保佐人は家を売却できるのか?

目次

  1. 保佐人は家を売却できる?
  2. そもそも保佐人とは?
  3. 保佐人が家を売却できるようになるには?
  4. まとめ

保佐人は家を売却できる?

結論:不動産売却の代理権が付与されている場合は、家庭裁判所に「居住用不動産処分の許可の申立て」を行うことで、本人に代わって家を売却することができる。
代理権が付与されていない場合は、本人しか売却することができない。

「保佐人」とは、著しく判断能力が低下した本人をサポートすることを目的として、本人が行う法律行為の一部に対して、「同意権」「取消権」「代理権」を与えられた人のことです。
判断能力が低下した状態で本人が法律行為を行うと、詐欺被害に巻き込まれてしまったり、不要な浪費をしてしまったりする可能性が高いでしょう。
保佐人は、本人がこのような経済的に損しないようにするため、「同意権」「取消権」「代理権」を行使することで、本人の法律行為をサポートする役割があります。
この記事では、保佐人がサポートしている本人名義の自宅を売却するために必要な手続きや注意点を解説していきたいと思います。

そもそも保佐人とは?

前項でもお伝えした通り、「保佐人」とは、判断能力が低下した本人をサポートする目的で、本人が行う法律行為の一部について、「同意権」「取消権」「代理権」を与えられた人のことを指します。

「保佐人を選任するには」「保佐人に与えられている権限とは」というテーマで、詳しく解説したいと思います。

(1)保佐人を選任するには

保佐人を選任するには、民法11条で「本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」であることが要件として規定されています。
「他の人から支援を受けなければ、契約などの意味・内容を理解することができず、自身で判断することができない」と裁判所で認められた場合に、上記の要件に該当。
認知症などが進行し、本人の判断能力が低下した際、上記要件を満たすようであれば、保佐人を選任すべき段階にあると考えられます。
特に、以下のような可能性がある場合には、速やかに保佐人の選任をご検討ください。

上記状態になった際、保佐人を選任するために、家庭裁判所に「保佐開始の申立て」を行います。
「保佐開始の申し立て」を行うことができるのは下記に当てはまる人で、申立を行う先は、本人の住所地を管轄している家庭裁判所になります。

申立書の中で、保佐人の候補者として複数人挙げることができますが、最終的に誰が選任されるかは、家庭裁判所の判断次第となります。
その点は念頭に置いておきましょう。
必要書類や費用などは、以下の裁判所ホームページをご参照ください。

参考:保佐開始|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_02/index.html

(2)保佐人に与えられている権限とは

続いて、保佐人はどういったことができるのかを見ていきましょう。
与えられている権利としては、「同意権」「取消権」「代理権」の3つになります。

①同意権・取消権

本人(被保佐人)が、以下の重要な法律行為をするときは、保佐人の同意を得る必要があります。
本人が、保佐人の同意を得ずに下記の行為を行った場合、保佐人はその行為を取り消すことが可能です。

②代理権

本人は、保佐人が選任されていたとしても、自分で法律行為を行うのが原則となります。
保佐人はあくまでも、被保佐人をサポートするというのが役割です。
そのため、保佐人には代理権が与えられていません。
ただし、同意権・取消権の対象となる行為については、家庭裁判所の審判次第ですが、代理権が付与される場合があります。
代理権が付与されると、保佐人は本人に代わって、本人のために法律行為をすることができます。

代理権を付与するための審判を請求できる人は、以下のいずれかですになります。
なお、保佐人に対する代理権の付与が認められるためには、必ず本人の同意を得る必要があります。

保佐人が家を売却できるようになるには?

前項で述べたように、原則、被保佐人の法律行為に対しての代理権はありません。
保佐人が被保佐人に代わって、被保佐人の名義で所有されている家を売るための流れについて解説していきます。

詳しく見ていきましょう。

(1)被保佐人の家を売却することに対して代理権を付与してもらえるよう、家庭裁判所へ審判を請求する。

上述したように、原則、保佐人には代理権がないため、代理権を付与してもらう必要があります。
本人の同意を得たうえで、「家庭裁判所へ代理権付与の申立」をすることにより、成年後見人と同じように「代理権」を保佐人にも付与することが可能できます。
代理権の付与は、複数ある重要な法律行為と定義されている中で、申請を出した際にチェックを入れたもののみですになります。
チェックが入っていない法律行為は代理権は付与されないようになっています。

(2)不動産業者と媒介契約を締結し、購入希望者と売買契約を締結する。

上記手続きを行い、保佐人が被保佐人の代わりに売却を行えるようになったら、不動産会社へ査定を依頼し、媒介契約を締結します。
買い手を探してもらい、購入希望者が見つかったら、売買契約を結びます。
ここからは基本的に通常の不動産売買と変わりませんが、2点注意しなければならない点があるんですあります。
1点目は、自分が保佐人として、被保佐人の名義で保有されている不動産を売却しようとしている旨を、不動産会社にあらかじめ伝えておくことです。
不動産会社が作成する書類の記載内容が通常と異なるため、あらかじめ伝えておきましょう。

2点目は、購入希望者との売買契約の中に「停止条件付取引」の条項を付けましょう。価格や引き渡し時期などが決まれば、購入希望者と売買契約を締結します。
ただし、裁判所からの売却許可が出るかどうか分からない段階で契約することは、買い手にとっても売り手にとってもリスクでしかありません。
そこで、保佐人が本人に代わって売却する場合は、契約の中に「停止条件付取引」の条項を付けましょう。
これは、裁判所の売却許可が出た場合のみに、締結した契約が有効になるという特約で、もし許可が下りなければ正式な契約としては成立しないということに両者が同意するものになります。
後で、トラブルにならないように注意しましょう。

(3)家庭裁判所へ「居住用不動産処分の許可の申立て」を行う。

(1)で代理権が付与されたら家の売却を被保佐人に代わって行うことが可能になります。しかし、保佐人が自由に家を売却できるということではありません。
被保佐人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所から許可をもらわなければなりませんう必要があります。
被保佐人が住んでいる住宅が、保佐人によって勝手に売られてしまったり、他人に貸されてしまったりすると、本人の生活が安心して暮らして行けなくなってしまうために、こういった措置がとられています。
また、保佐人には、「身上配慮義務」というものが課せられます。
保佐人は、「被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮して保佐の事務にあたらなければならない」と民法876条の5で規定されています。
例えば、本人の体調に合わせて、現在住んでいる家から介護施設に生活の場を移すなど、配慮する必要があります。
特に、被保佐人は成年被後見人などと比べて判断能力の低下が軽度であるため、保佐人は被保佐人である本人とよく話し合い、本人の意思を十分に尊重して、慎重に保佐の事務にあたる必要があります。
身上配慮義務に即していない理由での家の売却となると、家庭裁判所からの許可がおりないので、なぜ売却しなければならないのか正当な理由が必要ですになってきます。

(4)売買契約の締結、決済、引き渡し、所有権移転登記を行う

裁判所の許可が下りたら、通常の不動産売却と同じ流れになります。
売買契約書に従ってお金のやり取りを行い、不動産を買い手に引き渡します。
なお、不動産を売却して得たお金は本人のためにしか使うことはできません。
所有権の移転登記の完了をもって、不動産の売却は完了したことになります。

まとめ

保佐人が、本人(被保佐人)の居住用不動産を処分するには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
保佐人は、原則本人の意思を尊重しサポートすることが役割となるため、本人に代わって不動産売却を行うための代理権が付与されていません。
そのため、まずは代理権を付与してもらう必要があります。
被保佐人が住んでいる家を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要です。
身上配慮義務を満たすために、売却の必要性や、売却価格の相当性などについて審査され、問題なければ、許可してもらえます。
不動産会社に家の売却を依頼しながら、家庭裁判所に売却の許可を依頼することになるため、購入希望者との売買契約の中に「停止条件付取引」の条項を付けておく必要があります。


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