入院中でも自宅売却は可能か

目次

  1. 入院中でも売却できる4つの方法
  2. 認知症・意識不明の場合の自宅売却
  3. 入院場所を住所にできる?
  4. まとめ

入院中でも売却できる4つの方法

 自宅売却をしたいのだけれども、所有者が入院中で…と悩まれている方、ご安心ください。
そのような場合でも自宅売却は可能です。
入院中の自宅売却を実現させるためには、以下の4つの方法があります。

それぞれの方法について詳しく解説しようと思います。

⑴病院での契約

所有者の外出許可が降りない場合、買主や不動産仲介業者に直接病院まで出向いてもらい、その中で契約することができます。
家や土地などの売買契約を結ぶ場所に関しては法律で特に定められてはいないので、売主と買主の合意があれば病院内でも契約することが可能です。
なお、契約場所を病院に変更したい場合は、売却を依頼した不動産会社にその旨を伝え、買主の了承を取ってもらってください。

⑵持ち回り契約

持ち回り契約とは、不動産売買契約において契約締結日に売主と買主双方、またはどちらかが立ち会うことができない場合に、仲介業者である不動産会社が双方へ足を運び契約書に記名押印をもらう方法です。
通常の不動産売買契約では、契約当事者が揃った状態で契約書に署名・押印するのが原則ですが、売主と買主の合意のもとでこういった方法を取ることもできます。
よって、不動産仲介業者に持ち回り契約を申し出て、病院まで出向いてもらうこともできるのです。

⑶代理人に委任

入院患者の容態によっては、契約を結ぶための手続きすら困難、というケースも考えられます。
その際は、代理人に不動産売却を委任することも可能です。
所有者本人の意思で不動産の売却を委任する場合は、未成年者など一部の例外を除いて、家族や親友、司法書士や弁護士など法律の専門家、知人や友人等、誰でも代理人にすることができます。

この時、代理人の権限には十分注意が必要です。 全てを任せてしまうと売却価格や条件を好き勝手に決められてしまう恐れが生じてしまうので、委任状に、禁止事項や代理人に委任する行為などを細かくしっかり記載しておけば、トラブルを未然に防ぐことができます。

また、代理人契約の場合は、委任状・不動産所有者の印鑑証明書・代理人の身分証明書、実印、印鑑証明書が必要です。
委任状に関しては、不動産所有者の直筆で所有者の実印の押印があるものである必要があります。

必要書類に不備や記入漏れがあると、売買契約が遅れるなどのトラブルにもなりかねないので注意が必要です。
また、所有者本人になりすました人物が勝手に委任状を作成し、知らぬ間に売却をされてしまう、といった犯罪を防止するために、「犯罪収益移転防止法」による本人確認が定められており、契約を仲介する不動産会社(宅建業者)や司法書士などの特定事業者には、これをすることが義務付けられています。
この本人確認は、不動産会社によるものと、司法書士によるもの、の2つの方法があります。

どちらも基本、免許証やマイナンバーカードで確認を行うのですが、時には本当に売主がその土地の持ち主であるかどうかを確認するために、干支や生年月日、過去の住所、当該不動産の取引経緯などを直接ヒアリングして確認することもあるのです。

⑷名義変更

家や土地などの名義を子や孫に変更して、売却活動を行ってもらうという方法で、「贈与」と「売買」の2つがあります。
「贈与」は、無償で譲り渡す方法で、これを行うと、1月1日から12月31日までの1年間に贈与した合計額(=家の資産価額)から、基礎控除額の110万円を差し引いた額に応じて10~55%の贈与税が課せられ、贈与を受けた人が納税することになります。
「売買」は、通常の売却手順同様、家や土地を子や孫に売却する、という方法。
また、売却した際に売却益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の確定申告で譲渡所得税を納めなければならない点も同様です。
このような様々な方法を用いて、入院中でも自宅売却が可能です。
では、入院中の不動産の所有者が認知症だったり、意識不明の状態ではどうすれば良いのでしょうか、その方法を次の項目で説明しようと思います。

認知症・意識不明の場合の自宅売却

上記の方法は、あくまで入院している所有者本人の判断能力がある場合に適用されるものであり、判断能力が不足している場合での契約締結は無効となってしまいます。そのような際は、「成年後見制度」を利用することで、成年後見人が不動産の売却を行うことができます。

成年後見制度とは、認知症や知的障がいによって判断能力が不十分な人が、生活をする上で不利益を被らないよう、「成年後見人」が本人の代わりに適切な財産管理や契約行為の支援を行うための制度です。

これには、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があり、すでに判断能力がないとみなされる場合は、前者の「法定後見制度」を利用して後見人を決めます。
成年後見人の決定のために、まず家庭裁判所に申し立てをします。
本人・配偶者・四親等内の親族・検察官などが可能です。

申立の際には、申立書・戸籍謄本・後見登記事項説明書が主に必要で、場合によっては診断書・財産目録などが必要にもなってきます。
加えて、収入印紙800円程度の申立手数料・収入印紙2600円程度の登記手数料・郵便切手3000円〜5000円程度の送達、送付費用・実施する場合5〜10万円程度かかる鑑定費用などの様々な費用がかかります。

しかし、成年後見人には与えられる報酬もあり、その基本報酬は月額2万円です。
ただし、成年後見人が管理する財産額が1000万円以上5000万円以下の場合には月額3万円〜4万円、管理する財産額が5000万円以上の場合には月額5万円〜6万円が目安となります。
身上監護等に特別困難な事情があった場合には、付加報酬として基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を請求される可能性も。

その後、家庭裁判所で、記載された人物が成年後見人としてふさわしいかどうかが審理されます。
未成年者・破産者などは原則成年後見人にはなれません。
審理が無事終わったら、法定後見人の選任の審判が下ります。
場合によっては、親族ではなく、弁護士や司法書士が選任される可能性もあります。

審判が無事終わると、審判書謄本が裁判所から送付され、法定後見が開始されるとその旨が登記されるのです。
ちなみに、申し立てから裁判所での審判まで、およそ1〜2ヶ月はかかるので、事前にスケジュールを立てておくと良いでしょう。

このようにして成年後見人を立て、その人に活動を行ってもらえば、所有者が認知症・意識不明の場合でも自宅売却が可能になります。
では、入院中の不動産所有者がいずれかの方法で自宅売却を行った際、住民票はどうすれば良いのか、次の項目で説明しようと思います。

入院場所を住所にできる?

まず、自宅売却の際の住民票の変更の仕方について説明します。
これは、家の売却で転居届を提出する場合と転出届を提出する場合、転入届を提出する場合の3つの方法があります。

転居届の場合、手続きには運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類をはじめ、旧住所の役場が発行した保険証・医療証、加えて印鑑などが必要です。
新住所の役所に転居届を提出すれば手続き完了。

転出届の場合、手続きには転居届同様の持ち物が必要です。
旧住所の役所に転出届を提出し、転出証明書を受け取れば手続き完了。
転入届の場合、転居届の持ち物に加え、転出届の手続きの際に発行された転出証明書が必要になります。

新住所の役所に転入届を提出すれば手続き完了。
自宅を売却したのに住所を変更しないのは問題になるので、自身での行動が困難な場合、代理人や成年後見人にお願いして手続きを行ってもらいましょう。

また、一般的に介護療養型施設の場合「1年以上継続して居住すると見込まれる」あるいは「1年以上居住することが必要であると診断されている」などの場合には当該医療機関の住所地を個人の住所地とすることができる、と言われているので、入院先を現住所として住民票に登録することは可能です。

しかし、場所によっては住民票を移すのはやめてほしい、と言われる場合もあるので、その際は遠慮しておきましょう。
住民票の異動ができない病院の場合は、家を売却する親族の住所に住民票を移すのが一般的です。

ただ、住民票を入院中の施設に移してはいけない、といった法律は特別存在しません。ちなみに、住民票の写しは、新しい住居に転入してから14日以内に行う必要があり、これを破ってしまった際には、5万円以下の罰金が発生します。(住民基本台帳法52条)

まとめ

入院中の患者が土地の所有者であるが、回復の見込みがなく、最後まで病院暮らしになりそう、といったケースで自宅売却をしたい場合、病院内で契約・持ち回り契約・代理人に委任・名義変更の4つのいずれかの方法で可能になります。
代理人に委任する場合は、委任状に細かく禁止事項などを記載しておくことや、不動産会社や司法書士による本人確認でトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
名義変更には、無償で譲り渡し、贈与税を受け継いだものに払ってもらう「贈与」と、子や孫に通常通り売却する「売買」の2つの方法があります。

また、入院している人が認知症や意識不明の状態の際は、成年後見制度を利用することで、成年後見人に自宅売却してもらうことが可能です。 その際は、家庭裁判所に申し立てをして、審理をしてもらい、選任の審判を下してもらう、といった流れになります。

自宅売却を行ったら、原則住所変更をしなければなりません。
1年以上暮らし続ける場合は、病院側から断られなければ、住民票を入院先に変更することが可能ですが、親族の住所に移すのが一般的です。
個々の状況に合わせて適切な判断をとってください。


【関連記事】

自宅を売却するとき、火災保険はどうなる?必要な手続きとは

自宅売却のキャンセルは可能なのか

自宅を「買取」で売却って実際どうなの?

終活するうえでの不動産の整理方法、必要事項まとめ

住宅ローンが残っている家の自宅売却

古家は更地にして売る?

自己破産をしても自宅売却は可能か

高齢者が家を手放す前に考えること

不動産売却の際の司法書士について

親が老人ホームへの入居を検討 自宅売却に伴う注意点