賃貸経営を始めたい方必見!知っておくべきリスクと費用とは?

毎月の家賃収入によって、安定した収益を得られる賃貸経営。
しかし、賃貸経営にはさまざまなリスクが存在します。さらに多額の初期費用のほか、月々のローン返済や建物の維持費・管理費など、経営を安定させるためには綿密な資金プランが欠かせません。
本記事では、賃貸経営のリスクや必要な費用について解説します。あわせて、メリットや経営の種類も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
賃貸経営のメリット
賃貸経営には、安定した収入や節税効果などさまざまな魅力があります。では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
安定した収入が得られる
賃貸経営の収入源は「家賃」です。入居者が毎月の家賃を支払うことで、大家は安定した収入を得られます。また、建物が損壊したり周辺環境が著しく変化したりしない限り、家賃が急激に下がることはほとんどありません。入居者を確保できれば長期的な収入が見込めるため、資産の管理や運用において重要な役割を果たします。
リスクが小さい
賃貸経営は、株式や外国為替などの金融商品を使った投資と比べ、リスクが比較的小さいと言われています。なぜなら不動産は現物資産であり、その価値が時間とともに下がりにくいからです。また、インフレの影響を受けにくいため、資産価値の維持がしやすくなります。さらに、不動産は短期間で頻繁に売買されることも少ないため、価格変動のリスクも低いと言えるでしょう。
資産を保持できる
不動産所有者の中には、「自分で使うことがほとんどないから、いっそ売ってしまった方がいいのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、賃貸経営を始めれば、不動産を保有しながら継続的な収入を得られます。売却することなく、資産を保持できるのは大きなメリットです。さらに家賃収入を得られるため、将来の資産形成にも役立つでしょう。
節税効果がある
賃貸経営は家賃収入を得られるだけでなく、不動産にまつわる節税効果も期待できます。なぜなら、賃貸経営で発生する各種経費や減価償却費用などが、所得税や住民税の課税対象から差し引かれるからです。また相続税についても、不動産の評価額が時価のおよそ7割まで下がるため、税額を大幅にカットできる可能性があります。
ただし、節税対策だけで賃貸経営を始めると、思わぬ損失を生みかねません。節税を重視したい方は、必要に応じて不動産業者や税理士などの専門家に相談しましょう。
賃貸経営に必要な費用
賃貸経営を始めるには、さまざまな費用が必要です。ここでは、賃貸経営に必要な初期費用と維持費用、さらに自己資金について詳しく見ていきましょう。
初期費用
賃貸経営を始める際に必要な初期費用は、およそ4,000万~6,000万円です。このうちのほとんどがアパートやマンションの建築費で、費用は建物の構造によって異なります。詳しくは次の表を参考にしてください。
〈3階建てのアパートを建てた場合の初期費用と期待できる収入〉
建物の構造 | 初期費用 | 期待できる収入 |
木造 | およそ4,600万円 | およそ900万円 |
鉄骨造 | およそ5,500万円 | およそ1150万円 |
鉄筋コンクリート造 | およそ9,000万円 | およそ1300万円 |
また、具体的な建築費は、建物の構造や規模によって異なります。坪単価を目安にすれば、木造は56万~75万円、鉄骨造は83万~110万円、鉄筋コンクリート造で96万~125万円が一般的です。
さらに、建築費以外では次のような初期費用が挙げられます。これらは初期費用のおよそ1~2割を占め、いずれも賃貸経営では欠かせない費用です。
費用の種類 | 費用 |
不動産取得税 | 固定資産税額×標準税率(3%) |
登記費用 | 1,000~6万円 |
印紙税 | およそ30万~50万円 |
保険料 | およそ50万円 |
維持費用
賃貸経営は、経営を始めた後にもさまざまな維持費用がかかります。主な維持費用は次の通りです。
・毎月の光熱費……およそ1万円程度
損害保険料……およそ1万~10万円
・管理費……家賃の5%
・修繕費やリフォーム費など、随時発生する費用……およそ1万~100万円
・仲介手数料……家賃の50%
自己資金
賃貸経営を始める際は、建物の購入費として多くの方が住宅ローンを利用します。しかし、ローンを借り入れるからといって、自己資金が不要なわけではありません。ローンを組むためには、頭金が費用だからです。当然のことながら、この頭金は自己資金で賄わなければいけません。また自己資金は、建築費のおよそ1~2割が目安とされています。さらに、建築費以外にも登録費用やローンの手数料など、さまざまな諸費用が必要です。
たとえば、建築費5,000万円のアパートを経営する場合、最低でも自己資金は750万円必要です。
賃貸経営を始める際には、これらの資金プランをあらかじめ立てておく必要があります。準備を怠ってしまうと、安定した経営は長く続けられません。また、経営を始めた後も維持費やローン返済などが毎月かかるため、適切なキャッシュフロー管理が必要です。
物件の種類ごとの賃貸経営の特徴
賃貸経営といっても、物件の種類によって経営方法は異なります。ここでは、主に区分所有のマンション経営と一棟マンション・アパート経営の特徴を見ていきましょう。
賃貸経営の種類
①区分所有のマンション経営
区分所有のマンション経営は、分譲マンションの1部屋のみを貸し出す方法です。建物全体を管理する必要がないため、初期費用をかなり抑えながら家賃収入を得られます。「なるべく支出を減らして、こぢんまりと賃貸経営をしたい」という方におすすめです。
ただしデメリットとして、1部屋のみの賃貸のため、入居者がいないときは家賃収入がゼロになることが挙げられます。そのため、入居率を維持することのほか、入居者の入れ替えのタイミングなどに注意が必要です。
②一棟マンション・アパート経営
一棟マンション・アパート経営は、相続あるいは購入した土地やマンション・アパートを活用して賃貸経営を行う方法です。区分所有のマンション経営と異なり、複数の部屋を一括して賃貸するため、安定した家賃収入を得られます。ただし、土地の整地費用やアパート・マンションの建築費などの初期費用がかかることに注意しましょう。そのため、資金調達は十分に余裕を持たせ、さらに不動産の専門知識をある程度身に付けておく必要があります。
どちらが経営しやすいのか
一棟マンションと一棟アパートを比べると、アパートの方が初期費用を安く抑えられる傾向にあります。これは、一棟マンションが建築費用の高い鉄骨造や鉄筋コンクリート造で建てられることが多いからです。しかし、マンションは家賃を高く設定しやすく、長期的に見れば収益性が高いと言えます。
賃貸経営で気をつけるべきリスク
賃貸経営は多額の家賃収入を期待できますが、リスクを十分に把握しておかなければ、大きな損失を生みかねません。経営上、どのようなリスクがあるかを把握しておくことで、将来的なトラブルを避けられるはずです。ここでは、賃貸経営で気をつけるべきリスクを紹介します。
空室リスク
賃貸経営を始めても、空室が埋まらなければ家賃収入は得られません。経営を始めると、ただ入居者を迎えるだけでなく、毎月のローン返済や管理費を支払う必要があります。あまりにも空室が長く続いてしまうと、月々の出費が経営を圧迫しかねません。
家賃の下落リスク
賃貸経営を続ける上で避けられないのが家賃の下落リスクです。建物はいくら入念に手入れをしても、経年劣化によって古びていきます。それによってニーズが減り、さらに周辺に新築物件が建てば、入居者の募集はますます難しくなるでしょう。
家賃の滞納リスク
たとえ空室が埋まっても、入居者がきちんと家賃を払わなければ利益を上げられません。それだけでなく、入居者が家賃を滞納すると、その対応にさらなる費用がかかります。退去させるにしても手数料や訴訟費用を要するため、あらかじめ滞納リスクの対策を講じておくべきです。
建物の経年劣化リスク
建物の経年劣化に伴って、修繕費用や大幅な工事が必要になります。新築物件の場合は問題ありませんが、築年数が古い物件を賃貸経営に利用する場合は注意しましょう。特に、各部屋の浴室やキッチンなどの水回りや、建物の外壁や屋根などは劣化が目立ちやすいです。建物の資産価値を保つためにも、こまめな修繕は欠かせません。
地震や水害などの自然災害リスク
日本は世界有数の「地震国」と言われています。阪神淡路大震災や東日本大震災によって倒壊した建物の数は計り知れません。直近では、能登半島地震も記憶に新しいでしょう。自然災害は避けようのないリスクですが、備えることはできます。耐震性を強化するための補修工事や、保険料の見直しなどは経営者としての重要な仕事です。
入居者トラブルのリスク
入居者トラブルも、賃貸経営を進める上で注意すべきリスクです。騒音や異臭騒ぎによる日常的トラブルはもちろん、場合によっては入居者の死亡によって事故物件になることもあるでしょう。いずれの場合も、大家としての迅速な対応が求められます。
立地リスク
立地リスクは、立地条件に頼りすぎている建物に多く見られます。たとえば、近所に大規模な工場がある場所で賃貸経営をしていたとしましょう。入居者のほとんどは工場の作業員でしたが、あるとき工場が別の地域へ移転することになりました。そうなれば、入居者は一気に減ってしまいます。立地条件は賃貸経営を始める上で重要なポイントですが、依存することには大きなリスクがあります。
赤字リスク
賃貸経営のほかにも、土地活用の方法はさまざまです。主に駐車場経営や資材置き場、広大な土地を利用したソーラーパネルの設置などが挙げられます。これらに比べると、賃貸経営は初期費用が高い傾向にあり、そのぶん経費の回収もハードルが高いです。加えて、月々のローンの返済もあります。賃貸経営は成功すれば大きな収益を期待できますが、赤字リスクも理解しておかなければいけません。
金利上昇リスク
賃貸経営を始める方の多くが住宅ローンを利用します。その際、変動金利型を選択した場合は注意が必要です。変動金利型は、金利によって月々のローン返済額が決まります。そのため、金利が著しく上昇した場合は返済額が高額になってしまうでしょう。ローンを借り入れる際は、金利変動リスクを十分に理解しておく必要があります。
賃貸経営にまつわるQ&A
Q.1 賃貸経営で得られる収入と、必要な支出を教えてください。
A.1 賃貸経営で得られるのは家賃収入です。しかし、経営を進める際にはさまざまな支出があります。たとえば、毎月のローンの返済はもちろん、建物の修繕費や管理費、保険料や各種税金などです。これらの支出を収入から差し引いたものが所得であり、所得には所得税が課せられます。その税額を差し引いたものが、賃貸経営者の最終的な収入です。また、賃貸物件を売却した場合も、売却金は経営者が受け取れます。
Q.2 賃貸経営のメリットを教えてください。
A.2 賃貸経営の最大のメリットは、家賃収入によって不労所得を実現できることです。「副業で稼ぎたい」という方はもちろん、定年退職後に始められる方もいます。また、所有する不動産で賃貸経営をする場合、節税対策になることも大きな魅力です。ただし、賃貸経営には税金や管理費など多くの費用がかかることを忘れてはいけません。
Q.3 管理業者を選ぶときに重視すべきポイントを教えてください。
A.3 管理業者を選ぶときは、業務内容と委託料がポイントです。業務内容の質の高さは業者によって異なります。最初から1社に決めてしまうのではなく、各業者のホームページで業務内容やオプションなどをチェックしましょう。また、賃貸物件の管理委託料は、家賃のおよそ5%が一般的です。この値段を基準に、安すぎず高すぎない業者を選ぶことが重要です。
Q.4 賃貸経営に向いている人を教えてください。
A.4 ほかの不動産経営と同じように、賃貸経営にも向き不向きがあります。特に、賃貸経営では不動産業者や管理業者との協力が不可欠です。大家としての管理能力や判断能力はもちろん、コミュニケーション能力も必要になります。さらに、賃貸経営には少なからず不動産の知識が必要ですから、知識を持っている方、あるいは未経験でも学習意欲が高い方に向いていると言えます。
いかがでしたか?
今回は賃貸経営について解説しました。賃貸経営を始める際は、想定できる家賃収入に目が向きがちですが、重要なのはリスク対策と綿密な資金プランです。毎月どれくらいの支出になるか、どのようなリスクがあるのかを把握しておくことで、より安定した経営を続けられるのではないでしょうか。