リースに関しては、「リースバック」、「オペレーティングリース」、「ファイナンスリース」などの言葉を耳にすることがあるかもしれません。どれも「リース」という言葉が入っているので、似た仕組みのように思えてしまいます。みなさんはこれらの違いについて正しく説明することができますか。リースにはさまざまな種類があるので、詳しく知っているという人は少ないかもしれません。今回は数あるリースの中でも、「オペレーティングリース」という仕組みについて説明していきます。
目次
まず、「リース」の種類について説明します。「リース」は大きく分けて「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」の2つに分けることができます。そのうち、「ファイナンスリース」以外のリースのことを「オペレーティングリース」といいます。
オペレーティングリースとは、リース料を支払って物品を使う仕組みの一つです。契約期間が終了したらリース業者へ返却します。契約しているリース会社によっては、契約間中でも望めば途中解約ができることもあります。
オペレーティングリースでは、修理や管理にかかる費用はリース会社が負担します。それは、リース期間中の所有権は借り手ではなくリース会社にあるためです。また、リース物件の所有権を借り手は持っていないため、リース中にも資産として計上する必要はありません。
オペレーティングリースには、リース料の支払い方に特徴があります。ファイナンスリースの場合、かかったリース料を契約年数で割ってその額を毎年支払っていきます。しかし、オペレーティングリースでは、一年に支払うリース料の負担が小さくなります。それは、オペレーティングリースではリースする資産の残存価値分は支払いをしなくて済むからです。残存価格とは、リース物件を返却するときにその資産に残っている資産価値のことです。リースでは契約が切れたときには資産を返却することになるため、資産の返却によって残価分のリース料を返済したとみなすのです。
そのため、オペレーティングリースのリース料は、合計のリース料から資産の残存価値を引いて算出されることになります。
オペレーティングリースのリース料がどのように設定されているのかを知るために、具体的に飛行機をオペレーティングリースする場合を考えてみましょう。
5億円の飛行機を5年間リースする場合、ファイナンスリースでは借りる資産の分の金額を支払わなければなりません。そのため、金額を年数で割って、一年あたり5億円支払うことになります。
一方、オペレーティングリースでは、そもそも5億円を全額支払う必要はありません。リース契約の期間が終了したとき、借りていた飛行機が1億円で売れたとします。その場合、飛行機を返却すれば1億円を返済したということにしてもらえるのです。そのため、現金で支払うのは残存価値を差し引いた4億円となるのです。
オペレーティングリースの料金設定はこのような仕組みであるため、オペレーティングリースのリース料は、ファイナンスリースよりも割安になるのです。さらに、リースが終わった際にはリース業者はその資産を中古市場に売却するなどして利益を得ています。
主にオペレーティングリースされるものといえば、航空機、船舶、コンテナなどがあります。しかし、それだけではなく、さまざまなものが対象となっています。半導体を製造する機械や土木建設機械、医療機器などに加えて、足場のような建築用仮設資材などもオペレーティングリースをすることができます。オペレーティングリースをするために製造された新品もあれば、中古の製品も対象とすることができます。
続いて、オペレーティングリースの仕組みについて見ていきましょう。
飛行機や船舶のような、高額なものを一企業で買うことは難しいです。そのため、まずリース業者は、法人の投資家や銀行からリースのための資金を集めます。法人の投資家からは必要資金の約2 〜3 割、銀行からは約7 〜8 割を集めます。その資金を合わせて、リースとして貸し出す資産を購入します。購入したら、リース業者はそれをリースすることで、収入を得ることができます。最後に、リース業者は儲かった代金を出資額に応じて出資者に分配します。オペレーティングリースとはこのような仕組みになっています。
一般的なリースでは金融機関からの融資を頼りにしますが、オペレーティングリースではそれだけではなく法人の投資家からも出資を募ります。また、リース業者はリースによって得た利益を、出資額に応じて法人の投資家に分配します。これらの点は一般的なリースとは異なるオペレーティングリースの特徴的な点です。
オペレーティングリースのメリットは次のような点です。
初期投資として機材を購入するには資金が大量にかかってしまいます。特に、オペレーティングリースでよく扱われる飛行機や船舶を購入しようとするのは簡単ではないことがわかります。しかし、オペレーティングリースにすれば、購入の際はリース会社が負担してくれるので、初期投資にかかる費用を減らすことができます。
リース契約というと長期にわたることが多いです。しかしオペレーティングリースでは3年間くらいの短期の契約から、10年間のような長期にわたる契約を結ぶことも可能です。長期的に使うかどうかはわからないという場合や、試しに使ってみたいという場合に利用する人が多いです。リース期間が終了してしまった際には、再度リース契約を結び直すこともできます。また、途中で解約することができる場合もあります。
リースしている資産は貸借対照表には計上しません。オペレーティングリースの対象資産は借り手ではなく貸し手の資産であるからです。そのため、オフバランス効果を得ることができます。つまり、株式市場からの評価を高めることができるのです。
さらに、オペレーティングリースは会計処理を楽に行うことができるという点もメリットの一つです。
技術は日々進歩しており、設備はどんどん新しくなります。しかし一度高額を支払って購入してしまっては、すぐに買い換えることはできません。そこでリースという形を取っていれば、最新機種が開発されたらそちらに切り替えてリースをすることができます。そうすれば常に新しい設備を利用することができるのです。
さらに、一度購入した機械設備は老朽化していくため、管理や修繕をしなくてはなりません。しかしリースであれば古くなる頃に新しいものを契約し直せば、常に使いやすい設備を利用することができるのです。
オペレーティングリースのリスクには次のようなものがあります。
オペレーティングリースに出資すると必ず得をするとは限りません。投資した金額は、市場や為替の影響などを受けて、もしかしたら損益になってしまうかもしれません。将来、オペレーティングリースとは最終的にリース業者が得た利益を分配してもらえる仕組みでしたが、必ず投資した以上に戻ってくるという保証はありません
オペレーティングリースでは、契約の途中で解約をすることはできない場合があります。出資金はリース期間が終了するまで戻ってこないのです。もし途中解約しようとすると、違約金を請求される可能性があります。
また、金額が大きい場合は短期でリース契約を結ぶことができない場合があります。おもにオペレーティングリースの対象となるものは、航空機や船舶など高額なものが多いです。その場合、リースの最低期間が長く設定されることがあり、契約期間をこちら側で自由に決められないことがあります。
最後に、オペレーティングリースとリースバックを比べてみましょう。
リースバックとは、資金調達方法の一種でした。これまで所有していた資産を一度売却して資金を調達し、売却後も同じ資産を使い続けるという仕組みです。つまり、リースバックとは売買とリースという2つの要素が合わさったものだといえます。
最終的に買い戻しができたり、不動産や動産などさまざまなものを対象にすることができたりするという点が特徴でした。
一方、オペレーティングリースとは、高額な資産を使用するためのリースの仕組みです。最終的にはリース業者へ借りていた資産を返却します。
同じ「リース」という言葉が入っているけれど、オペレーティングリースとは全く異なる仕組みであるということがわかります。
いかがでしたか。オペレーティングリースとはリースの一種で、リース料を支払って資産を使う仕組みの一つでした。個人では購入することが難しいような、高額な資産を使用したいときに利用します。オペレーティングリースは、残存価値分の支払いが不要となるというリース料の支払い方に特徴があります。具体的なサービス内容についてはオペレーティングリースを扱うリース会社によって異なるため、興味のある方はリース会社に問い合わせてみてください。
リースという言葉を使っていますが、ファイナンスリースやリースバックとは全く異なる仕組みです。ファイナンスリースに関してはこちらも参照してみてください。
⇒ 【リースバックと比較!】ファイナンスリースとは何か