扶養に入っている場合の自宅売却

目次

  1. 不動産売却すると扶養から外れる?
  2. 扶養から外れることで生じる影響
  3. 扶養から外れないようにするためには
  4. 譲渡所得の算出方法
  5. まとめ

不動産売却すると扶養から外れる?

 扶養とは、老幼、心身の障害、疾病、貧困、失業などの理由により自己の労働が困難で、かつ資産が十分でないために独立して生計を営めない者の生活を他者が援助することで、経済的な理由で扶養対象となるためには、

の、4つの条件を満たしている必要があります。

 自宅売却をして利益を得ると、譲渡所得が発生します。では、そうなると配偶者の扶養に入っている場合は果たしてどうなってしまうのでしょうか?
 結論から言うと、扶養から外れてしまう場合もあります。と言うのも、扶養にはおおきく分けて、社会保険に関わるものと、配偶者控除などの税金に関わるものの2種類存在します。そのうち、社会保険に関わるもののほとんどは譲渡所得の影響を受けずに済みますが、税金に関するものは影響を受けて外されてしまうケースがあるのです。この2種類の扶養について詳しく説明します。

⑴社会保険に関する扶養

 これに関しては、ほとんどの場合で譲渡所得が発生したとしても扶養から外れることはないと言われています。一般的に社会保険の扶養には、厚生年金と健康保険の2種類がありますが、双方とも一時的な収入に過ぎず、保険の適用を判断することは基本的にありません。また、協会けんぽの健康保険におきましても、扶養から外れることはありません。協会けんぽには、扶養家族の年収が130万円以下でなおかつ被保険者の年収の半分に満たない、と言う扶養条件があります。これを見ると、不動産などの所得は優に超えてしまいそうですが、130万円のラインは継続収入による条件なので、一時的な譲渡所得は含まれておらず、企業加入が多い協会けんぽの健康保険の場合も、扶養から外れることはありません。なお、協会けんぽ以外の多くの健康保険組合でも、原則同様の扱いですが、なかには譲渡所得を収入に含める、とする所がないとは限らないため、1度加入している保険組合に確認すると良いです。

⑵税金の扶養

 税金の控除に関しては、譲渡所得の発生によって扶養から外れてしまう場合があります。この際に受けられる税金の控除とは、配偶者控除もしくは配偶者特別控除で、どちらも住民税と所得税の負担を軽減してくれるものではありますが、収入などの条件は外れる可能性が高いです。配偶者控除とは、一定の所得控除を扶養に入っている配偶者がいる納税者から行い、住民税や所得税を少なくする制度のことで、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円以下であること、民放の規定による配偶者であること、青色申告者の事業専従者として、その年を通じて給与の支払いを1度も受けていない、または白色申告者の事業専従者ではないこと、などの条件があります。配偶者特別控除には、年間の合計所得金額が48万円超133万円以下であること、配偶者が、配偶者特別控除を使用していないこと、などの条件があります。
 では、実際扶養から外れるとどのような影響が生じてしまうのでしょうか、次の項目で説明します。

扶養から外れることで生じる影響

 不動産の売却によって扶養から外れてしまったとき、実際にどのような影響があるのかを見てみましょう。

 まず、本人とその配偶者の税の負担が増えてしまいます。売却による譲渡所得が発生した本人に関しては、不動産売却により発生した譲渡所得に対しての所得税が発生します。また、納税者の年間合計所得が1000万円以下の場合で、配偶者の所得が38万円を超えてしまうと配偶者控除を受けられなくなってしまいます。配偶者控除は納税者の合計所得金額に応じて、900万円以下の場合38万円、900万円超950万円以下の場合26万円、950万円超1000万円以下の場合13万円といった控除額の効果があるのですが、納税者はそれを受けることができなくなってしまいます。しかし、売却するものがマイホームであれば、一定の要件を満たせば3,000万円の特別控除を受けることができ、譲渡所得が3,000万円を超えなければ所得が発生しません。

 配偶者に関しては、38万円等の所得の金額に関わらず、譲渡所得が発生すれば住民税および所得税、復興特別所得税等の税金が発生します。土地の所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、それ以上であれば長期譲渡所得になります。短期譲渡所得の場合、住民税が9%、所得税が30%で、合計39%になり、長期譲渡所得の場合、住民税が5%、所得税が15%で、合計20%になるため、長期譲渡所得の方がかかる税率は低く済みます。復興特別所得税は、東日本大震災の復興のために新設された税金で、所有期間に関係なく一定で、2.1%です。この税金は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、納税することになります。配偶者の収入が1000万円以下かつ本人の所得が76万円を下回っている場合、配偶者特別控除が適用されます。譲渡所得が発生し、他の収入とあわせて76万円を超えてしまった場合、配偶者は税金が増えて手取り額が減額してしまうことになります。

 さらに、不動産の所有期間が10年以上のものに関しては、軽減税率の特例を受けることができる可能性があります。この特例は、譲渡所得額合計6000万円が基準ラインとなっており、6000万円以下の場合、住民税が4%、所得税が10.21%、合計14.21%で、6000万円以上の場合、住民税が5%、所得税が15.315%、合計20.315%です。このうち、所得税には復興特別所得税2.1%を上乗せします。この特例は、マイホームの場合適用される、3000万円の特別控除と一緒に利用することも可能です。

 しかし、もし不動産売却によって譲渡所得が発生して扶養から外れてしまったとしても、影響が出るのはその1年間だけで、翌年から再度所得などの条件を満たすようになれば、また新たに扶養に入ることが可能です。ただし、所得は不動産の譲渡所得のみではなく、パートなどの他の所得との合算になるので留意しましょう。
結局は、その他の所得が増えれば扶養から外れることになってしまいます。
 では、そもそも扶養から外れないためにはどうすれば良いのでしょうか、次の項目で説明しようと思います。

扶養から外れないようにするためには

 不動産の売却によって扶養から外れないようにするための方法は、とにかく配偶者控除、または配偶者特別控除の所得制限を超えないようにすることです。基本、譲渡所得が発生した場合は、一時的に扶養から外れてしまう、という意識で準備をしておくことが懸命です。

 また、もし扶養家族が相続を受けた場合、不動産の名義を配偶者に変更して、実質扶養が外れてしまう所得の条件を逸脱しない、と言う方法も取れます。しかし、そうなると不動産の名義変更によって資産の贈与になり、高額な贈与税を支払うことになってしまうため、名義変更で扶養から外れることを狙うのはさほど有効な手段とはいえないでしょう。ただし婚姻期間が20年以上の夫婦ならば、2000万円までは配偶者控除 の特例を受けることができるので、贈与税のマイナスを差し引いても有効な手段として使うことができます。もしこれを利用するのであれば、登録免許税などの、名義変更手続きに必要な費用を算出し、扶養から外れ、普通に納税するのと比較してどちらが利益があるかを考えると良いです。

 扶養から外れてしまうかどうか、に関して譲渡所得の発生が大きく関わってきます。次の項目では、その譲渡所得の計算方法について説明します。

譲渡所得の算出方法

 税法上の扶養に関係ある譲渡所得は、譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)で求めます。このときの、譲渡価額は売却額、所得費は、土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額、譲渡費用は売却の際にかかった諸経費や仲介手数料のことを指します。この計算式からわかるように、譲渡所得は、売却額のことではなく、譲渡価額から取得費と譲渡費用を控除したものになります。譲渡価額や取得費の値によっては、譲渡所得はマイナスになることもあります。そうなった際は譲渡所得は一切発生しません。

 もし、売買契約書の資料が手元にない、などの状況で取得費が不明な場合、譲渡価額の5%に値する、概算取得費を用いることで算出します。例えば、譲渡価額が3000万円、譲渡費用が200万円で取得費が不明な場合、3000万円(譲渡価額)-150万円(概算取得費)-200万円(譲渡費用)=2650万円という計算になります。しかし、この計算方法だと譲渡所得が高額になりやすく、扶養から外れやすくなってしまったり、譲渡所得税が高額になりやすくなる、というリスクがあるため、取得費を証明できる資料は出来るだけ大切に保管しておく必要があります。

まとめ

 不動産売却において、譲渡所得が発生した場合、社会保険に関しては一次的な収入に過ぎないので、基本扶養から外れる心配はありません。一方、税金に関しては扶養から外れてしまう可能性があり、外れてしまうと、納税者は配偶者控除や配偶者特別控除を受けられなくなってしまい、配偶者には、住民税・所得税・復興特別所得税等の税金が発生してしまいます。扶養から外れないようにするためには、所得制限を超えないようにする、もしくは名義変更するといった方法があります。まずは、譲渡所得が規定の金額以下におさまるかどうか、きちんと算出するところから始めると良いです。このようなケースで不動産売却を検討する際は是非参考にしてみてください。


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