認知症の親の不動産を売る。

目次

  1. 認知症の親の不動産を売ることはできるのか。
  2. 成年後見制度を使うことで、売却できる!
  3. 法定後見人制度の注意点
  4. 認知症の親の不動産を売却するための手順
  5. まとめ

認知症の親の不動産を売ることはできるのか。

結論:不動産を相続しない限りは普通に売ることはできません。しかし、成年後見制度を使用すれば売却が可能です。

親の保有している不動産を売却したい場合、親の売却意思を確認できなければ、子供が勝手に家を売ることはできません。
元々自分の住んでいた家だからという理由では売れないのです。

しかし、親が認知症になり、介護をするために退職、または時短勤務としたために収入が減少したという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さらに、介護や医療に意外と費用がかかると驚かれている方も多いと思います。
そのため、認知症の親の保有している不動産を売却して、介護や医療のための資金を工面をしたいが、普通に売却することはできません。

そういった場合は、成年後見制度を利用すれば売却することが可能となります。
ただし、注意しなければならないこともありますので、十分に検討する必要があります。

この記事では、認知症になった親の介護費などのために不動産を売却して資金を作りたいと考える方に向けて、どのような手順や書類が必要となるのかについてご説明します。

成年後見制度を使うことで、売却できる!

認知症などで判断能力に欠く人のため「成年後見制度(せいねんこうけんせいど)」があります。
成年後見制度とは、認知症や知的障害などの理由で判断能力が十分でない人の代わりに、成年後見人が契約を結んだり財産の管理などを行って支援する制度です。
成年後見人になった人であれば、不動産の所有者でなくても売却することが可能です。
また、本人の代わりに契約を結ぶだけでなく、必要のない住宅リフォームなどの不利益な契約を本人が結んでしまったときに取り消すこともできます。
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の大きく2種類があります。
すでに認知症によって本人の判断能力が十分でなくなっている場合には、「法定後見制度」を利用しましょう。
法定後見制度の中には「後見」「補佐」「補助」の3種類があり、成年後見人に与えられる権限が異なるので、本人の判断能力に応じて使い分けます。
この制度で重要な点は「意思能力に欠ける人のためのサポートを行う」ことです。
成年後見人になって、家の売却をするにあたって「空き家を売って自分達の生活資金として使う」という目的では売却できず、あくまでも認知症になった親のために使用するという目的でなければなりません。
ですが、法定後見制度を使用して、成年後見人になることで、認知症の親の保有する不動産を売却することができます。
ただし、法定後見制度を利用するに当たって、いくつか注意すべき点があります。

法定後見制度の注意点とは?

①親族であっても成年後見人になれない可能性がある

すでに認知症によって本人の判断能力が十分でなくなっている場合には、「法定後見制度」を利用して、成年後見人にならなければなりません。
しかし、親族であっても、成年後見人に選ばれない可能性があります。
認知症になる前であれば、「任意後見制度」を利用し、本人が成年後見人を選任することができますが「法定後見制度」を利用すると、成年後見人を選任するのは、家庭裁判所です。
そもそも、法定後見人になれるのは、親族、弁護士、司法書士、社会福祉士、福祉関係の法人などが当てはまります。
未成年者、破産者、本人に対して訴訟をした者などは後見人になれません。
親族等を法定後見人の候補者にすることはできますが、裁判所がその人を選任するとは限りません。
後見人になることを希望していた親族が選ばれなかったとしても、不服申し立てなどはできないです。
裁判所は、後見人の職業、経歴、本人との利害関係、その他の事情を考慮し、後見人として最もふさわしい方を選任します。
なお、法定後見人は複数の人が選任されることもあるんです。
必要に応じて、成年後見人を監督するための成年後見監督人も選任される場合があります。

②親族でない第三者が選ばれてしまうと報酬がずっと必要になる

平成31年1月から令和元年12月までの1年間で、法定後見人に選ばれた割合は、親族が全体の21.8%、親族以外が全体の78.2%となっており、8割は親族以外から選ばれています。

弁護士や司法書士など専門職後見人が選任された場合は、本人の財産から家庭裁判所が決めた額の報酬を支払い続けなければなりません。 本人が1000万円程度の財産を持っている場合で月に約2万円必要になります。 さらに「家の売却が済んだから」といった理由で後見人を解任できず、本人が亡くなる、もしくは意思能力が回復するまで、専門職後見人への報酬がずっと発生し続けてしまうため、注意が必要です。

③法定後見人であっても自由に売却できるわけではない

法定後見人になったからといって、本人の代わりに何でもできるわけではありません。
一言でいうと、後見人ができるのは「本人の利益になること」に限られます。
そのため、親の保有する不動産を売却できるかどうかは、売却の目的によるということです。
売却を行いたい場合は、あらためて家庭裁判所へ対して、「親が保有している不動産を売りたい」と申告し、手続きが必要になります。
申し立てを受けた家庭裁判所から、許可されれば売却することができますが、前述した通り「売却が本人の利益になるか」という基準で判断されます。
「認知症の親を施設に入れるため大きなお金が必要である」「売却で得たお金は親のために適切に利用されるか」など、慎重に判断されることになるでしょう。

これらの注意点を踏まえた上で、「法定後見制度」を利用して、認知症の親の保有する不動産を売却するための手順を確認しましょう。

認知症の親の不動産を売却するための手順

法定後見制度を利用して、認知症の親の不動産を売却するための手順は以下の7つの手順で進めていく必要があります。

それぞれの手順に関して、詳しく説明します。

(1)「後見開始の審判」を申立てる

成年後見人の選任を家庭裁判所に申立てます。申立てを行うことができる人は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。申立て先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

詳細な手続き方法や、管轄裁判所は、裁判所のホームページでご確認ください。
参考:裁判所「成年後見制度に関する審判」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_02_2/index.html
参考:裁判所「裁判所の管轄区域」
https://www.courts.go.jp/saiban/tetuzuki/kankatu/index.html

(2)家庭裁判所により調査され、必要があれば医師の鑑定を受ける

申立てが受理されたら、後見人の選任を認めるかどうか裁判所が調査。
親族同士の争いがないかなども確認されることになります。
本人の判断能力の程度を医学的に十分に確認するため、医師による鑑定が行われる可能性もあります。

(3)法定後見人が選任される

家庭裁判所から適格と判断された場合は成年後見人(保佐人、補助人)として選定され、審判内容の登記が行われます。
申立てから審判までは、一般的に2ヶ月くらいかかります。後見人が選定され次第、不動産の査定に進むことができるので、次の手順の準備をしておきましょう。

(4)不動産会社と媒介契約を結んで不動産を売り出す

不動産会社を探して、売却を依頼するための「媒介契約」を結びます。
媒介契約を結ぶ不動産会社は成年後継人が自由に選ぶことができるため、できるだけ高くかつ、スムーズに売ってくれる不動産会社を選びたいところです。
不動産の査定額は、不動産会社によって異なり、数百万円も変わってしまうこともあります。
複数の不動産会社に相談して、十分比較してから決めるようにしましょう。

(5)居住用不動産の場合は裁判所の許可を得る

居住用の不動産の場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
その場合は、「居住用不動産処分の許可の申立て」を行います。
もし、居住用不動産について裁判所の許可を得ないで売買契約を結ぶと、契約は無効となります。
居住用以外の場合は、許可は不要です。

参考:裁判所「居住用不動産処分の許可の申立てについて」
https://www.courts.go.jp/wakayama/l2/l3/l4/Vcms4_00000133.html

(6)買主と売買契約を結ぶ

家庭裁判所の許可後、本人に代わり、成年後見人が売買契約を結びます。
なお、居住用不動産の売却で、家庭裁判所の許可が下りる前に、「裁判所の許可が得られた場合に契約の効力が発生する」という条件を付けて売買契約を結ぶ場合もあります。

(7)代金の決済、物件の引渡し

買主から売買契約時に受け取った手付金を差し引いた残りの売買代金を受け取ります。
鍵の受け渡しなどを行い物件の引き渡しや所有権移転登記などが完了すれば不動産の売却は完了です。

まとめ

ここまで見てきたとおり、親の意思が確認できないほどの認知症になってしまうと、実家の売却も簡単にできなくなります。
売却したお金は親のために使うという目的であっても、子供の独断で自由に売却することはできません。
そこで、成年後見制度を使用することで、本人に代わり不動産を売却することができるようになります。
法定後見制度の申し立てから後見人が選任されるまでに約3ヶ月かかります。
それに加えて、目安として、家の売却を全て完了するまでには、準備期間も含めて早くても4・5ヶ月は必要です。
余裕をもって、進めていけるよう、前もって準備を始めることをおすすめします。
また、認知症となった親の不動産を売却することが、親の本意であるかどうかは、もうすでにわからないかもしれません。
親の本意を汲み取って進めていくために、親が認知症になる前から、話し合っていけることが望ましいです。
そうしておくことで、もし認知症になってしまったとしても、お金の工面や、相続についても考えを整理しやすくなることでしょう。
あらかじめ将来のことを想定して考えていくことが、何にも増して重要であると考えておきましょう。


【関連記事】

共有名義の住宅を売却できる?

認知症の親の不動産を売ることはできるのか。

任意後見人が被後見人の自宅を売却する際の注意点

自宅売却に仲介業者は必要?

自宅売却できる?【フラット35ローン中】

年金生活者の自宅売却

自宅売却のキャンセルは可能なのか

被保佐人は自分で自宅を売却できる?

兄弟が自分の家を売却することは可能?売却のポイントを解説s

親が老人ホームへの入居を検討 自宅売却に伴う注意点