発生してからでは遅い?!いざという時に備えた相続税対策

人が亡くなったとき、亡くなった人が財産を持っている場合に、その財産は誰かが相続することになります。

相続は、「争続」とまで言われるほどトラブルの多いものです。
普段は仲のよい家族や親族も、きちんと相続対策をしていなかったことが原因で仲が悪くなるケースも多いのです。

また、事前に相続対策をすることで、自分の希望する相続を実現させることができますし、相続税を節税する工夫もできます。早い段階で相続税対策をとることで、節税対策の選択肢が広がります。

事前に相続税対策を考えなければならないのはなぜか

人によっては、自分が死んだ後のことを考えることは縁起の悪いことだと感じ、相続税の対策は必要ないと思う方もいらっしゃいます。
しかし、相続が原因で家族にトラブルが発生するのを避け、家族が支払わなければならない相続税について事前に対策をすることで、残された家族の生活を守ることができます。

相続税は、計算方法が法律で決められています。

相続は、人が亡くなったと同時に発生し、その人がどれだけの財産があるかの確定も、その人が亡くなった時を基準に行われます。相続財産が確定して、その相続財産をもとに決められた計算方法で相続税が計算されるわけですから、亡くなった後でできる相続税の対策はほとんどありません。相続について考え、相続税の対策をとることができるのは生前しかありませんので、事前に対策をとる必要があるのです。

相続税の対策

生命保険の利用

生命保険の死亡保険金は、相続税の対象となりますが、生命保険には非課税枠というものが認められていて、
500万円×法定相続人の数」の範囲内であれば、相続税がかかりません。

たとえば財産が現金の場合は相続税がかかってしまいますが、その現金を生命保険で受け取るのであれば、非課税枠の範囲内は相続税がかからないので、相続税の節税対策になります。生命保険の死亡保険金は現金で支払われますので、相続税を支払うときの資金の確保を考えるときにも便利な方法です。

生命保険の利用は、相続税対策を考える際に、一番最初に検討すべき対策であるといえます。生命保険の加入は若い年齢であればあるほど有利になりますので、なるべく早い段階で検討することをおすすめします。

ただし、保険金の受取人が相続人でない場合には、相続税ではなく贈与税がかかることとなりますので注意が必要です。

生前贈与の利用

贈与税は110万円の基礎控除がありますので、1年間に110万円より少ない金額の贈与を行っていくことで、税金がかからずに財産を移転していくことができます。

ただし、毎年110万円ずつ、10年間にわたって贈与してくという方法をとると、本当は一括で財産を移転したいところを分割して移転しているだけだ、と推測されて贈与税がかかってしまいます。
これを避ける工夫としては、毎年少しずつ違った金額の契約書を作って贈与するといった方法があります。

また、贈与した金額から基礎控除額である110万円をひいた後の金額が200万円以下であれば、贈与税の税率は10%と低い税率ですから、あえて110万円を少し超える金額の贈与を行い、贈与税を支払っていくという方法もあります。

もしも財産が多くあって、たとえば相続税が30%かかってしまうような場合には、それ以下の税率になる贈与税の範囲内で贈与をしていくという方法をとることもできます。

贈与を利用する方法は、贈与税のかからない金額が1年間に110万円と少ないので、相続対策として財産を移転していこうとするには、早い段階から実行していく必要があります。

また、相続が発生する前の3年内の贈与は相続税の財産に含まれますので、体の具合が悪くなりあわてて贈与を開始するといった方法では、贈与したと思った分が相続税に含まれてしまい、相続税対策にならないので注意が必要です。

更地の土地に建物を建てる

更地の土地がある場合には、そこに建物を建てることで、相続税の計算のもととなる評価額が大きく下がるために、相続税の節税対策になります。

また、建物の建築費も、現金で持っているより建物の評価額のほうが低く評価されます。

現金が不動産になってしまいますので、相続税を支払うための現金の確保にはなりませんが、アパートやマンションを建てて賃貸をするという方法であれば、将来的な賃貸収入を見込めますので、その賃貸収入で資金の確保ができるようになります。
さらに建てた建物を賃貸住宅にすると、建物の評価は通常より低くなります。

相続人が複数いる場合、資産を分割する必要がありますので、主な財産がその土地と建物だけということになると、どのように財産をわけるかという争いのもとになるかもしれないので注意が必要です。

小規模宅地等の特例を利用する

郊外の広い自宅に住んでいる場合には、都心の路線価が高く小規模宅地等の特例が適用できる地域に引っ越すことで、不動産の評価額を下げることができます。

賃貸用不動産を購入する

更地の上に建物を建てる方法と同じように、賃貸用マンションを購入することも相続税対策につながります。
特に時価と相続税評価額の差が大きいワンルームマンションですと、相続税評価額が時価の1/3ほどになるケースも多くなっています。

相続人の数を増やす

相続税の計算をする際には、基礎控除額がひかれます。

基礎控除額は、平成27年1月1日以降

3,000万円+600万円×法定相続人の数

となりました。
つまり、相続人が1人増えることに600万円の基礎控除額が増えることになります。

相続人になることができる人は法律で定められていますが、相続人の数を増やす方法としては養子縁組があります。

相続税の基礎控除額の計算をするときに考慮できる養子は、実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までしか認められませんが、1人増えるだけでも600万円の控除額が増えるので、大きな節税対策になるといえるでしょう。

ただし、相続人が増えると、ひとりあたりの相続財産も少なくなることになり、親族同士の争いのもととなることもあるので注意が必要です。

相続税を考えるときに注意すること

相続税の支払い

相続税を考えるときには、相続税の節税について対策をとることは重要なことですが、それ以外にも注意すべき点があります。

「相続税がいくらになるか」に加えて、実際に相続税を支払う際に、その支払いをどうするかを考えなければなりません。

相続税は基本的には現金で払わなければなりません。
相続税分の金額は、換金性の高い財産にしておくようにしましょう。せっかく相続した財産が不動産であったために、その不動産を処分しなければならないという事態を避けることができます。

相続税の申告と納付には期限があり、基本的には死亡した日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納付をしなければなりません。
事前に相続税の節税対策をして相続税が安くなったとしても、相続した財産が不動産であった場合にその不動産を売却しようとし、急いで売却しようとして安く買いたたかれてしまうといったケースもあり得ますので、事前に相続税の試算をして、現金、預金、金融商品などの換金性の高い財産を用意しておくことも大切です。

残された家族への配慮

相続税対策を行う際に、税金を安くすることだけに焦点を当て、今住んでいる家を売る方法や、養子縁組をするといった方法をとることになると、家族の不利益になることがあります。

相続が争続とならないようにするには、なるべく家族が困らないような方法をとることが必要です。
相続税対策も相続税を支払わなければならない家族への配慮のひとつだということを忘れてはいけません。

たとえば事業を行っている場合には後継者が事業を継続しやすいような財産の配分を考えることが必要ですし、同居している家族がいてずっとその家に住み続けたい場合には、同居している家族に住んでいる家を相続してもらうような財産の配分をしていく必要があるでしょう。

いろいろな配慮を行って誰に何を相続させるかを考えて遺言書を作ったとしても、家族が財産の配分に不満を持つと、トラブルになることもあります。
遺言書を作成するときには、法律で決められた遺留分に配慮して作成するとよいでしょう。

最低限、法律で定められた取り分の財産を相続することができれば、相続する人も納得せざるを得ないでしょう。

さらに、遺言書には「付言事項」として自分の思いを記すことのできる部分があります。
付言事項には法的拘束力はありませんが、家族への感謝や今後の希望を記すだけで、残された家族が争わずにすむこともあります。

専門家への相談

相続は、遺産が多くても少なくてもトラブルが多いものです。

トラブルを避け相続税の税金対策をしていくには、事前に相続の専門家に相談することもよい方法です。
相続の方法や相続税の計算に専門知識が必要な場合があります。
不動産を活用して相続税対策を行う場合には、不動産の知識のある専門家のアドバイスを受けることで、有利な相続税対策を行うことができます。