、資金を柔軟に使える点が特徴です。

資産を活用した老後資金の確保を考える際は、それぞれの特性を理解し、自身の状況に合った選択をすることが大切です。リアルエステートでも、安心して資産を生かせる「おうちのリースバック」をご提案しています。高額買取を目指し、市場価値の低い物件も柔軟に対応いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。