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みなさんは借地権を売却するとどのような税金がかかるか知っていますか。そもそも借地権とは、地主の土地を借りて、その土地を利用することができるという権利です。借地権を持っている人のことを「借地人」といいます。その借地権は地主の許可を取れば売却することが可能です。売却すると代金を手にすることになりますが、その金額に対しては所得税がかかるのでしょうか。その金額はどのような計算式によって決まるのでしょうか。さらに、その際の注意点などについても説明していきます。
借地は、一般的な不動産とは権利の所在が少し異なります。ここでは、一般的な不動産の所有権と借地権、底地権の違いについて説明します。
まず「借地」とは、地主から借りている土地のことです。そして、その土地に建物を建てるなど、借地を自由に利用してよいとする権利のことを「借地権」といいます。借地権と類似するものに「底地権」というものがあります。底権地とは、地主が土地を保有する権利のことです。このように、借地においては土地を利用する権利を持っている人と土地を保有する権利を持っている人が異なるのです。これが一般的な不動産と借地の相違点です。一般的な不動産では、土地の利用者と保有者は同じで、一人の人が「所有権」を手にしています。
一般的に、不動産を売却すると、受け取った代金に対して税金がかかります。これは借地についても同様です。借地権を売却すると税金が課税されます。
不動産を売却したときには、所得税と住民税がかかります。この2つの税金を総称して「譲渡所得税」といいます。この譲渡所得税は不動産を売却したことで得られた利益に対して課税されます。そのため、売却しても利益が出なかった場合には譲渡所得税はかかりません。
それでは、借地権を売却したとき、譲渡所得税はどれくらいかかるのでしょうか。ここからは譲渡所得税を算出するための計算式を紹介します。
譲渡所得税は、不動産を売っていくら得られるのかによって変わってきます。この、不動産を売ったときの収入のことを「譲渡所得」といいます。つまり、譲渡所得税がいくらになるのかを求めるにはまず「譲渡所得」を算出する必要があるのです。
譲渡所得を計算する式は、「借地権の売却価格―(借地権を購入したときの代金+借地権を売却するためにかかった諸費用)―特別控除」というものです。この式についてもう少し説明していきます。
譲渡所得を計算するための「借地権の売却価格―(借地権を購入したときの代金+借地権を売却するためにかかった諸費用)―特別控除」という式のうち、「借地権を購入したときの代金」について説明していきます。借地権を購入するためには様々な費用がかかります。支払うのは借地権の代金そのものだけではないのです。借地権の取得には、
といった費用がかかります。このように、借地権を取得するためには借地権そのものの代金以外にも様々な費用がかかることを頭に入れておく必要があります。
借地権を取得した際に支払う費用にはどのようなものがあるのかについて詳しくはこちらも参照してください。 底地10
次に、譲渡所得を求める計算式のうち、「借地権を売却するためにかかった諸費用」について説明します。借地権を売却する際は、売却代金を得て終わりというわけではありません。不動産を売却するには不動産を査定したり、売却活動を行ったりと、様々なことをしなくてはなりません。そのために手数料などがかかるのです。借地権を売却するには、
などの諸費用がかかります。
借地権を売却するための承諾料について詳しくはこちらを参照してください。
【必読】借地権を売却するには地主の許可や承諾料が必要なのか?
最後に特別控除について説明します。譲渡所得を計算する際には、特別控除を受けられます。その特例は「3,000万円特別控除」というものです。マイホームを売る場合、その価格が3,000万円以内であれば、借地権の売却価格から差し引くことができます。
ここまで、譲渡所得を求めるための「借地権の売却価格―(借地権を購入したときの代金+借地権を売却するためにかかった諸費用)―特別控除」という計算式の詳細について説明してきました。つまり、この式を計算して結果がプラスになった場合に、その金額に対して譲渡所得税がかかるのです。
それでは、譲渡所得税の税率はどれくらいなのかというと、借地権を所有していた期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は、譲渡所得税は39%になります。その内訳は、所得税が30%、住民税が9%です。一方、所有期間が5年以上の場合は、譲渡所得税は20%になります。また、その内訳は所得税が15%、住民税が5%です。つまり、譲渡所得税の税率は、借地権を長く所有していた方がお得になるのです。
最後に、譲渡所得税に関する注意点を紹介します。
譲渡所得を計算する際には特別控除を受けることができると説明しました。しかし、特別控除は勝手に適用されるのではありません。確定申告を行わなければならないのです。確定申告とは、その年の所得を明らかにし、収めるべき税金を申告する手続きです。譲渡所得に関しては、この手続きを自分で行わなければなりません。そのためには、申請書類を作成して税務署へ提出する必要があります。
この確定申告手続きにも注意点があります。それは、手続きは早めに済ませるということです。確定申告には期間が決まっており、期間中の2月15日〜3月15日は会場が混雑します。そのため、早めに準備を済ませて手続きを行ってしまった方がよいのです。
早く確定申告を終わらせるには、書類の準備が欠かせません。確定申告に必要な書類とは、まずは本人確認ができる書類です。マイナンバーカードなどがそれに当たります。次に、利用者識別番号がわかる書類が必要です。しかし、これは過去にも確定申告をしたことがある場合にのみ求められます。その他に、その年の収入がわかる書類と、売却する不動産に関する書類が必要となります。このように、確定申告のためにはたくさんの書類を用意しなくてはなりません。つまり、早めに準備をして入念にチェックしておくことが大事なのです。
借地権売却の確定申告について詳細はこちらも参照してください。
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先ほど3,000万円特別控除を紹介しましたが、この特別控除を受けるにはいくつかの要件があります。一つ目の要件は、この特例はマイホームを売る場合にしか適応することができないというものです。つまり、借地上の建物がマイホームではない場合にはこの控除を利用できません。借地には事業用の施設を立てたり、すでに更地にしてしまったりという場合もあるでしょう。そのような場合には3,000万円特別控除は受けられないのです。しかし、マイホームであったとしても、そこに住んでいる期間が短い場合や、最近は住んでいないという場合には適応されないことがあるので注意が必要です。それは、一時的に入居することで特別控除を受け用途する人が出ないようにするためです。
さらに二つ目の用件として、この控除は何度も受けることができません。利用できるのは3年に1度という制限があります。そのため、借地上の建物の種類に関わらず、3年以内にこの控除を受けたことがある場合は再度控除を受けることはできません。つまり、一見すると3,000万円特別控除を適用できなそうな借地権でも、建物が解体されてから1年が経たないうちに売却するか、その建物に居住しなくなってから3年以内に売却すれば、3,000万円特別控除を受けることができます。
三つ目の要件は、特別控除は組み合わせて利用できないということです。実は、特別控除にはいくつかの種類があり、3,000万円特別控除以外の控除もあります。しかし、それらを複数同時に利用できる場合と、同時には利用できない場合があるのです。要件に当てはまる控除がたくさんあるからといって、全てを適用して大きく得できるというわけではないのです。どの特例を利用できるのかはよく確認する必要があるといえるでしょう。
今回は、借地権を売却した際の所得税はどのような計算式によって決まるのかについて解説してきました。
借地権を売却して利益を得ると、所得税が課税されます。その所得税は「譲渡所得」に応じて課税されます。また、譲渡所得税の税率は、借地権を所有していた期間の長さによって異なります。譲渡所得税の金額を決める際には、特別控除を受けられる場合があります。しかし、控除を利用するためにはいくつかの注意点があります。それらをよく理解しておかないと、利用できると思った控除が適用されないといった事態に陥ってしまいます。自分でもよく確認し、控除をうまく活用してよりお得に借地権の売却を進めましょう。