【リースバック/人気の理由】利用者が増加している背景とは

みなさんは「リースバック」という言葉を聞いたことがありますか。 日本ではリースバックを扱う不動産業者は1960年代に多く設立されたといわれています。つまり、リースバックはあまり長い歴史がある仕組みではないのです。そのため、聞いたことがないという人も多いかもしれません。
しかし、最近は利用者が増加している傾向にあります。なぜ増加するようになったのでしょうか。今回は、リースバックが近年人気を集めている理由を説明していきます。

リースバックとは

リースバックとは、資産を活用して資金を調達する仕組みの一つです。持っている資産を一度売却し、資金を得ます。その後は賃貸借契約を結び、賃料を支払うことでこれまで通りに資産を利用します。
リースバックできる資産には例えば不動産があり、戸建てやマンションのような個人の住宅のみならず、オフィスや倉庫といった法人の物件も対象になっています。また、車のような動産も対象にすることができます。このようにリースバックはあらゆる人が自分の資産を利用して資金を調達することができる仕組みなのです。その中でも不動産を対象とするリースバックは特に「不動産リースバック」と呼ばれています。「家を売却するのに住み続けることができる」、「後で家を買い戻すことができる」というメリットがある一方、「資産の買取価格が相場より低い」、「家賃が割高になる」といったデメリットもあります。

今、リースバック利用者は増加している?!

リースバックを利用する人は現在、増加傾向にあります。国土交通省の「住生活関連産業や新技術等を巡る状況についてまちづくりを巡る状況について」を見ると、過去のリースバックの取り扱い件数がわかります。それによると、住宅のリースバックの取引件数は2016年には266件、2017年には389件、2018年には920件と年々増加しています。2016年から2018年というたった2年の間に2倍以上に増加していることがわかります。その増加を引き起こしているのはおもに高齢者だといいます。特に高齢者の世代でリースバックの利用が増加しているのです。

(参照)国土交通省「社会資本整備審議会住宅宅地分科会 中間とりまとめ案(たたき台) 参考資料」

リースバックする人が増えている理由とは

それでは、なぜリースバックを利用する人が増えているのでしょうか。リースバックの利用者が増加している背景には日本の社会的な状況が影響していると考えられます。

老後の不安

リースバックの利用者が増えている一つ目の理由には、老後への不安があります。 日本は超高齢化社会だといわれています。厚生労働省によると、100歳以上まで生きている人は30年前と比較して50倍近くにも増加したそうです。医療が発達したおかげで、現在では多くの人たちが長生きすることができるようになりました。しかし、長生きができるというのは楽しいことばかりではありません。豊かな老後を送るにはたくさんのお金が必要になります。老後には通院をする機会が増え、急に入院をすることになるかもしれません。さらに、老朽化が進んだ家を修理したり、老人ホームに入ったりと、さまざまな場面でお金が必要になるでしょう。その結果、なんと老後には最低でも2,000万円が必要だといわれているのです。みなさんは老後にこの額を用意することができるでしょうか。老後には就労をして高い収入を稼ぐことは難しいでしょう。年金を受け取ることもできますが、2,000万円にはとても足りません。さらに悪いことに、平成12年の法律改正で年金を受け取ることができる年齢は60歳から64歳に引き上げられてしまいました。 この老後の金銭的な不安の中でリースバックをする人が増えているのです。 リースバックをすれば、資金不足の他にも

  • 介護が必要となったときのために資金を用意しておきたい
  • 高齢者であることを理由に、金融機関からは融資をしてもらえない
  • 生活費の足しにしたいが、引っ越しをするのは難しい
  • 住宅ローンを完済して、子どもに迷惑をかけないようにしたい
  • 平等に相続ができるように、自宅は売却して現金にしてしまいたい

という希望を叶えることができます。

住宅ローンを払えない人の増加

リースバックを利用する人が増えている背景の二つ目には、収入が減少していることがあります。それによって住宅ローンを支払えなくなってしまう人が多くいるのです。
厚生労働省によれば、日本の平均給与は2000年代から減少傾向にあります。1990年代には平均年収は460万円くらいであったのに、2010年代には420万円ほどになってしまっています。このように年収は右肩下がりで下がっていることがわかります。しかし、物価は高騰しており、消費税の上昇なども家計を圧迫します。日々の生活費や教育費、医療費など、支出が減ることはありません。 さらに、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で給料やボーナスが減少してしまった人も多いでしょう。そのような状況の中では、生活資金の確保をすることも簡単ではなくなってしまいます。その結果、住宅ローンを払えなくなってしまう人が増えてきています。

住宅ローンを借り入れる年齢の高齢化

リースバックを利用する人が増加している背景の三つ目は、住宅ローンを借り入れる年齢が高齢化しているからです。晩婚化や、住宅価格の上昇などによって、住宅ローンを借り入れる年齢が高齢化してきているのです。住宅ローンを借り入れる際の平均年齢は40歳で、半数以上の人が返済までには35年ほどかかっています。つまり、完済するころには70歳〜80歳になってしまうのです。この頃には、収入は減少していることが多いです。そのため、住宅ローンの返済が難しくなってしまうのです。

リースバックはこのように住宅ローンを支払えなくなってしまった人への救済措置になりうるのです。それは、リースバックをして得た資金で住宅ローンを返済することができるからです。住宅ローンを支払えない人が増えた結果、リースバックの利用者も増加しているのです。

高齢者の持ち家率の高さ

リースバック利用者の増加には高齢者の持ち家率の高さも影響しています。実は日本では資産を持っている高齢者がたくさんいるのです。60歳以上の不動産資産の資産評価は884兆円にものぼります。このように日本人は高齢者の持ち家率が高いのです。しかし、家は所有しているだけでは現金としては使えません。さらに、所有していることで維持費や税金がかかってしまいます。そこで、持ち家をリースバックすれば、現金を手にすることができます。その資金の使い道に制限はないため、老後の生活費にしたり、医療費にしたり、相続対策をしたりすることができるのです。

これが、高齢化によってリースバックの件数が増加している背景です。

企業の業績悪化

リースバックは、業績が悪化した企業の救済措置ともなり得ます。ある企業の業績が悪化してしまった場合を考えてみましょう。急に売り上げが落ち込んでしまい、早急に資金が必要になったとします。その際どんなに不動産を持ち合わせていても、現金として使うことはできません。そこで、持ち合わせている不動産、例えばオフィスや倉庫、工場などをリースバックするのです。それによってまとまった資金を一括で受け取ることができます。その際、厳格な審査に通ることや資金の使い道を書いた計画書の提出は求められません。手に入れた資金で業績が戻ったときには、売却した不動産を買い戻すこともできます。
特にコロナウイルス感染症の影響を受けて業績が悪化してしまった企業は多くあります。そのような企業によってリースバックの利用者数は大きく増加しました。コロナ禍ではテレワークをする機会が増えたため、不動産を持っていても使わないことがあります。そのため、自社ビルを持っていた企業がリースバックをして資産を現金化するのです。 他にも、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、ホテル業界によるリースバックが増加しました。新型コロナウイルスが拡散しないよう、人々は移動に制限をかけられたため、旅行でホテルに滞在する人が減少してしまいました。各ホテルは不動産の売却によって資金を調達することも可能ですが、新型コロナウイルスの影響がまだ収まらない中ではなかなか買い手はつきません。そこでリースバックであれば、買い手探しの心配をすることなく、資産を現金化することができるのです。
このように、業績不振に陥った企業はリースバックによって資金不足を解決しようとしているのです。

リースバックの評判

このようにリースバックはさまざまな理由で利用されているということがわかりました。実際にリースバックを利用した人からは

  • 換金が早くて助かった
  • 不動産業者が親切に対応してくれた
  • リースバックの仕組みについて知らなかったけれど、わかりやすく説明してくれた
  • リースバックに関する希望を熱心に聞いてくれた

といった評判が寄せられています。リースバックには「短い期間で資金を調達することができる」、「引っ越しをする必要がない」といったメリットがあります。みなさんも「資金が必要になったけれど資産を手放したくはない」というような場合は、リースバックの利用を検討してみましょう。

まとめ

このように、リースバックを利用する人は個人、法人、共に増加してきています。そのおもな原因には高齢化による老後の不安や、企業の業績悪化などがあります。特に、法人によるリースバックの利用には新型コロナウイルス感染拡大が影響を与えました。
リースバックの認知が広まったことで、今後もリースバックの利用者は増えていくことが予想されます。みなさんも急に資金が必要になったときにはぜひリースバックを検討してみてください。その際、不動産業者の選び方はこちらの記事を参考にしてください。
⇒ 【リースバック検討者必見!】大手と中小を徹底比較!~メリットとデメリット~

【参照】 国土交通省「社会資本整備審議会住宅宅地分科会 中間とりまとめ案(たたき台) 参考資料」
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001351143.pdf