【親が認知症になったら?】高齢者でもリースバックはできるのか?

急に資金が必要になったときには、金融機関などから融資を受けようとするでしょう。しかし、高齢者の場合、年齢や収入の少なさを理由に断られてしまうことも多いかもしれません。そこで検討したいのが「リースバック」です。
しかし、リースバックも融資と同じく資金調達方法の一つなので、リースバックをする際にも年齢を理由に断られてしまうことがあるのでしょうか。
また、認知症になってしまった人はリースバックをすることはできるのでしょうか。現在高齢で資産のやり場に困っている方や、親が高齢になってきて資産整理について話し合っている方は特に必見です。

高齢者はリースバックできるのか?

高齢者の方はリースバックをすることができます。リースバックには、成人以上であるということ以外には、特に年齢の制限はありません。 しかし、

  • 物件の価値が低い
  • 抵当権が外れていない
  • 家賃を支払っていく能力がない
  • 家の名義人全員からの同意を得ていない
  • 保証人がいない

といった場合には、年齢を問わずリースバックをすることができません。

リースバックとは

そもそも、リースバックについてあまり知らないという人も多いかもしれません。リースバックとは、資産を売却して現金を調達した後、賃貸として資産を利用し続けるという仕組みです。現在所有している家などの資産を一度売却します。するとまとまった現金を受け取ることができます。そして売却した後は賃貸借契約を結びます。それによって、今後は賃貸として元の不動産を利用し続けていきます。リースバックでは、戸建て、マンション、工場、倉庫、土地、車、機械など、さまざまなものを現金化することができます。リースバックで得た資金は制限なくどのような用途にも使うことができるのでとても便利です。

高齢者がリースバックをする理由

高齢者がリースバックを利用する理由には、

  • 主な収入は年金のみで生活が不安定である
  • 老後の生活費の足しにして、豊かな生活を送りたい
  • 財産を平等に残したい
  • 資産を持っていても相続する相手がいない
  • 長年住んだ家から引っ越したくない
  • 医療費が増えて支払えなくなった

といったものがあります。実は、リースバックの利用は高齢者の間でとても増加しているのです。それは、リースバックは高齢者にとってたくさんのメリットがあるからです。リースバックによってこれまでの生活を変えることなく資金を調達することができ、さらにその資金の使い道は自由であるため、高齢者が抱える老後の資金問題を解決することができるのです。

リースバックに関して高齢者が受けたトラブルとはs

しかしその一方で、リースバックによって被害を受ける高齢者も多いです。トラブルの例には、

  • 勧誘がしつこくて迷惑である
  • しつこい勧誘に根負けしてつい契約してしまった
  • 契約時には説明されなかった多額の金額を後から請求をされた
  • 嘘の説明をされたが信じて契約してしまった
  • 解約を申し出たら違約金を請求された
  • 高齢の親が知らないうちに契約をしていて解約させたい

といった事例があります。中には高齢者を騙して利益を得ようとする悪質なリースバック業者もあるので注意が必要です。

認知症でもリースバックできるのか

リースバックには年齢制限がなく高齢者でも利用することができます。しかし、残念ながら認知症の人はリースバックをすることはできません。それは、認知症の人が騙されて家を売却してしまうことを防ぐためです。認知症になると判断能力がなくなってしまい、望んでいないのに家を売却してしまう可能性があります。そのようなトラブルを防ぐため、判断能力のない人はリースバックをすることができなくなっています。そもそも認知症の場合にはリースバック以前に不動産の売却をすること自体ができません。

もし認知症になってしまったら

もし認知症になってしまったらどうなるのでしょうか。自分の親が認知症になってしまった場合を考えてみましょう。

預金が引き出せなくなる

自分の親が認知症になってしまったら、子供であっても親の預金をおろすことはできません。口座が凍結されてしまうのです。それは、何かの詐欺に遭って預金を引き出している可能性があるからです。講座が凍結していれば覚えていないうちに引き出しや振込みをする危険性もなく、その人の預金を守ることができます。

持ち家を売却できなくなる

判断能力のない人が売買契約を結んだ場合、その契約は無効になります。そのため、認知症になった本人が家を売却することはありません。
また、認知症の人の家を代わりに売却することもできません。それは親子関係である人でも不可能です。

認知症の人の不動産を売るには

しかし、どうしても家を売却したい場合もあるでしょう。とはいえ、たとえ親が認知症であったとしても、家の名義人が親の名前のままになっていると名義人以外の人が勝手に家を売ることはできません。このような場合はどうしたら良いのでしょうか。
それは、成年後見人になることです。成年後見人になれば、認知症になった親の家でも売却できるようになります。

「成年後見人」とは

成年後見人とは、本人に代わって財産の管理や処分を行うことができる権限を法的に与えられた人のことです。後見人になれば、認知症になった親の家を売却することができるようになります。成年後見人になるためには家庭裁判所で手続きする必要があるため、なるまでに時間がかかってしまいます。
成年後見人になることができたら、本人に代わって財産の管理や処分を行うことができる権限を得ることができます。しかし、それでもまだ家を売却することはできません。家を売却するためには裁判所から許可を得る必要があります。裁判所からは、家を売却することが本人にとってデメリットにならないかが判断されます。つまり、家は認知症になってしまった本人の資産であるため、その人のためにならないのであれば家を売却することはできないのです。自分の資金が足りないからといった自分本位の理由であると、裁判所から許可を得られない可能性があります。成年後見人になる手続きを終えて、裁判所にも家の売却を認められたら、やっとリースバックをすることができます。

成年後見人になるためには

成年後見人になるのはおもに親族です。しかし、弁護士や司法書士などの専門家がなる場合もあります。成年後見人になるためには費用がかかります。おもな費用としては、まず家庭裁判所へ申し立て手数料、弁護士・司法書士への報酬、そして認知症の症状を鑑定する費用がかかります。いくらぐらいかかるのかというと、

  • 申立手数料
  • 弁護士や司法書士への報酬 10~60万円
  • 認知症の症状の鑑定料 5~10万円
  • 医師の診断書 数千円

といった額がかかります。さらに、成年後見人には月々報酬が支払われ、資産の管理や売却をした際にはその都度代行手数料も支払われます。その額は認知症の人の財産額によって決まります。

また、成年後見人は途中で止めることはできません。

リースバックした資金は何に使えるのか

認知症の人の家であっても、成年後見人になればリースバックをすることができるということがわかりました。それでは、リースバックによって得た資金はどのような用途に使うことができるのでしょうか。
一般的な不動産リースバックでは、資金の目的に制限はありませんでした。しかし、成年後見人としてリースバックをすると、その資金の使い道が少し制限されます。それは、本人の為になる使い方をするというものです。認知症である本人の生活費や介護費用、医療費、本人の借金の返済といった目的でなければいけませんつまり、成年後見人の借金を返済するため、成年後見人の生活費にするためといった理由では裁判所からリースバックを許可されない可能性があるのです。この点が、一般的な不動産リースバックとは相違している点だといえます。

認知症になる前にやっておくべきこと

認知症になってしまった場合は資産整理の手続きが大変になるということがわかりました。つまり、自分や親が認知症になってから財産について考え始めるのでは遅いのです。成人後見人になるにも認知症の発症に気づいてからでは、手続きが終わるまでにかなり時間がかかってしまいます。そのため、認知症になる前に次のことをしておくと良いでしょう。

家族信託

認知症になる前に家族信託をしておくと資産整理がかんたんになります。家族信託とは、老後に判断能力がなくなった時に備えて、資産の管理や処分を家族に任せることです。認知症だとわかってから手続きを始める成人後見人とは異なり、家族信託は認知症になる前に財産管理をします。それによって、判断能力があるうちにその人の資産に関する意思を確認することができ、本人の希望に沿った資産管理をすることができます。

エンディングノートを書く

エンディングノートに資産に関する意思を記載しておくことも有効です。エンディングノートとは、自分の死後の遺産相続などについて希望を記載することができるものです。遺言と似ていますが、遺言書には法的に強制力がある一方で、エンディングノートには法的な強制力がないという点が異なっています。遺産について話し合っていないと、認知症になってしまったときやなくなってしまったときに、資産をどうして欲しいのかわからなくなってしまいます。そうなることを防ぐために、事前に話し合っておくか、エンディングノートのようなものに記載しておくと、資産整理が楽になるでしょう。

まとめ

リースバックは、高齢者でもすることができますが、認知症の人はできません。それは、認知症のような判断能力のない人が騙されて望まない契約をしてしまうことを防ぐためなのです。つまり、リースバックをするための条件とは、「成人以上で、判断能力のある人」ということになります。
もちろん認知症になってしまった後にも家を売却する手立てはあります。しかし、資産整理ができていないと後で親族同士で揉めたり、本来不要な弁護士手続きなどが発生してしまったりと色々面倒なことが起こります。自分自身や、自分の親が認知症になる前に、資産の整理をしておくようにしましょう。



【参照】
独立行政法人「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20210624_1.pdf